ゆうわファミリーカウンセリング新潟 (じーじ臨床心理士・赤坂正人)     

こころと暮らしの困りごと・悩みごと相談で、じーじ臨床心理士が公園カウンセリングや訪問カウンセリングなどをやっています。

小倉清『子どもの危機にどう応えるか-時代性と精神科臨床』2020・岩崎学術出版社

2024年09月30日 | 子どもの臨床に学ぶ

 2020年9月のブログです

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 小倉清さんの『子どもの危機にどう応えるか-時代性と精神科臨床』(2020・岩崎学術出版社)を読みました。

 新刊です。すごいですね。

 そして、とてもいい本です。

 小倉さんの最近の論文からちょっと古い論文までが並んでいて、それに小倉さん自身がコメントをつけています。

 このコメントがすごいです。辛口コメントばかり。

 人間、年を取ると、人にはともかく、自分には甘くなりがちですが、小倉さんは昔の自分にも容赦がありません。

 冷静に、しかし、「熱く」、昔の自分に注文をつける小倉さんは、とても素敵です。そして、尊敬できます。

 例によって、印象に残ったことを一つ、二つ。

 一つめは、母乳を拒否した2歳の女の子の症例。

 家族や他人とうまく関係が持てないで騒ぐ女の子の初診で、小倉さんが女の子の心中を察知して、尊重し、何もしゃべらないままに診察を終えます。

 そして、それが、次回以降の治療に繋がったというケースです。すごいです。まるで手品のよう。

 しかし、小倉さんならではの技です。

 こんなことができるのは、あとは田中千穂子さんくらいではないでしょうか。

 二つめは、思春期に現れる乳幼児期来の諸問題、という論文。

 子どもの課題と諸問題を年代別に実に細かく、丁寧に説明をされていて、勉強になります。

 やはり当然ですが、治療者が子どもを尊重し、耳を傾け、丁寧に聴くことや心中を察することなどの大切さを改めて思い知らされます。

 さらに真剣に学んでいこうと思いました。      (2020.9 記)

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 2021年3月の追記です

 こんなことができるのは、田中千穂子さんくらいでは?と書いたのですが、もう一人、山中康裕さんを挙げるのを忘れていました(山中さん、ごめんなさい)。      (2021.3 記)

 

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井上靖『北の海』1975・新潮文庫-旧制高校に不合格になった少年の旧制四高柔道部体験記と青春の物語

2024年09月30日 | 小説を読む

 2023年8月のブログです

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 旭川生まれの井上靖さんの『北の海』(1975・新潮文庫)を旭川の古本屋さんで見つける。

 かなり厚い本だが、110円。

 1975年(昭和55年)の文庫本、じーじが大学3年生の時の本だ。

 この青春もの(?)、なぜかじーじはきちんと読まずにきてしまった。

 暇な夏休みでもないと(いつも暇だが…)、厚い本はなかなか読まないかもしれないと思い、清水の舞台から飛び降りる覚悟で読む。

 これが面白い。

 時は大正15年。

 青春小説だが、相当に男の世界。

 なにしろ、世の中にあるのは柔道のみ(!)、勉強も女子も関係のないという世界。

 これは相当に(?)、気持ちのいい世界だ。

 今の芸能界など、吹っ飛んでしまう。

 こういう世界があったんだなあ、と思う。

 しかし、この時代にも戦争の予兆はある。

 なにせ、主人公の父親は軍医で、台湾に赴任中だ。

 父親への反感と時代への反感、男子の青春もなかなか大変だ。

 そういう主人公が友達や先輩に囲まれ、少しずつ成長していく。

 おそろしく真面目だが、不器用なユーモアがきいていて、読んでいて楽しい。

 文章も良質で、いい小説だと思う。

 あらすじはあえて書かないが、気持ちのいい小説だ。

 夏休みにいい本に出会えたと思う。       (2023.8 記)

   

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