今日は、日本で胃がんが激減した理由を説明します。
最近いろいろなところで「冷蔵庫が広まったから胃がんが減った」と聞きます。
これを「冷蔵庫が広まったら衛生状態が良くなってピロリ菌感染が減ったからだよ。塩分が原因なんて昔の説だよ。」と誤解する人が急増しています。
なぜ誤解と言えるかというと、ピロリ菌感染経路について、次のことがすでに判明しているからです。
(1) 幼児期に井戸水を飲んでいた人にピロリ菌感染率が高い。
(2) 人の糞便や唾液から見つかるので、親から子への口移しなどで感染する可能がある。
(3) ピロリ菌は自然界で見つかった例がいまだない。
(4) ピロリ菌は酸素があると死滅する。
(5) 以上から、井戸水を飲んでピロリ菌に感染したのは、水洗ではなく昔のタイプのトイレの近くに井戸があったためではと推察される。上下水道が未発達な地域で糞便経由のピロリ菌が井戸に混ざり、井戸水は低酸素状態なのでピロリ菌はすぐには死滅せず、まだ生きている間に井戸水を飲んだのではないかと考えられる。
以上5点から、冷蔵庫とピロリ菌感染には関係ないとされます。冷蔵庫があろうがなかろうが、酸素があるとピロリ菌は死ぬから。
では、冷蔵庫が広まったら胃がんが減った理由はなんでしょうか。
実は、ピロリ菌と塩分の2つがセットの時に胃がんになりやすいことがわかっています。
ピロリ菌を持っていても、低塩分の食事を食べていると胃がんが発症しにくいし、塩漬けの魚介類(たらこ・いくら・塩辛など)や漬物などをたくさん食べる人は胃がんが発症しやすいのです。
というわけで正解は「冷蔵庫が広まったおかげで、生鮮食品の摂取が増えて塩漬け食品の摂取量が減ったから胃がんが減った。」です。
十数年前にWHOの幹部が、あるある学者ジョークで「冷蔵庫を使ったら(減塩できるようになったから)胃がんが減ったんだよね」と論文に書いたのが、「冷蔵庫が広まったから胃がんが減ったんだよ」というセリフの、知る限りで最初の例でした。間のクッションをあえて飛ばしてしゃべって、クッション部分を当てられるどうかで教養を量るのは、海外の学者の会話のあるあるです。この手のジョークをかけられたときは、すぐに「さすが先生、ひねりが効いてますなあ。塩分でしょ?」と返せば、相手は「お、こいつ、ちゃんとわかってるな」となるのです。
クッションがわからないときは素直に、「先生、冷蔵庫を使って胃がんが減る?なんでですか?」と聞けば、「君は勉強不足だなあ。ははは。」などと言って、答えを教えてくれるもんです。しかし悲しいかな、プライドが邪魔してわかったふりして受け流して、あとから「冷蔵庫を使うと胃がんが減る?なぜ?なぜ?低温で保存すると、汚染された食品の表面のピロリ菌が増えないからなのかな」などと妄想した人が日本にいたのでしょう。だから、日本では、冒頭に書いたような誤解がひろまったのではと考えます。
この誤解を積極的に唱えている人は、2パターンあります。一つは、個人経営の消化器内科医。ピロリ菌は酸素で死滅するので冷蔵庫と菌には関係がないことを知らないためです。知っている医師も、減塩を薦めるより除菌を薦めるほうが胃がん予防に手っ取り早いと考えて塩分の話は避けているようです。
もう一つのパターンが「和食が体に良い」という説を唱えている人。この文脈の和食とは、醤油や干物や塩辛など伝統的な塩分の多い日常食を指しています。彼らは「漬物は発酵してるから体に良い」「醤油は健康に良い」などとおっしゃってるものだから、塩分の話はなかったことにしたいのです。だから一生懸命、「胃がんの原因はピロリ菌だ。塩分なんか関係ない!」と意固地になっています。有名な医者でもこういうおかしな議論につい引っかかってしまうとは、日本の将来が心配です。日本を心から愛しているからこそ、和食が好きだからこそ、低塩の漬物を選んだり、だしをきかせた低塩の味噌汁など、塩分ひかえめでおいしい和食を食べたいと思うこのごろです。
最近いろいろなところで「冷蔵庫が広まったから胃がんが減った」と聞きます。
これを「冷蔵庫が広まったら衛生状態が良くなってピロリ菌感染が減ったからだよ。塩分が原因なんて昔の説だよ。」と誤解する人が急増しています。
なぜ誤解と言えるかというと、ピロリ菌感染経路について、次のことがすでに判明しているからです。
(1) 幼児期に井戸水を飲んでいた人にピロリ菌感染率が高い。
(2) 人の糞便や唾液から見つかるので、親から子への口移しなどで感染する可能がある。
(3) ピロリ菌は自然界で見つかった例がいまだない。
(4) ピロリ菌は酸素があると死滅する。
(5) 以上から、井戸水を飲んでピロリ菌に感染したのは、水洗ではなく昔のタイプのトイレの近くに井戸があったためではと推察される。上下水道が未発達な地域で糞便経由のピロリ菌が井戸に混ざり、井戸水は低酸素状態なのでピロリ菌はすぐには死滅せず、まだ生きている間に井戸水を飲んだのではないかと考えられる。
以上5点から、冷蔵庫とピロリ菌感染には関係ないとされます。冷蔵庫があろうがなかろうが、酸素があるとピロリ菌は死ぬから。
では、冷蔵庫が広まったら胃がんが減った理由はなんでしょうか。
実は、ピロリ菌と塩分の2つがセットの時に胃がんになりやすいことがわかっています。
ピロリ菌を持っていても、低塩分の食事を食べていると胃がんが発症しにくいし、塩漬けの魚介類(たらこ・いくら・塩辛など)や漬物などをたくさん食べる人は胃がんが発症しやすいのです。
というわけで正解は「冷蔵庫が広まったおかげで、生鮮食品の摂取が増えて塩漬け食品の摂取量が減ったから胃がんが減った。」です。
十数年前にWHOの幹部が、あるある学者ジョークで「冷蔵庫を使ったら(減塩できるようになったから)胃がんが減ったんだよね」と論文に書いたのが、「冷蔵庫が広まったから胃がんが減ったんだよ」というセリフの、知る限りで最初の例でした。間のクッションをあえて飛ばしてしゃべって、クッション部分を当てられるどうかで教養を量るのは、海外の学者の会話のあるあるです。この手のジョークをかけられたときは、すぐに「さすが先生、ひねりが効いてますなあ。塩分でしょ?」と返せば、相手は「お、こいつ、ちゃんとわかってるな」となるのです。
クッションがわからないときは素直に、「先生、冷蔵庫を使って胃がんが減る?なんでですか?」と聞けば、「君は勉強不足だなあ。ははは。」などと言って、答えを教えてくれるもんです。しかし悲しいかな、プライドが邪魔してわかったふりして受け流して、あとから「冷蔵庫を使うと胃がんが減る?なぜ?なぜ?低温で保存すると、汚染された食品の表面のピロリ菌が増えないからなのかな」などと妄想した人が日本にいたのでしょう。だから、日本では、冒頭に書いたような誤解がひろまったのではと考えます。
この誤解を積極的に唱えている人は、2パターンあります。一つは、個人経営の消化器内科医。ピロリ菌は酸素で死滅するので冷蔵庫と菌には関係がないことを知らないためです。知っている医師も、減塩を薦めるより除菌を薦めるほうが胃がん予防に手っ取り早いと考えて塩分の話は避けているようです。
もう一つのパターンが「和食が体に良い」という説を唱えている人。この文脈の和食とは、醤油や干物や塩辛など伝統的な塩分の多い日常食を指しています。彼らは「漬物は発酵してるから体に良い」「醤油は健康に良い」などとおっしゃってるものだから、塩分の話はなかったことにしたいのです。だから一生懸命、「胃がんの原因はピロリ菌だ。塩分なんか関係ない!」と意固地になっています。有名な医者でもこういうおかしな議論につい引っかかってしまうとは、日本の将来が心配です。日本を心から愛しているからこそ、和食が好きだからこそ、低塩の漬物を選んだり、だしをきかせた低塩の味噌汁など、塩分ひかえめでおいしい和食を食べたいと思うこのごろです。