タミアのおもしろ日記

食文化・食育のお役立ちの話題、トンデモ食育、都市伝説、フードファディズムなどを分析して解説します!(^.^)

ユネスコ無形文化遺産に登録された和食は一汁三菜でない。発酵食品も強調してない。

2023年08月30日 | Weblog
朝倉書店といえば信頼できる書店だったはずなのですが、朝倉農学大系5「発酵醸造学」(北本勝ひこ編)p8の次の記述は明らかな間違いです。

引用「2013(平成25)年12月、「和食:日本人の伝統的な食文化」がユネスコ無形文化遺産に登録された。一汁三菜を基本とする日本の食事スタイルなどが特徴とされる。和食にとって、醤油、味噌、みりん、それに日本酒などの伝統的な発酵食品はなくてはならないものである。」

違います。ユネスコに登録された和食は、正月のおせち料理を代表とした年中行事を基盤とした食文化全体であり、モチや旬の野菜や魚など非常に多種多様なものです。ユネスコに登録されたのは一汁三菜ではありません。しかも発酵食品はだし(昆布や椎茸などの非発酵型のものも多い。)とともに並列で紹介されているので、特に発酵食品に重きを置く内容ではありません。

北本先生の文章は明らかに何か誤解しています。

ユネスコに日本政府(文化庁と農水省)が実際に登録した文章はこちらのURLから読めます。
https://ich.unesco.org/en/RL/washoku-traditional-dietary-cultures-of-the-japanese-notably-for-the-celebration-of-new-year-00869
ユネスコのホームページの概要とノミネーション文書は英文です。英語は苦手という方のため翻訳を以下、紹介します。

まず、ホームページの概要記述をgoogle翻訳したもの。
「和食、日本人の伝統的な食文化、特に新年のお祝い

和食は、食品の生産、加工、準備、消費に関連する一連のスキル、知識、実践、伝統に基づいた社会的実践です。それは、天然資源の持続可能な利用と密接に関係する、自然を尊重するという本質的な精神と結びついています。和食に関連する基本的な知識と社会的および文化的特徴は、通常、新年のお祝いの際に見られます。日本人は新年の神様を迎えるためにさまざまな準備をします。餅つきをしたり、新鮮な食材を使った特別な食事や美しく装飾された料理を用意したりしますが、それぞれに象徴的な意味があります。これらの料理は特別な食器で提供され、家族で、またはコミュニティ全体で共有されます。この習慣は、さまざまな自然食品の摂取を促進します。米、魚、野菜、山菜など地元産の食材を使用。家庭料理の正しい味付けなど、和食に関する基礎的な知識や技術は、共通の食事の時間の中で家庭内で伝承されています。草の根団体、学校教師、料理講師も、公式および非公式の教育や実践を通じて知識やスキルを伝達する役割を果たしています。」


続いてノミネーション文書のうち、和食の説明をしている部分(画面の左から英語版pdfをダウンロードして、マイクロソフトの機能で自動翻訳。和食に関連する個人の名前、登録者の住所や電話番号などの情報はカットしました。また、「土双」は屠蘇の間違いと思われます。)

B. 要素の名前
和食、日本人の伝統的な食文化、特に新年のお祝い

B.2. 該当するコミュニティの言語およびスクリプトの要素の名前 (該当する場合)
和食; 日本人の伝統的な食文化 -正月を例として-

C. コミュニティ、グループ、または該当する場合は関係する個人の名前
(省略)

D. 要素の地理的位置と範囲
この要素は、州の領土全体で実践されています。
基本的な共通点を持つが、北日本の北海道から南日本の沖縄まで多様性に富み、地理的条件の多岐にわたることや歴史的背景の違いに対応している。多様な魚介類や農産物、山菜などを活用することで、地域に多様性が生まれ、日本各地に特有の伝統的な食文化が地域の人々に育まれてきました。


E. 連絡窓口
(省略)

1. 要素の識別と定義
(省略)

(一) 要素を見たことも経験したこともない読者に紹介できる要素の簡単な要約説明を提供します。

WASHOKUは、食品の生産、加工、調理、消費に関連する包括的なスキル、知識、実践、伝統に基づいた社会的実践です。それは、天然資源の持続可能な利用に密接に関連する自然を尊重する本質的な精神に関連しています。WASHOKUは、日常生活の一部として、また年中行事とのつながりを持って発展し、自然環境や社会環境との人間関係の変化に応じて常に再現されています。
和食に関する基本的な知識、社会的、文化的特徴は、日本人が世代から世代へと受け継がれる伝統に没頭し、アイデンティティと継続性を再確認する新年の儀式で典型的に見られます。新年のお祝いの和食は 、各州が独自の歴史的および地理的特異性を持っていることを考えると、地域的に多様性に富んでいます。人々は来年の神々を歓迎するためにさまざまな準備をします。餅を叩いたり、美しく装飾された料理「おせち」「雑煮」「土双」など、それぞれが象徴的な意味を持つ新鮮な食材を使った特別な料理を用意しています。これらの料理は特別な食器で提供され、家族が共有したり、コミュニティメンバーがまとめて共有したりして、人々の健康と社会的結束を確保します。これは、高齢者がこの社会的実践に含まれる意味を子供たちに教える機会を提供します。
和食は、伝統的でバランスのとれた食事を共有することで、日本人がアイデンティティを再確認し、家族やコミュニティの結束を育み、健康的な生活に貢献するために、日常生活の中で重要な社会的機能を持っています。


(二) 要素の担い手と実践者は誰ですか?
(省略)

(三) 要素に関連する知識とスキルは今日どのように伝達されていますか?

家庭料理の適切な味付けやその精神的・健全な側面など、要素に関する基礎的な知識や技術を「おふくろの味:家庭料理」と呼びます。彼らは両親や祖父母から家で彼らの子孫に受け継がれました。地域の高齢者は、自分たちの食文化を若い世代に伝えてきました。これらの精神的で健全な側面、文化的知識とスキルは、食事の時間とイベントを一緒に共有しながら、 主に口頭の伝統と実践によって伝達されてきました。
草の根グループはまた、公式および非公式の教育(学校や料理教室での伝統的な食文化の講義など)または体験の提供(地域の特産品のデモンストレーションや提供など)を通じて、知識とスキルを子供や若い世代に伝えます。
また、学校の先生は、生徒に伝統的な食文化を体験する機会を提供することで、学校のカリキュラムや学校給食の要素に関する知識やスキルを伝達しています。
料理インストラクターは、料理学校や都市の文脈でのいくつかのイベントでそれらを送信します。
また、元素の専門知識・技能を実習生に伝承 し、見習い制度を通じて元素の専門知識を一般社会に伝達することに貢献しています。
これらの知識や技術は、多様な文化の流入や技術開発などの社会環境の変化に応じて常に再現されていますが、その根底にある精神と機能は引き続き浸透しています。したがって、この要素は日本人にアイデンティティと継続性の感覚を提供します。


(四) その要素は今日、そのコミュニティにとってどのような社会的および文化的機能と意味を持っていますか?

日本人は、他の日本人が消費し、先祖が享受していた文化的、社会的、栄養的に適切な食事を共有することで、帰属意識を高め、日本人としてのアイデンティティを再確認します。 例えば 、お正月の特別食によく使われる餅やだし、発酵調味料の味や香りは、日本の伝統的な食生活の象徴であり、日本の伝統やアイデンティティを再確認する貴重な機会となっています。
社会的および文化的機能の観点から、この要素は、非常に高齢者や障害者を含む家族やコミュニティ間の家族的および社会的結束を促進します。新年のお祝いのためのご飯を叩くなど、地域連携や相利共生による様々な行事のための食事の準備は、連帯感や親睦を強める一例です。 食事の時間を共有し、自然の恵みのある食材を一緒に鑑賞することで、人々は家族やコミュニティのメンバーの絆を強めます。このように、 和食原料の生産において農家が共有する連帯の精神など、社会関係資本の発展の基礎を築いてきました。
また、日本人の健康生活、長寿、肥満予防にも貢献しています。米、魚、野菜、山菜など、自然を基盤とした様々な食材や地元産の食材を摂取する必要があるため、栄養的にバランスが取れており、日本人にとって文化的に意味のある食事です。 また、濃厚な旨味のあるだしや発酵調味料に関する知識と実践は、動物性脂肪の代替により、カロリー摂取量の低減や肥満予防に貢献します。

(以下略)

以上で翻訳はおしまいにしますが、ユネスコが受け取った上記文章はあくまでも日本政府側がノミネーションで主張した文章なので、ユネスコは健康面の効果を確認して居ません。ユネスコの立場は「日本政府は健康に良いって言っているけど、健康面を確認するのはWHOの業務。うちは文化遺産として保護対象かどうかを判断しているだけよん。」です。文化遺産に登録されたことで「和食が身体に良いと世界が認めた」なんて言っている馬鹿がいたら、それは国際機関の仕組みを知らない方でしょう。

国際歌唱コンテストに応募した男性がノミネーション文書に「僕は柔道も書道も師範級です」と書いて、ステージで歌って受賞しても、本当に書道師範級かまではコンテスト委員会がチェックしてないのと同じです。

最後に一言。皆さんもちゃんと原文に当たってね。


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