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私的感想:本/映画

映画や本の感想の個人的備忘録。ネタばれあり。

「寝ずの番」

2006-05-21 18:13:07 | 映画(な行)
2006年度作品。日本映画。
中島らも原作の喜劇を映画化。お通夜の席で寝ずの番をする人々の様子を艶っぽい笑いを交えて描く。
監督はマキノ雅彦。俳優、津川雅彦が祖父マキノ省三、叔父マキノ雅弘と同じマキノ姓を襲名し、初めてメガホンを取る。
出演は中井貴一、木村佳乃 ら。


基本的にくだらない映画である。もちろん喜劇においてくだらないは立派な誉め言葉であり、実際それなりに面白い映画であった。
内容自体は、基本的に下ネタのオンパレードでエピソードも実にくだらない話題が展開される。それが部分部分で滑っていたのだけど、笑える部分も所々にあったし、時間潰しにはちょうどいいのではないだろうか。

はっきり言って、見た後には何も残らないのだけど、コメディというものは本来そういうものだろう。

評価:★★★(満点は★★★★★)

「ナイロビの蜂」

2006-05-14 16:56:01 | 映画(な行)


2005年度作品。
イギリスのミステリー作家、ジョン・ル・カレの作品を映画化。NGO活動に従事していた妻の死の真相を探るため、その裏にある陰謀に近付いていく外交官の姿を描く。
監督は「シティ・オブ・ゴッド」のフェルナンド・メイレレス。
出演は「イングリッシュ・ペイシェント」のレイフ・ファインズ。本作でアカデミー賞助演女優賞を受賞したレイチェル・ワイズ。


本作でもっとも目を引いたのはやはりレイチェル・ワイズだろう。
そのまっすぐな熱意とひたむきな情熱がスクリーンの向こう側から伝わってきて存在感が光っていた。準主役ではあったが、主人公を食っていたのはまちがいない。その強いインパクトのために、この映画は彼女のための映画なのだな、という感じすらしたほどだ。

作品そのものはサスペンスタッチである。プロットは起伏に富んでいて簡単には飽きさせない。そしてそれに、アフリカにおける企業の利権や、そこにある非人道性の追求といった社会派のテーマを加味して描き出している。
詳しい描写はなく、つっこみは足りないと思うけれど、そこにある貧困とエゴの描写は悲惨だ、と思った。
個人的には飛行機で脱出するとき、子供を見捨てざるをえなくなるシーンが印象深い。人間は決して全ての人間を救うことができないのだな、と思い知らされた。

本作はラブストーリーと銘打たれているけれど、それと同時に、愛に裏打ちされた硬派な作品と思った。なかなかの良作である。

評価:★★★★(満点は★★★★★)

「ニュー・ワールド」

2006-05-13 21:35:04 | 映画(な行)


2005年度作品。
新大陸アメリカを舞台に、ディズニーアニメにもなったポカホンタスとジョン・スミスのラヴストーリーを描く。
監督は「シン・レッド・ライン」のテレンス・マリック。
出演は「アレキサンダー」のコリン・ファレル。新人のクオリアンカ・キルヒャー ら。


何と言っても映像が美しい。その川の流れ、背景の平原、光差す太陽の映像。全てが叙情的で詩的である。
加えて劇中では対話よりも独白の方が多く、余計に叙情の雰囲気が出ていたように思う。

一方で、物語の方は映像と違い、叙事的なものになっている。新大陸アメリカに入植した白人と原住民の対立と愛情の交流という物語には雄大な雰囲気が出ていて心地良い。
物語の叙事と映像の叙情がうまい具合マッチした作品と僕個人は思った。その点はすばらしい。

だが、プロットそのものは平坦なくらいに淡々と進んで、盛り上がりには乏しい(戦闘シーンは除くけど)。それに映像が美しく、流れるように進んでいくために、どこにも心が引っかからず、物足りない、食い足りない感じが後に残ってしまう。
しかしこの雄大な世界の中で繰り広げられるパーソナルな感情のもつれの様はなかなか悪くない。世界観を楽しむだけでも充分満足できる映画だった。

評価:★★★★(満点は★★★★★)

「ナルニア国物語 第1章:ライオンと魔女」

2006-03-06 23:54:22 | 映画(な行)


映像化不可能と言われたC.S.ルイスのファンタジーを映画化。衣装だんすの向こうに広がる別世界、ナルニア国に紛れ込んだ4人の子供たちの冒険を描く。
監督は「シュレック」のアンドリュー・アダムソン。


正当的で純粋なファンタジー映画であり、いい意味で単純なエンターテイメントである。そういう映画の基本はただ一つ――単純に楽しむ、それだけだ。

異世界に紛れ込んだ少年少女たちがそこで救世主となる。いいではないか、そういうストレートな話も。
僕自身、この映画を見て、童心を取り戻した気分である。観ていて何度もわくわくした。そのわくわく感を堪能すればいい。理屈など要らない。

と言いながらも、もちろん不満もいくつかある。
まず主役の4人のキャラが若干薄いこと。それにそれぞれの葛藤なりを描いた方がもう少し物語に深みが出たと思う。
それに根本的な物語設定にいくつかの疑問が残ったこと。露骨にネタばれになるので触れないけれど、細かい説明がないので少し納得いかない面もあった。
あとは後半少しだれたことである。もうちょっと短くした方がメリハリはついただろう。

だがエンターテイメント作品と考えれば、あまり突っ込みを入れるのも酷なのかもしれない。そう、やはり冒頭に述べた通り、単純に楽めばいい。細かい部分は目をつぶればいいのだ。

評価:★★★★(満点は★★★★★)