ただ生きるのではなく、よく生きる

自然の法則をとらえ、善(よ)く生きるために役に立つ情報を探して考えてみる

夫婦ゲンカは極地戦でおさめる

2017-05-30 16:39:15 | 知恵の情報
「急いでポストへ出してくれ」と大田さんは二階からかけおりて妻の貞子さんに言った。
この手紙には、仕事をまわしてくれた某先輩へ、対して、それを引き受ける、という
承諾の返事がしてあり、それは急ぐ内容のものでもあった。大田さんが二階へもどって、
しばらくしてタバコを取りに茶の間へおりたとき、さっきの手紙がまだ茶ぶ台の上へ
のかっていた。大田さんはカチンと頭へきた。「まだ出さないのか、急ぐと頼んだじゃ
ないか」

貞子さんにしてみれば、今あみかけている夫のセーターが、ひとくぎりまでくれば、
買い物のついでに出しておこう、と思っており、そのあみ止めまで今少しなのだ。

「何も、そんなにガミガミ言わなくても、あたしだって、忙しいんだから」
何の気なしに貞子さんもつい反抗を示したことから、問題はポストへ行くことから、
大田さんの独善ワンマンぶりへ、大田さんは貞子さんの自分の気持ちを少しも
察してくれない思いやりなさわめきたてるなどに発展して、夫婦の感情はこじれて
しまった。あたかも精巧な機械がわずかなホコリのはいったために働かなくなった
と同じように。そして最後通牒のセリフを投げつけた貞子さんが坊やを連れて
中野の実家へ行こうと玄関へおりたとたん、伯父さんが来た。まさに時の氏神
伯父さんは次のような三か条を出して次のような三か条を出してこのケンカを
まるくおさめた。

(一)ケンカの原因となったポストへ行く行かない問題を限りそれ以上に発展
   させない。
(二)一方が話しているときは、一方は聞き役にまわる。
(三)「なにもそんなささいな事を」という考え方をどちらも捨てる。相手にとって
   は生命にもかかわる重大事なばあいもあるのだから。

─『一日一言 人生日記』古谷綱武 編 光文書院より