ただ生きるのではなく、よく生きる

自然の法則をとらえ、善(よ)く生きるために役に立つ情報を探して考えてみる

真剣に生きてきた人の証は、善に対する愛と、人間のまことです

2017-05-04 16:40:19 | 知恵の情報
人生が明らかにその終わりに傾いている今、(この文章がおさめられている
「新書簡集」はヒルティの死の三年前に公刊された)わたしには、たといそれが
どのような種類の享楽であろうと、この世の美であろうと、名誉であろうと、芸術・
学問・教養であろうと、いやそればかりか全存在活動や目的でさえも、この人生
が持っているありとあらゆるいわゆる宝や価値が、いかに重要でないものであり、
従ってどちらかといえば真剣に追求するには値しないものに思われるかという
ことを、わたしはあなたに十分お伝えすることはできません。

ただ一つの例外は、善に対する愛と、人間のまことです。

一切の地上のものが夢に沈む前に、人生の最後の自覚的瞬間に、「なんといっても
わたしは結局、善を愛し、悪を軽蔑してきた。そしてわたしに与えられた善良な人々
にまことをつくしてきた」と考えることのできる人だけが、真実に生きてきた人なの
です。そのような人だけが過ぎ去った跡を省みて、どのような未来へ向かってでも、
たとい──そういうことがありうるとすれば──未来なき未来へ向かってすらも、
心やすらかに赴くことができるのです。(新書簡 キリスト教)

─『希望と幸福 ヒルティの言葉』 秋山英夫訳編 現代教養文庫
  社会思想社