臆病なビーズ刺繍

 臆病なビーズ刺繍にありにしも
 糸目ほつれて今朝の薔薇薔薇

一首を切り裂く(044:ペット・其のⅢ・決定版)

2010年11月25日 | 題詠blog短歌
(ワンコ山田)
○  向日葵の俯くあたり終の巣にペットを終えた子を送る夏

 ご結婚なさって、ご両親の「ペット」としての役割りを果たし「終えた」お子様のお住いになられる「終の巣」即ち<新婚所帯>は、ご両親のお住いになって居られる生家の直ぐ近くかと拝察する。
 何故ならば、新婚夫婦の熱々振りに目を背けて新婚所帯の庭に俯いて咲いている「向日葵」の様子が、本作の作者であり、新婚夫婦の親である<ワンコ山田>さんには見えるのですから。
 「ペットを終えた」と言い、「子を送る」と言いながらも、ご結婚なさったお子様を自分の身近に置こうとするところに、未だ<子離れ>することが出来ないでいる<ワンコ山田>さんの、親としての弱点が窺われる作品である。
  〔返〕 向日葵が俯くような新婚を身近に置こうとする親のエゴ   鳥羽省三 


(詩月めぐ)
○  海を越え漂うペットボトルにも逢いたいひとがいたのでしょうか

 「日本人の海外旅行熱にも一服の感がある」と言われている昨今であるが、名も知らぬ遠き島にも、その昔、旅行中の日本人男性と抜き差しならぬ関係を持った女性が居て、その怨念の籠った「ペットボトル」が、「海を越え」て遙々と日本の海岸にまで漂って来るのでありましょう。
  〔返〕 逢へぬ故その怨念の籠りたるペットボトルは波間漂ふ   鳥羽省三


(蓮野 唯)
○  愛玩もペットもたいして変らない餌の名前は「お前だけだよ」

 そうです。
 彼らのような犬畜生に、いちいち「愛玩」動物だとか「ペット」だとかと名付けて区別するのは、実に馬鹿馬鹿しい習慣である。
 それはそれとして、彼らに与える「餌の名前」が「お前だけだよ」とは、これ亦、蓮野唯さんらしい、素晴らしいネーミングである。
 「お前だけだよ」という名称の動物の「餌」、案外ヒットするかも知れませんよ。
 先ずは、商標登録なさって、それから金回りのいいスポンサーを見つけて事業化しなさったらいかがですか?
  〔返〕 ペットらに「一つだけよ」と言い聞かせ「お前だけだけだよ」食べさせなさい   鳥羽省三
 宜しかったら、事業化の後にテレビCM用のコピーとしてお使い下さい。


(駒沢直)
○  逃避行そんなつもりもない首都高 ペットボトルのキャップを失くす

 本作の作者・駒場直さんは、「『首都高』を車で飛ばす私には『逃避行』、『そんなつもり』はさらさらにありませんよ」と、仰っているのでありましょう。
 だが、今どき、至るところ渋滞だらけの「首都高」を飛ばして「逃避行」をする馬鹿もいないでしょうから、それは<言わずもがな>のことかと思われます。
 それよりも、「首都高」を飛ばしていて、「ペットボトル」のがぶ飲みしてはいけませんよ。
 渋滞していて低速運転だからと安心していたら、車間距離が短いですから、直ぐに玉突き追突事故に結びつきます。
 したがって、「ペットボトルのキャップを失くす」などと呑気なことは言ってられません。
  〔返〕 首都高の先は東北自動車道奥日光は紅葉盛り   鳥羽省三


(空色ぴりか)
○  左手をじゅりあとつなぐ 右手にはペットボトルのお茶  こぽこぽと

 「手」を「つなぐ」相手が「じゅりあ」で良かったですね。
 これが、<天童よしみ>だとか<豪風>だとかだったりしたら、臭くてたまりませんし、それに第一に短歌になりませんからね。
  〔返〕 右手にてソフィア指差し左手に持ったフォークでパスタ絡める   鳥羽省三


(今泉洋子)
○  いつしらにペットのやうに携ふる電子辞書けふも開けゆく

 「電子辞書」を「ペット」代わりに携えて今日も歌会通いとは、大変結構なことでございます。
 で、肝心の詠草のお出来はいかがでございましたか?
 「電子辞書」頼みでは碌な歌も詠めませんよね、今泉洋子さん。
  〔返〕 風景を見ないで電子辞書を見る吟行歌会能因みたい   鳥羽省三


(帯一鐘信)
○  ブーツ脱ぐ時間がなくて玄関のペットマットにお座りをした

 「ブーツ」を「脱ぐ」のには、手間が掛かりますからね。
 その手間暇を惜しんで、「玄関のペットマットにお座りをした」ということですが、それはいけませんよ。
 何故なら、その「ペットマット」には、ついさっき<クロちゃん>がおそそをしたばかりでしたから。
  〔返〕 玄関のペットマットにお座りし年賀の客にお年玉乞う   鳥羽省三


(やすまる)
○  蛇口からペットボトルへ注ぎこみペットボトルの形になる水

 せっかくの好材料なのに、詰めが甘い。
 それを詠むなら、次のように詠みましょう。
  〔返〕 蛇口からペットボトルに注がれてペットボトルの形とる水   鳥羽省三


(ミナカミモト)
○  飲みさしのペットボトルに傾いた月が射し込む主なき部屋

 服喪と「ペットボトル」との組み合わせに目新しさが感じられるが、いかんせん売り物はそれだけである。
 だが、評者はそれなりの数学頭であるから、月齢何日の何時何分何秒ならば、入射角度何十度、屈折率何パーセントなどと計算したくなるのである。
  〔返〕 飲みさしのペットボトルを投げ棄てて残り五キロの勝負に賭ける   鳥羽省三


(南葦太)
○  輪廻していつか世界を救うのだ 何かの満ちたペットボトルよ

 「輪廻」の後には、「ペットボトル」の中に「満ちた」<空洞>が、案外、「世界を救う」日が来るのかも知れませんね。
  〔返〕 お茶飲んだペットボトルに何が満つ徒労と愚痴と漏れた溜息   鳥羽省三


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