タミアのおもしろ日記

食文化・食育のお役立ちの話題、トンデモ食育、都市伝説、フードファディズムなどを分析して解説します!(^.^)

カール終了。「消費者のコーン菓子離れが原因」説は矛盾。

2017年07月25日 | Weblog
少々旧聞ですが、明治のロングセラーお菓子「カール」が東日本で販売停止するニュースは日本中を駆け巡りました。私も子供時代にカールをたくさん食べましたし、今でもあの味は大好きです。ひこねのりおさんの手がけたカールおじさんのCMも大好きでした。それが東日本で販売されないということが残念で、なぜだろうと気になり、様々な報道をチェックしました。

すると、奇妙なことに気がついたのです。結構な数のメディアや個人が「消費者がコーン菓子離れを起こして、ポテトチップスの方に人気が移ったから。」と言っているのです。しかしその説明は、すぐに壁にぶつかるのです。

例えば、やおきんの「うまい棒」はコーン菓子ですよね。「ポテチが人気だから」という説明では、うまい棒の大人気ぶりが説明できません。すかさず「うまい棒は個包装で手が汚れないから、コーン菓子にもかかわらず人気なのだ。」と説明している人もいましたが、あれれ?変ですよね。ポテチって手が汚れますよね。話が矛盾しています。

ちなみにコーン菓子の「セブンのチーズリング」も、人気商品らしいですし、手が汚れます。

「カールはコンビニでフェイスがでかくて嫌われたが、うまい棒はフェイスが小さいから好まれたのだ。」という説もありました。フェイスとは、簡単に言うと、棚に占める表面積のことです。顔がでかいか小さいか、という考え方です。小さい店舗に多数の商品を詰めたいコンビニ経営者の視点から見れば確かにそれは一理ありそうですが、それを言っちゃうと、フェイスの大きい各種のお菓子(おせんべいなど)も結構コンビニの棚に並んでるのはなぜでしょうか。お客に人気があればフェイスの大きい商品もコンビニに残るのです。

それに、フェイスはメーカー側にとっては、商品の広告宣伝の最後の砦ですので、フェイスが大きいとメーカにとっては商品名を消費者に覚えてもらいやすくて有利なのです。なぜ明治のような大会社がこのアドバンテージを活用できなかったのか。

カールはかさばるから物流コストがかかるからだ、という説もありました。でも、それを言っちゃうと、なぜポテチは売れているのでしょうか?ポテチは思いっきりかさばるのですよね。

・・・「コーン菓子がポテチに食われた」説はどうも奇妙です。

プレジデントONLINEでは6月22にライターの吉田綾乃さんがカール分析記事を書いています。その中で、製造コストがかかることがネックだと指摘しています。これは重要な指摘と思います。確かに、エクストルーダ(というマシンがあるのですよ。)と特注の専用口金がないとカールは作れません。関東地方の工場の製造ラインが耐用年数に近づいてきて、新しい設備に投資しても元を取るには時間がかかると考えた、というのがおそらく真実に近いのではないでしょうか。もちろん、想像の域を出ないのですが。

一方、東洋経済ONLINEでは調達・購買業務コンサルタントの坂口孝則先生が鋭い指摘をされていました(5月27日付け記事)。スーパーマーケットでの人口100万人あたりのカール売上金額を分析したら、中部・東北・北海道で売り上げが低いという事実が判明したというのです。関東は売り上げが高くて人口も多いのですが、データを分析すると、西日本での製造販売に特化した方が利益が上がりそうなことが推察されるというのが、坂口先生の指摘です。

「中部・東北・北海道の人だけがポテチが好きでコーン菓子が嫌い」ということは考えにくいので、やはり、「ポテチにコーン菓子が食われた」説は怪しい、と考えるべきでしょう。

ではなぜ中部・東北・北海道の人がスーパーでカールを買わないのか、それが、さっぱりわからないのです。
ただ、いくつかはっきりしている事実があります。

日経新聞の6月2日付け記事は厳しい内容で、カールファンとしては、少々ショックな内容でしたが、今の若い世代は「それにつけても」のCMソングを知らないというのです。記事は、CMソングを放送しなくなったため、商品の価値が低下したのではないかという指摘でした。確かに、食品にかかわらずあらゆる業界で、国民的に知名度の高いCMソングやジングルは財産ですから、それが忘れられてしまったら商品自体の財産価値を毀損(きそん)してしまうことでしょう。

と書くと、「CMなしでも売利上げがV字回復したお菓子があるじゃないか、ピノみたいに」、という声も上がってきそうです。ところが、ピノはリアル店舗(カフェ)を作ってSNSで話題を作るという、若者向けの戦略を練ったので回復したのです。同様にうまい棒やガリガリくんやポッキー、ベビースターなどの定番菓子も、おもしろいイメージや楽しいイメージ、おしゃれさや新しい食べ方の提案などを様々な手法で、若い世代に喚起するキャンペーンをやっています。かっぱえびせんは幼児向けに低塩分の小袋を販売して、非常に若い消費者を開拓しています。

と書きながら、「あれ?、明治も『おらが村』ホームページを作ったり、合格祈願のウカールというパッケージで販売したり、イケメンの実写版カールおじさんの広告を発信していたよねー。」と、疑問もわいてきました。

そこで改めて調べてみると、今の若い方には「おらが村」の「おらが」という言葉さえ古語で意味がわからないということのようです。ネットの知恵袋ページで「おらがってどういう意味ですか?」と尋ねている人もいる位です。意味のよくわからないページには確かにアクセスしたくないですよね。

「それにつけても」という言葉の意味がわからないと知恵袋ページに尋ねている人もいました。そうか、もはや古語なんだ、昭和は遠くなりにけり、と思いました。残念ですが、「カール」を構成するキーワードが若い世代に理解しにくくなっていたのです。

実写版カールおじさんの方も、私の身の回りで知る限りでは、うまい棒のキャラ「うまえもん」に「妹がいた!」キャンペーン、「ベビースターのキャラが新しくなったよ」キャンペーン、などと比較すると、大きな話題にはなりませんでした。
うーん、明治さんはいろいろと頑張っていたのですが、どうやら若い人の間での話題作りに成功しなかったようですね。また、経営上の指針として、チョコとヨーグルトに広告宣伝を投下する「選択と集中」を行っていたと伺っています。おそらく、カールは広告予算が削られたのではないかと想像します。そうした理由で、CMソング等を知らない若い世代はカールを知らない世代に変化していった可能性もあります。

ところで、うまい棒の工場の近くには、巨大なうまい棒のモニュメントがあり、地元の人も工場があることを我がことのように誇りに思っているのです。ベビースターも、同様に、地域の人が非常に誇りにしていました。両商品に関しては何度かそういうファンに会っています。彼らが目をキラキラして自慢するのをまぶしく見ていましたが、実にいい笑顔でした。このように、リアルに商品の「ふるさと」があり、リアルに応援してくださる人のいる商品は長続きするのではと思います。

ということで、以上をまとめると、「ポテチにコーン系菓子が喰われた」という説はうまい棒の大人気などから見ても首をひねる説であり、本当は、カールという特定の商品に関して複合的要因が重なった、と考える方が実態に近いのではないかと考えます。

いずれにせよ、また、東日本でも復活してほしいなあ。


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