ただ生きるのではなく、よく生きる

自然の法則をとらえ、善(よ)く生きるために役に立つ情報を探して考えてみる

便利さ、豊かさにあえてストップをかける

2017-05-31 15:59:55 | 知恵の情報
贅沢しか知らない若い世代とちがって、私たちはもののない生活も知っています。
物質的な豊かさ、便利さ、高度さが必ずしも「善」ではないことを知っているのは、
私たちの強みです。

たとえば、飛行機で12時間かかるニューヨークまでの距離を、音速移動でわずか
2~3時間に縮める必要はあるのか。私には弊害の方が多いような気がします。
高度すぎる文明は、人間の心を破壊しかねません。

極端な豊かさや便利さにストップをかけるのも、私たち老人の役目です。詩人
ワーズワース(1770~1850)の言う「生活は簡素に、志は高く」を実行すべき
は、いまなのです。

若い人に老人のパワーを見せてやりましょう。その気になれば、年老いてから
でも新しいことは始められます。人間は生きているあいだに脳の三分の一しか
使っていないという説もあるのですから、なおさらです。

私は90歳になりますが、いまだに現役で、創造力も行動力も若い人には負けない
つもりです。いま75歳の人なら、私と同じ90歳まで、たっぷり15年もあるでは
ありませんか。

「老人」ということばはストレートすぎるからと、最近ではもっぱら「高齢者」と呼ぶ
ようですが、私は寧ろ老人と呼ばれたい。それも新老人と。

「老」という字は本来、尊敬される対象に使われてきたことばなのです。若い人
に「あんなふうに年をとりたい」と思わせるくらいの老人になりましょう。尊敬を
取り戻すためにも、老人自らが行動を起こすときです。

─『生き方上手』日野原重明 いきいき株式会社