臆病なビーズ刺繍

 臆病なビーズ刺繍にありにしも
 糸目ほつれて今朝の薔薇薔薇

今週の「朝日歌壇」から(11月13日掲載分・其のⅣ)北方四島以南、本日堂々特出し大公開!

2016年11月24日 | 今週の朝日歌壇から
[佐佐木幸綱選]
○ うろこ雲白く輝き蒼穹の天につながる天の橋立 (越前市)内藤丈子

 「うろこ雲」の正式名称は「巻積雲」。
 他に「鯖雲」や「鰯雲」などとも呼ばれているが、そうした通称の由来は「白色で陰影のない非常に小さな雲片が多数の群れをなして集まり、魚の鱗や水面の波のような形状をしている」事に因るのである、とか。
 「うろこ雲白く輝き蒼穹の天につながる」という、本作の歌い出しから第四句までの叙述は、この雲の特徴をよく捉えているものであり、その「うろこ雲」が日本三景の一つの「天の橋立」と「つながる」ことに因って現出する光景こそは、まさに〈天下の絶景〉とも称すべき絶好の秋景色でありましょう。
 [反歌] ごくせんの仲間由紀恵のヤンクミの股から覗く天の橋立

 〈注〉 沖縄出身の女優・仲間由紀恵さんも今では立派なアラフォーであり、少し薹が立った存在ではありますが、彼女こそは、整形に依らぬ正真正銘の美人女優でありましょう。
 ところで、彼女のたった一つの欠点は、俗に言う「ガニ股」である、という点である。
 その彼女の「ガニ股」越しに覗く天の橋立こそは、日本有数の奇景でありましょう。


○ ラグビーのトライのシーン映されて平尾誠二さん早過ぎる死 (鳥取県)表いさお

 昨年来のラグビー人気のトップスターとも言うべき、あのヤマハ発動機の五郎丸歩選手は、今、何処で何を遣っているのでありましょうか!
 是れを以て知るに、我が国のラグビー人気は、所詮、一時的なものでしかありません。
 従って、「平尾誠二さん」は〈死に花を咲かせた〉と謂うべきなのかも知れません。


○ 鯉おどるユニホーム着け声援す赤赤赤の広島球場 (呉市)宇津和子

 〈万年Bクラスの広島カープ〉がセントラルリーグの覇者となった今年〈にわか広島カープファン〉が、横浜スタジアムや東京ドームに出没して、正月でもないのに猿廻しの太夫のような赤いちゃんちゃこを着てスタンドで踊っていた事を私は知っています!
 然しながら、日本シリーズを制覇してこそ真実の野球界の覇者ではありませんか!
 前田健太が去り、黒田博樹が引退した来シーズンの勝利者となってこそ、真の意味の広島カープ人気ではありませんか!
 昨シーズンのセントラルリーグの覇者・ヤクルト・スワローズのテイタラクを見なさい!
 彼ら、ヤクルトスワローズの選手諸君の二の舞を踏まないようにして下さい。
 [反歌] 赤赤や赤赤赤や赤赤や赤赤赤の赤字のカープ


○ 秋日和ひと多ければ背伸びして写メール掲げるコスモス畑 (志木市)小高美江子

 その昔、「ラジオと懸けて何と解く」という定番のクイズがありまして、その答は「秋の花畑と解く」であり、その心は「菊(聴く)ばかり」でありました。
 要するに、その頃は、事ほど然様に秋の花としての菊の人気は高かったのでありました。
 然るに、昨今に於いては秋の花としての菊の人気は下がる一方であり、現に先日私が足を運んだ菊花展なども、入場者の殆どが加齢臭をぷんぷんと香らせる老爺・老婆ばかりで、彼らの放つ加齢臭と菊の香とが一体となって、会場内には一種異様な雰囲気が漂っていました。
 その菊とは対照的に、昨今の秋を彩る花として人気が高まって来たのは、本作にも登場し、我が国の歌謡詩を代表して近々ノーベル文学賞を受賞するに違いないと噂されているシンガーソングライター・さだまさし作の『秋桜』にも登場する「コスモス」である。
 この花の何処がそんなに宜しくて日本全国各地に「コスモス迷路」ブームを巻き起こしているかと言うと、それは一に、この花の明るさと清楚さであり、その二は、この花を栽培する上での容易さでありましょう。
 私は、横浜市内での教員生活を終えた後の八年間を、北東北の〈市〉とは名ばかりで、ひょっとすると狐や狸や獺や日本狼などが出没かも知れないような田舎町に棲息して居りましたが、その際驚いたのは、新築後五年にしかならない自宅の空き地(庭)と国道十三号線沿いの自宅前の空き地が、間も無く花を咲かせるだろうと思われるコスモスで埋もれていた事でありました。
 その原因は、新築したばかりの自宅を留守番代わりに家賃無しで住まわせていた、私の連れ合いの姪夫婦が、お金と手間を惜しんで庭の手入れを怠っていた点にもありますが、何処から飛んで来たかも判らないコスモスをそのままにしておくと、その翌年からは、まるで倍々ゲームのようにして自然に生育し、消毒や剪定などの世話一切を要しない、この植物の特質にもあろうかと思われます。
 ところで、本作の意は「秋日和の一日、手軽なハイキングとして、スマホを携えて最寄りの『コスモス畑』に出掛け、友人宛に『写メール』を送ろうとしたところ、あまりにも見物客が『多ければ』『背伸びして』『写メール』を撮っている」といったところでありましょうが、かつて私が住んでいた、件の田舎町の自宅前の国道が時ならぬ混雑に見舞われて、最寄りの交番から駐在さんがお出ましになり、交通整理に当たった事がありましたが、今になってつらつらと思うに、あの原因は、あのコスモスにあったのかも知れません。


○ 山畑の里芋の葉の揺れ止まず狐の親子きて揺らすらし (伊那市)小林勝幸

 本作の作者は、結社誌「かりん」の「作品ⅠA」欄でお馴染みの小林勝幸さんである。
 「かりん」の十月号に、彼・小林勝幸さんは六首の作品を発表なさって居られますが、その裡の一、二首目の作品は、「藪萱草沢潟の花咲くなべに茂吉を思ひ久孝を恋ふ」、「赤彦の歌碑のかたへの石に坐り昼餉しをれば蜩あまた」と、先輩歌人の方々を偲ぶと共に、長野県の住民ならではの郷土色豊かな佳作である。
 ところで、掲出の一首の意は、「『山畑の里芋の葉』が、止む事なく『揺れ』ているが、その原因は『狐の親子』が『きて揺ら』しているものと思われる」といったところでありましょう。
 察するに、「山畑の里芋の葉の揺れ止まず」という歌い出しから三句目までの叙述は嘱目の景色であり、『狐の親子きて揺らすらし』という下の二句は、田舎暮らしの高齢者歌人たる小林勝幸さんのロマンチストたる所以を遺憾なくご発揮なさった想像句でありましょう。
 ところで、本作の読者の方々の中には、私が、本作の作者・小林勝幸さんを名指しして、「田舎暮らしの高齢者歌人たる小林勝幸さん」などと、先輩歌人に対しての礼節を欠いているとも、侮辱しているとも思われる文言を書き連ねている事に関わって、限りなくご不満を覚えられ、「こんな事ばっかり書き連ねているブログなんかいずれ炎上してしまうこと必然である!」などと憤懣やる方無き御仁も、或いは居られましょう。
 だが、よくよく考えてみますると、こうした無作法な文言在っての「臆病なビーズ刺繍」でありますから、その点に就いては、枉げてご許容賜りたく、宜しくお願い申し上げます。 


○ 押して引くこれが大事とアドバイスくれたのは幼馴染みの男子 (富山市)松田わこ

 「男の生徒」即ち「男性の生徒仲間」を指して「男子」と謂うのは、この年代特有の羞恥心から来るものと判断される。 
 それにしても、松田わこさんよ!「幼馴染み」の中学三年生のくせして、「押して引くこれが大事」と「アドバイス」をして呉れるなんて、敵さんはなかなかの狡賢い奴!
 ゆめゆめご油断召される毋れ!
 「私はこれでも日本全国規模で名の知れた歌詠みなのよ!」などと威張っていると、その裡に身ぐるみひっ剥がされて放課後の音楽教室で、彼・男子に馬乗りになられることだって有り得ましょうから、決して、決して、彼に気を許してはなりませんぞ!
 それにしても、「押して引く」とは、中学生とは思えないような、なかなかに意味深な格言ではありませんか!
 松田短歌姉妹のお妹さんの松田わこさんが、「押して引く」という、この意味深な格言の真実を知るのは、「ずっとずっとずっと先のことであれ!」と、私・鳥羽省三は、神様に祈らずには居られません。


○ 列島のどこかでまたも地震ふりて今朝中空にうすき残月 (福島市)美原凍子

 「『今朝』の『中空にうす』く『残』っている『月』」とは、「陰暦十六日以後の、夜が明けても西空に残っている月」即ち「有明の月」であり、この現象自体は、「列島のどこかでまたも地震」がふる予兆でも何でもありません。
 こうした(その時代の常識から判断して)有り得ないような事をいろいろと言いふらす女性を指して、ヨーロッパの中世社会に於いては「魔女」と言い、「魔女狩り」の対象者として、火炙りの刑に処したし、とのことである。
 従って、本作の作者・美原凍子さんもよくよく注意して短歌を詠まなければなりません。


○ 柿の実が夕陽の色に熟れはじめ夕焼け色となりて木枯らし (京都市)五十嵐幸助

 「生り始めは青かった『柿の実が夕陽の色に熟れはじめ夕焼け色となりて木枯らし』が吹く季節になる」とは、真に自然観察の宜しきを得た佳作である。


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