タミアのおもしろ日記

食文化・食育のお役立ちの話題、トンデモ食育、都市伝説、フードファディズムなどを分析して解説します!(^.^)

体に吸収できるコラーゲンがあるって本当?

2017年04月30日 | Weblog
田舎のおばあちゃんから、電話がありました。
「最近膝の関節が痛くてね、お医者に診てもらったら、軟骨がすり減っているのが原因だったんだよ。」
「それはつらいでしょう。体を大事にしてね。」

「うん、うん、だからコラーゲンを飲みはじめたんだ。効果が楽しみでね~。」
「あらら、ちょっとまって。コラーゲンは体に吸収されないんですよ。」

「何を言うんだい。世の中にはこんなにたくさんコラーゲン商品であふれているじゃないかい。」
「明治大学の『疑似科学とされるものの科学性評定サイト』という有名なホームページがあるのよ。それによると、コラーゲンはタンパク質の一種だけど、分子量が30万と非常に大きくて、そのままでは体に吸収されないのよ。分子量というのは、ものすごく簡単にいうと、粒の大きさみたいなものと思ってちょうだい。」

するとおばあちゃんは、意外なことに、笑いながらこういいました。
「あはは、残念だけど、それは古い情報だね。私が飲んでいるのは、ちゃんと体に吸収される、天然○○○コラーゲンだからね。もう科学的に証明されているんだ。」
「え!?」

「まず、ハーバード大学のトレンタム博士が証明して、サイエンスという偉い雑誌にも、のったんだよ。そして、飲んだら痛みが楽になったという論文まであるんだ。エピトープというものがその天然○○○コラーゲンにくっついているから、ちゃんと大きな分子でも体に吸収されるんだ。」

「それって誰が言ってたの?病院の先生が?」
「ううっ。それは・・・その、まあ、その会社の宣伝によると、ね。
でも友達のAさんが勧めてくれた商品だし、ちゃんと研究成果を紹介した本もあるんだ。××社から出版されてるよ。」
「うーん。Aさんは医学にも食品にも詳しくない人だし、××社って聞いたことがないなあ。その本、送ってくれる?調べてみるね。」

後日、本が送られて、おばあちゃんから電話がかかってきました。
「読んだかい?私のいう通りだろう?」
「それがねえ、この本は様々な事実関係を誤解して生まれた、ファンタジーの一種なのよ。本を書いたお医者さんに悪気はなかったと信じたいけど。」
「なに!?どういうことなの?」

「まず、ハーバード大学の先生の研究は、関節性リュウマチという病気に関する研究だったのよ。おばあちゃんの病気はこれじゃないでしょう」
「確かに。単に軟骨がすり減っただけだわ。リュウマチじゃないわ。」

「この研究は、経口免疫といって、食べたものが体内に吸収されなくても、腸内を刺激することで免疫が生じることを示したものなの。
それで、サイエンスにも○○○コラーゲンと関節性リュウマチの関係を紹介する特集が載ったのよね。サイエンスに載ったのは1980年代のこと。ずいぶん昔の話よ。
いずれにせよ、コラーゲンが体に吸収されて軟骨が再生されるという研究ではありません。」

「え?じゃあ私の症状とは関係がない?あ、でも、その本に載っていた別の研究では、変形性関節炎の患者が○○○コラーゲンを飲んだら痛みが和らいだ、ということよ。」
「その研究ね、被験者は犬だったのよ。」
「犬・・・・。」

「おばあちゃん。この本に掲載されているグラフでは、縦軸に『痛みのレベル』という軸がとってあり、横軸は日数になっています。投与したら日に日にグラフが下がっているという図ですが、犬の痛みのレベルが下がったって、どうやって評価するんでしょうね?犬はしゃべらないし。」
「それは・・・。関節の腫れ具合とか、行動の活発さとかを測定するんじゃない?」

「だとしたら、どうしてその数値を縦軸にとらないの?そのほうがよっぽど質の高い論文になったと思うけど。
いずれにせよ、この本を隅々読んでも、人間に効果を確認した実験は掲載されてないのよね。」
「でも、エピトープというものがついているから体内で吸収されると、その本に書いてあるでしょう?」

「そのページなんだけど、誰の何の研究なのかどこにも書いてないのよね。仮説か、実験で証明されたのかすら書いてない。実験だとしたら、培養細胞で行ったのか、人体で確認したのか、そういうことも一切書いてないのよね。
コラーゲンは吸収されないというのが今までの常識だったから、エピトープがついているコラーゲンが体内で吸収されるという話が本当なら、大発見なのよね。当然、どこの誰先生の研究なのか書いてないとおかしいのよね。」
「確かにその通りだわ・・・。残念だけど、1万円近く払って、人間に本当に効果があるかどうかが確認されてないサプリを飲んでいたのね。」

「どうかがっかりしないでください。お医者さんでも混乱した本を書いてしまうくらい難しい話題だから、おばあちゃんがその話をうっかり信じてしまったことはしかたがないわ。」
「私はこれからどうしたらいいのかねえ。そうだ、この間テレビで、コラーゲンを分解した『コラーゲンペプチド』が効くようなことをいってたね。コラーゲンペプチドのサプリを飲めばいいんだね。」

「それがそう簡単な話でもないの。A社のBという商品について、効能を示唆する論文があったけど、ほかのメーカーについては研究中なのよ。それぞれのメーカーで製造法や原料が違うから、同じコラーゲンペプチドという名前でも、実際には違う商品なのよ。」
「じゃあ、そのBという商品を買うよ。」

「ちょっとまって。Bですら、決定的な効果があるとまではわかってないのよ。
厚生労働省の畝山先生という方が発信している「食品安全情報blog」の2017年3月16日の情報によると、こういうことなのよ。
欧州委員会に科学的助言をする機関、EFSAというのがあるんだけど、A社はEFSAに商品Bの健康強調表示を認めてもらおうとして申請し、書類は公式に受理されたのに、最近になって自ら取り下げしたのよ。
『科学的に立証されていない』とEFSAに最終判定されると困るために、その前に取り下げたのでは?というのが畝山先生の見解です。この会社が機能性について自信があれば、取り下げるという選択肢はとらないよね。

コラーゲンペプチドについては各社が研究を進めているから、これからどういう結果になるか、先を待たないとね。」

「なんだか頭がクラクラしてきたよ。ようするに、まだよくわからないということなんだね。それじゃあ私はどうしたらいいのかね?」

「コラーゲンは、タンパク質を食べると体の中で合成されるのよ。だから、高価なサプリでなくても、普通の肉や魚や卵、大豆製品などを食べることが大事です。体内での合成にはビタミンCも必要なので、野菜や果物も一緒に食べてね。
もっとも、ご年配になると、体内でのコラーゲン合成能力は劣ってしまうので、なかなか効果は出にくいけど、諦めるよりはまだよいですよ。それから、膝を使う運動をしすぎると膝に負担がかかるので、気をつけてください。」
「そうなのかい。でもねえ。」

「でもねえ・・・って、なにか問題があるの?」
「スーパーで重い生鮮食品を買って帰ると、膝の軟骨がすり減るんじゃないかと心配なんだよ。それよりかは、自宅に届けてくれるサプリの方が安心じゃないか。」
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