臆病なビーズ刺繍

 臆病なビーズ刺繍にありにしも
 糸目ほつれて今朝の薔薇薔薇

今週の「朝日歌壇」から(11月21日掲載分・其のⅢ)北方四島以南、本日堂々特出し大公開!乞う、ご期待!

2016年12月04日 | 今週の朝日歌壇から
[佐佐木幸綱選]
○ 秋なれば本の栞にこと欠かず橅、柿、桜、檀、鎌柄 (長野県)千葉俊彦

 「橅、柿、桜」までは、何となくイメージすることが出来ますが、「檀、鎌柄」ともなれば、その葉や花の形は勿論のこと、その木自体さえも見たことがありませんので、その葉が果たして「本の栞」としての役割を果たせるかどうか判りません。
 [反歌] 霙、淡雪降り頻り十一月二十四日外出出来ず


○ 誰が決めし木斛目白に黐は鵯山雀に蘞柿は椋鳥 (逗子市)織立敏博

 第十六歌集『ほろほろとろとろ』所収の「目白来て鵯がきて鶫来て椋きたれども母はいまさず」は、佐佐木幸綱氏がお詠みなった、ご慈母・佐佐木由幾氏のご逝去に際しての追悼歌でありますが、この一首に登場する鳥類は、掲出の一首に詠まれている通り、目白が木斛に、鵯は黐の木に、椋鳥は柿の木にと、それぞれ規則正しく止ったと思われますが、鶫だけが何の木に止まったのか判りません。
 [反歌] 鶫来て柿の実を喰ふ椋鳥は己が縄張り侵略されつ


○ 図書室は金の光に包まれてキノコ図鑑を探す放課後 (仙台市)赤松みなみ

 「放課後」の「図書室」に射し入る〈夕日の陽射し〉を「金の光」と述べられたのでありましょうが、「金の光に包まれてキノコ図鑑を探す」という叙述から想像されるのは、〈金色キノコ〉などの毒茸の類でありましょう。
 [反歌] 毒茸は金の光を放ち居り司書の去りにし真夜中の書庫


○ 未熟さに泣いてぽっかりあく穴に詰め込んでいる夕焼けの色 (吹田市)小林そらの

 「夕焼けの色」が射すのは、〈薩摩芋畑の穴〉ならぬ「未熟さに泣いてぽっかりあく」人間の心の「穴」であったのでしょうか?
 [反歌] どの穴に詰め込んだのか夕焼けの色は縹か琉金の尾か


○ 猪の姿続けて三日見る住処なくした人を偲ばす (久留米市)塩山雅之

 「猪」が出没するのは、主として中部以西の西日本であったのですが、私が昨日得た故郷便りに拠ると、その「猪」が、近年は山形と県境を接する秋田県の山岳地帯にも出没しているとのことであり、地元住民は戦々恐々としているとのことであります。 
 でも、この一件で以て、秋田県民を笑いものにしてはいけませんよ!
 今どき、熊に食われて死ぬような正直者は秋田県民ぐらいのものでありましょう。


○ 大根を蕪菁葉蜂に遣られては蒔き直したり今年三度目 (徳島県)一宮一郎

 「蕪菁葉蜂」の訓みは「かぶらはばち」、「昆虫綱膜翅(まくし)目ハバチ科に属する昆虫。原種は広くヨーロッパから朝鮮半島まで分布する。体長約7mmで、頭と胸部の後半が黒く、ほかは橙黄色で、羽は暗色を帯びる。幼虫の食草はアブラナ科の植物で、ダイコン、カブなどに被害が出ることがある。幼虫は2cm近くになり、黒いビロード状のイモムシで、ナノクロムシと呼ばれる。年5、6回発生し、土中に繭をつくり、その中で前蛹体(ぜんようたい)で越冬する。アブラナ科の野菜には本種と同属のニホンカブラハバチとセグロカブラハバチがつき、前者は春秋の2回発生、後者は5、6回発生する。」と、奥谷禎一氏は「日本大百科全書」に記している。
 徳島県にお住まいの一宮一郎さんの大根畑が、件の害虫「蕪菁葉蜂に遣られて」、一年に「三度」も「蒔き直し」をしなければならなかったのは、私・鳥羽省三としては「真にお気の毒様」としか申し上げようがありません。
 折りも折り、大消費地の首都圏内各地のスーパーや八百屋では、大根が物凄い高値を呼んでいますから、蒔き直した大根を正月前にご出荷なさって、気持ちにゆとりのある新年をお迎え下さい。


○ 草取りでゐのこづちだらけの我の横ゐのこづちだらけの猫通る (延岡市)片伯部りつ子

 「ゐのこづち(いのこずち・牛膝)」は「ふしだか・こまのひざ」とも呼ばれ、「ヒユ科の多年草。平地によく見られる雑草。茎は四角形で節が太い。小さな実には刺があって動物や人の衣服に付着し、払っても取れ難い。牛膝(ごしつ)は漢名。根は生薬として用いられる。」とか。
 また、俳句の秋の季語としても用いられ、「ゐのこづち野武士の貌の猫帰る」は、俳誌「京鹿子」所属の平佐和子さんの詠んだ名吟でありますが、この俳句でも、延岡市にお住まいの片伯部りつ子の短歌でも、「ゐのこづち」と猫との取合せが見られるのは、引っ付き虫の植物「ゐのこづち」が、毛むくじゃらの猫の身体にくっ付き易いからでありましょう。


○ まえのはがさんぼんぬけたよわらったらかぼちゃのおばけのくちになったよ (奈良市)山ぞえ葵

 それはそれは、お気の毒様でした。
 それはそれとして、さる十月三十一日のハロウィーンを前にして、我が家では昨年の失敗に懲りて、明治製菓のチョコスナック・「きのこの山」や「たけのこの里」などを大人買いして、悪魔に扮装した子供たちの訪れを待っていたのでありましたが、周到に準備していた今年に限って、子供たちの訪れは無く、私も家内も愕然として思いに囚われた次第でありました。
 そこで、その解決策として、その翌日に、私と家内は、自宅と徒歩十五分の距離に在る、家内の実妹宅を訪れ、手土産代わりにそれらのお菓子を手渡したのでありましたが、その翌日の昼の留守中に、あろうことか、飼い犬のクロがチョコスナックの殆どを食べてしまったとのこと。
 昔から「犬にチョコレートを食べさせることは、人間にマリフアナを吸わせることも同然だ」との話がありますから、私と私の連れ合いとは、「私たちの不注意が飼い犬クロの死に繋がるのではないか?」と心配していたのでありましたが、あれから二十日以上過ぎた今日まで、クロが死んだという話は聞きません。