タミアのおもしろ日記

食文化・食育のお役立ちの話題、トンデモ食育、都市伝説、フードファディズムなどを分析して解説します!(^.^)

ショック!高校家庭科教科書に痛恨のミス!

2024年01月27日 | Weblog
東京書籍の文部科学省検定済教科書「家庭総合 自立・共生・創造」(2東書・家総307)に、和食の説明でとんでもないミスがありました。この教科書(2東書・家総307)は平成28年から今年頃まで使用されていたので、令和6年度からの高校生は新しい教科書で習うからいいのですが、今の大学生や新人社会人の方は間違った教育を受けているので、このブログをよくよんで間違いを訂正してください。

間違いの部分は175頁の下記記載「ユネスコ無形文化遺産に登録された「和食の特徴」」の左から2番目の「栄養バランスに優れた健康的な食生活」という部分と「一汁三菜を基本とする食事スタイル」の部分です。写真を引用したのでご覧ください。

このブログでこの2年ほど繰り返し言っていますが、ユネスコは一汁三菜なんて登録せず、様々な形態があるとして登録しています。またユネスコは和食を健康的なんて一言も言っていません(詳しくは前回の投稿をご覧ください)。

しかも表の下には、江原絢子先生の論文に基づいてこの表を作成したと書いてありましたので、実際にその論文を読んだら、江原先生は、和食の特徴が一汁三菜だなんて一言も書いていませんでした!ねつ造レベルの出来事で呆然となってしまいました。著作権の関係で江原先生の論文の全てを掲載出来ませんので、一部分を紹介しますが、これこの通りです。


 武家の供応食(お客様へのおもてなし料理)の本膳料理というのがあり、本膳料理は普通は複数のお膳で出される料理だが、その中の「一の膳」と呼ばるパーツが一汁三菜だったと明記されています。
 つまり、一汁三菜は「お客様向け特別料理の中の、さらに、メインディッシュの部分だ」ということになります。一汁三菜は普段自分が食べる料理のことではありません。
 日常食は大名レベルでも一汁一菜か二菜で、飯・汁(すまし汁や味噌汁など)・菜(おかず。魚など)・香(漬物)を食べたと記されています。

 なお、一の膳は3つのお膳からなります。まず1つめがお茶や菓子ののったお膳でこれを先にお客様に召し上がっていただきます。宴会ではお酒も出します。お茶もお菓子も召し上がった後で、2つめの飯と汁となますなどののったお膳を召し上がっていただきます。そして3つめが焼き物(焼き魚などですね)のお膳となります。この3つのお膳で一汁三菜というご馳走が形成されます。
 こんなパーティー料理を召し上がったことがある方はおそらく100人に一人もいないと思いますがいかがでしょう。こんなパーティー料理が和食の基本ですか?食育で有名な服部某先生は農水省の食育では「和食に回帰して日頃から和食の基本である一汁三菜を食べるべきだ」と唱えていますが、こんな料理を準備するなんて私たち主婦には無理ですよ。

 なんで服部先生も文部科学省も農水省もこうやって歴史を偽造するんでしょうか。「どうせだれもユネスコのホームページの英文を読まないだろう」と高をくくっていたのですか。また、東京書籍と文部科学省は江原先生に謝るべきではないでしょうか。


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ユネスコは和食をどうして無形文化遺産に登録したのか。

2024年01月14日 | Weblog
1月11日の読売新聞で、海外での和食レストラン増加はユネスコが和食を無形文化遺産に登録したことが契機であるかのような文章が書かれていましたが、ミスリードを招く文章で残念です。今回、改めてユネスコが和食を登録した経緯を詳しく書きます。
特に、現在日経夕刊で連載中の土井先生も、ユネスコ登録経緯について少々誤解して学士会講演会を開いたので、木曽功先生著の「世界遺産ビジネス」(小学館新書)などを参考に、詳しく紹介します。

 まず、登録された和食が農山村など地方に残る消えつつある伝統的家庭料理であることは、このブログで繰り返し書いた通りです。
ところがですね、実は10数年前、ユネスコ登録のために国内で組織されたNPO法人の「日本料理アカデミー」は京都の料亭「菊乃井」を中心に組織されたもので、目的も実は、高級料亭の「日本料理」を登録することでインバウンドを狙ったものでした。
 なぜなら2010年にフランスの美食がユネスコの無形文化遺産に登録されてフランス料理業界が活気づいたからです。この登録は当時のサルコジ大統領が活発なロビイング活動をして、ユネスコ担当者が嫌がるなかで無理矢理押し通されたものでした。それで、日本の高級料亭も、フランスがそうくるなら日本も・・・と考えたのです。
 この菊乃井の村田吉弘さんらが農水省と文化庁に声をかけて、最初は和食ではなく、「美味しくて身体に良い日本料理」を登録しようとしたのです。

 このときに国内でもパブコメが行われ、一部の消費者は、「日本食といえば日本料理というイメージを植え付けて、伝統的な日本食がカルシウムや脂質・タンパク質が非常に少なく不健康だった事実を隠うそうとしているのではないか」と反発する動きもあったそうです。しかし日本政府側がうやむや言って押し切ったと聞いております。

 しかしいずれにせよ、日本料理アカデミーと政府側のこの働きかけは失敗寸前に陥りました。ユネスコ側としては保護しなければ滅びそうな文化を登録したかったのです。
それなのにサルコジ大統領(当時。)らの熱心な圧力に屈してフランス料理をいやいや登録するはめになったものですから、日本料理にも冷たい態度でした。そこで、日本政府側はユネスコのパネルミーティング専門家のアジア枠に日本人の愛川紀子氏を送り込みました。パネルミーティング専門家はくじ引きで選ばれるので、くじ運が良くて入れたそうです。愛川さんはユネスコ専門家同士がとんでもないことを話しているを耳にします。「(日本料理はすでに)大ブームで商業的に成立している。無形文化遺産で保護する必要はない」と。

はい、ここで繰り返しますよ。ここ近年いろいろな新聞・雑誌で、ユネスコが和食を無形文化遺産に登録したから和食ブームが起きたんだという情報が流されています。しかしそれは完全なミスリードなのです。登録される前から、ユネスコの皆さんたちも、すでに日本の料理は世界中で人気でレストランも世界各地に出来ているし保護する必要がないと考えていたのです。
嘘だーというあなたのためにもう一つ情報を。日本料理はまず1980年代に北米でスシが大ブームになり、やがて、1990年代後半になると世界各地で日本食レストラン(スシやラーメンやどんぶりものなど様々な料理です。)が開かれるようになりました。しかし、現地人などが店主をやって、現地の好みの味付けに変えられたので、これを快くなく思った日本政府(農水省)は、2006年に「海外日本食レストラン認証制度」を導入して、「正しい日本食」を海外に広めようとしました。ところがこれを知った世界中の国々から、食文化は各地に広まるうちにそれぞれの国の文化に合わせた味付けに変わるもので、それを止めさせようとするのはまるで警察かお前らは!と叫んで「スシポリス!!」と揶揄したのです。確かに日本人が食べているビーフカレーやナポリタンなんかを見れば、インド人もイタリア人もびっくりですからお互い様です。

農水省はこのスシポリスという批判に、振り上げた旗を降ろしました。しかし、海外で生じている「日本食レストランブーム」に対してはなんとしても「正しい日本食」を広めたい。だから菊乃井さんの提案に賛成して、ユネスコ登録に力を入れようとした訳です。

それで、あとはいままでブログに書いた通りですが、愛川さんの機転のおかげで、ユネスコには、和食とは正月のおせち料理を代表とした年中行事を基盤とした食文化全体であり、モチや旬の野菜や魚など非常に多種多様なものであると説明し、おかげでユネスコ側もそんならと登録した訳です。
繰り返しますが、ユネスコに登録されたのは一汁三菜ではありません。しかも健康に良いとも一言も書かれていません。

ユネスコの登録URLをご覧ください。
https://ich.unesco.org/en/RL/washoku-traditional-dietary-cultures-of-the-japanese-notably-for-the-celebration-of-new-year-00869
ユネスコ側の登録文書翻訳をあえてもう一度掲載します。

「和食、日本人の伝統的な食文化、特に新年のお祝い

和食は、食品の生産、加工、準備、消費に関連する一連のスキル、知識、実践、伝統に基づいた社会的実践です。それは、天然資源の持続可能な利用と密接に関係する、自然を尊重するという本質的な精神と結びついています。和食に関連する基本的な知識と社会的および文化的特徴は、通常、新年のお祝いの際に見られます。日本人は新年の神様を迎えるためにさまざまな準備をします。餅つきをしたり、新鮮な食材を使った特別な食事や美しく装飾された料理を用意したりしますが、それぞれに象徴的な意味があります。これらの料理は特別な食器で提供され、家族で、またはコミュニティ全体で共有されます。この習慣は、さまざまな自然食品の摂取を促進します。米、魚、野菜、山菜など地元産の食材を使用。家庭料理の正しい味付けなど、和食に関する基礎的な知識や技術は、共通の食事の時間の中で家庭内で伝承されています。草の根団体、学校教師、料理講師も、公式および非公式の教育や実践を通じて知識やスキルを伝達する役割を果たしています。」
     身体に良いなんてどこにも書いてないでしょう。
(原文はこちら)
「Washoku is a social practice based on a set of skills, knowledge, practice and traditions related to the production, processing, preparation and consumption of food. It is associated with an essential spirit of respect for nature that is closely related to the sustainable use of natural resources. The basic knowledge and the social and cultural characteristics associated with Washoku are typically seen during New Year celebrations. The Japanese make various preparations to welcome the deities of the incoming year, pounding rice cakes and preparing special meals and beautifully decorated dishes using fresh ingredients, each of which has a symbolic meaning. These dishes are served on special tableware and shared by family members or collectively among communities. The practice favours the consumption of various natural, locally sourced ingredients such as rice, fish, vegetables and edible wild plants. The basic knowledge and skills related to Washoku, such as the proper seasoning of home cooking, are passed down in the home at shared mealtimes. Grassroots groups, schoolteachers and cooking instructors also play a role in transmitting the knowledge and skills by means of formal and non-formal education or through practice.」」

身体に良いという文章は、日本政府側が提出したノミネーション文書の中の文です。ユネスコはそれについてはイエスともノーとも言っていません。
ユネスコの立場は「日本政府は健康に良いって言っているけど、健康面を確認するのはWHOの業務。うちは文化遺産として保護対象かどうかを判断しているだけ。」です。
文化遺産に登録されたことで「和食が身体に良いと世界が認めた」なんて言っている土井さん、あなた国際機関の仕組みを知らないですね?

国際歌唱コンテストに応募した男性がノミネーション文書に「僕は柔道も書道も師範級です」と書いて、ステージで歌って受賞しても、本当に書道師範級かまではコンテスト委員会がチェックしてないのと同じです。

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