禁酒法時代のニューヨーク。裏組織カモッラではフィーロの幹部昇進の話が持ち上がっていた。警部補はそんなカモッラに手を出せずいらだっていた。同じころ、ニューヨークに泥棒カップルがやって来た。そして各人の物語は錬金術が生み出した不死の酒をめぐり、収束していく。
第9回電撃ゲーム小説大賞金賞受賞作。
出版社:メディアワークス(電撃文庫)
群像劇である。そのため登場人物は大勢いるが、各人物がそれぞれ行動していく中、破綻することなく物語をまとめ上げている手腕に感服する。バラバラのエピソードをひとつに収斂させる技巧など、20代前半の新人の手によるものとも思えないほど洗練されている。
ていうか投稿作としてはとんがりすぎだろう。
本作はそういったエピソードやキャラの交通整理が上手いばかりでなく、それを出す順番などの構成力、演出力も優れていて、テンポがいい。
たとえば群像劇により、物語がどのように収束するのかという期待を持つことができたし、エニス誕生の秘密や、マイザーのかかわりなどの錬金術に関わる謎の存在も物語をおもしろくしている。それに適度に挿入されるアクションの描き方も良く、出すタイミングも上手い。
また本作は群像劇の中でもっとも重要な点、キャラの造形が抜群に上手かったと思う。あるキャラはおバカで、別のキャラはときにいかれていて、どこかユーモラスだ。
神の視点としては若干違和感のある文体ではあるが、瑣末なものでしかない。
個人的にはドツボであった。ライトノベルを読まない人にも読んでほしい作品だ。
評価:★★★★(満点は★★★★★)
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