臆病なビーズ刺繍

 臆病なビーズ刺繍にありにしも
 糸目ほつれて今朝の薔薇薔薇

古雑誌を読む(角川「短歌」1016年7月号)

2016年12月21日 | 古雑誌を読む
   「大学短歌会が行く!愛知淑徳大学短歌会」より


○ 骨壷が海に流され沈むころ祖母はボトルシップとなるか  久納美輝

 「海に流され」やがて「沈む」運命にある「骨壷」に収められた「祖母はボトルシップとなるか」との妄想は、あまりにも〈乙女チック〉である。
 本作の作者の故郷は、あの東日本大震災の被災地でありましょうか?
 「ボトルシップとなるか」とのロマンチックな想像は、今は亡き「祖母」へのせめてもの餞でありましょうか?
  [反歌] 骨壷を頭に被った大蛸が首都東京に襲来するぞ  鳥羽省三


○ 細長き黒を抱えたミサイルと死ぬためだけに生まれた蚕  本目詩織

 「黒」は不吉な色。
 故に「細長き黒を抱えたミサイル」とは、やがて我が国に襲来するかも知れない、某ワンマン青年に支配されている国から放たれた核ミサイルを積んだ○○号でありましょう。 
 その極めて邪悪な「ミサイル」と対比されている「死ぬためだけに生まれた蚕」とは、私たち日本の後期高齢者でありましょうか? 
 明治時代の我が国は「蚕」が吐き出す〈生糸〉を欧米各国に売却し、その利益で以て船舶や兵器などを欧米の先進国から買い求め、彼の二つの大戦をやらかして世界中から総スカンを食いました。
 未だ年若い、本作の作者・本目詩織さんに私から申し上げますが、過日の轍を踏み、世界中から総スカンを食うような国にならないように、我が国の横暴な政治家や経済人を厳重に見張れるような有権者になって下さい。
 [反歌] 細長き紐を引き摺り狗が行く脱北者には還る国無し  鳥羽省三  


○ ほろびると感じる我に風吹きてちるちるちるるちる音もなく  牧野ふみ

 「ちるちるちるるちる音もなく」とは、作者の性格とは別にあまりにも遊びに過ぎる表現でありましょう。
 それにしても、未だ大学生にして「ほろびると感じる」とは?
 本作の作者・牧野ふみさんは、就活戦線で内定を一個も貰えなかったのかも知れませんし、或いは、三年間お付き合いなさって居られた恋人に振られたのかも知れません。
 そのいずれにしろ、未だ二十歳を過ぎたばかりで「ほろびると感じる」とは、彼女の性格はあまりにも真面目で暗過ぎます。
 私の古い友人の娘のSは名古屋大学に在籍しているとの事ですが、おかちめんこのくせして〈名古屋嬢〉を自認して、日夜、名古屋市内の盛り場・錦界隈で遊び捲くっているとの噂です。
 牧野ふみさんはお名前からしてお淑やかなイメージですから、件の〈おかちめんこ〉の如き振る舞いは、例えご両親に頼まれてもなさらないかと思いますが、現代社会の都会に棲息する女性としては程々の〈遊び〉も必要です。
 何卒、残り少ない青春の日々を楽しくお過ごし下さい。
 [反歌] パン屑が散るちるミチル風に散る青い鳥には未だ逢へない  鳥羽省三

 
○ 卒業式終われば街に売りに行くこのセーラー服買ってください  松田菜々

 就職先に「セーラー服」姿で顔出しする訳にも行きませんから、用済みの「セーラー服」は「街に売りに行く」しか手が無いのでありましょうか?
 でも、まかり間違って変な小父さんの手に入ったとしたら、どんな事をされるかも知れませんから、お売りになる場合は、なるべくならば、大学構内で後輩の女子大生を売るようにしたら如何でありましょうか!
 それともう一点、昨今の大都市の盛り場には、女子高生や女子大生が身に付けた衣服を買おうとして徘徊する、一見紳士風のよからぬ熟年男性が存在する、との噂でありますから、その点にもよくよくご注意なさって青春を精一杯お楽しみ下さい。
 [反歌] 一本のマッチの燃ゆる束の間を吾は覗けりうら若き闇  鳥羽省三