8月23日の東京新聞記事「訪日中 ビーガンだって和食食べたい!」が、いろいろな誤解をしている内容でした。なお、毎度繰り返しますが、新聞が時々間違った記事を書いたからとSNSやyoutubeの「新聞が報道しない事実」番組にはまる人が居ますが、そんなものよりは新聞の方が良いです。
たまに新聞も間違えるので、こういうブログで「信頼できる専門家の情報によると、実態はこうですよ」と訂正情報を提供していますが、基本的に私は新聞の情報に信頼を置いています。
という訳で本題に入ります。
記事は、訪日客にはかなリの割合でベジタリアンやビーガンがおり、和食のかつおだしや天ぷらも食べられないので和食店にうっかり入られない、と主張していました。天ぷらの衣には卵が溶いてあるので野菜天ぷらも食べられない、という理屈です。
そして記事には海外におけるベジタリアンの割合グラフが掲載され、ベジタリアンの多い国順で、インド人の20%、台湾人の12.3%、カナダ人の12%がベジタリアンだとされていました。
ここまでを読んだ読者は、「そんなに訪日客にベジタリアンが多いのか!かつおだしを止めて天ぷらの卵を止めないと、和食店の商売あがったりになる!」と慌てたのではないでしょうか。ちょっと待った。実はこの記事は統計を間違えて用いているのです。
たまに新聞も間違えるので、こういうブログで「信頼できる専門家の情報によると、実態はこうですよ」と訂正情報を提供していますが、基本的に私は新聞の情報に信頼を置いています。
という訳で本題に入ります。
記事は、訪日客にはかなリの割合でベジタリアンやビーガンがおり、和食のかつおだしや天ぷらも食べられないので和食店にうっかり入られない、と主張していました。天ぷらの衣には卵が溶いてあるので野菜天ぷらも食べられない、という理屈です。
そして記事には海外におけるベジタリアンの割合グラフが掲載され、ベジタリアンの多い国順で、インド人の20%、台湾人の12.3%、カナダ人の12%がベジタリアンだとされていました。
ここまでを読んだ読者は、「そんなに訪日客にベジタリアンが多いのか!かつおだしを止めて天ぷらの卵を止めないと、和食店の商売あがったりになる!」と慌てたのではないでしょうか。ちょっと待った。実はこの記事は統計を間違えて用いているのです。
訪日客が多いのは、韓国(28%)、台湾(17%)、中国(10%)、香港(8%)です。一方インド人は0.7%、カナダ人は1.7%しか居ません。(2023年JNTO推計値)。
後で述べますが台湾人の中でかつおだしが食べられない人はだいたい5%ぐらいです。
つまり訪日客の中で、かつおだしが食べられない台湾人は0.9%です。
同じ計算をすると、訪日客でかつおだしが食べられないインド人は0.1%、カナダ人0.2%です。
そうです。ベジタリアンの多い国ベスト3であるインド、台湾、カナダ合計を足し上げても、訪日客の中では1.2%しかいないのですよ。
同じ計算で他の国の人を足し上げても、ベジタリアンやビーガン故にかつおだしや卵入り天ぷらが食べられない訪日外国人は、せいぜい2%位と考えられます。もちろん、そんなニッチな訪日外国人を囲い込むビジネスはあり得ますが、わざわざ新聞社が写真やグラフを掲載して大きな記事で報道して「かつおだしや天ぷらの卵がインバウンドの障壁になる」と言うのは大げさな誤解です。
ここで、算出の根拠となった、ビーガンと各国のベジタリアンの違いおよびその割合についてまとめましょう。
まずビーガンとは動物性食品を一切食べない運動です。しかし、ビーガンは全世界で数が少ないのです。ビーガン運動が誕生したイギリス本国においてさえ、国民の1%も居ません(2019年データ、ジェトロの農水省補助事業「ベジタリアン・ヴィーガン市場に関する調査(英国、フランス、ドイツ)」より。)
次にインド式ベジタリアンを見てみましょう。
インドのベジタリアンの7~8割がラクトベジタリアン(牛乳・乳製品を食べるベジタリアン)です。これはインド政府が牛乳・乳製品を植物性食品と定義していることも関係しているそうです。これらの人は確かにかつおだしや卵が食べられません。また、インドのベジタリアンの1%がジャイナ教により、0.5%ほどがヴィーガンにより、かつおだしや卵が食べられません。しかし、インド人観光客は先ほど述べた通り非常に少ないので、そこをあまり気にかけても商売として成り立ちません。
次に台湾を検討しましょう。
台湾のベジタリアンは欧米のベジタリアンと全く概念が異なるのでいったん、今までの固定概念を捨ててください。台湾では動物食を食べないことを素食(スーシー)と呼びます。これが日本人にはベジタリアンと大雑把に誤解されている訳ですが、実際は仏教や斎教、一貫道などの宗教に基づく上、欧米のベジタリアンとは食べて良い食品と悪い食品の線引きが違います。
ヴィーガンに一番似る「全素」(動物性食品とネギ、タマネギ、ニンニク、ニラ、ラッキョウを食べてはいけない食事のこと。)は台湾全人口のうちたった1.2%しか居ません。また、「蛋素」(卵を食べていいが魚と肉はだめ。)が全人口の4.2%です(台湾食品消費調査統計年鑑2017より)。この人たちは確かにかつおだしは食べられません。
同じ計算で他の国の人を足し上げても、ベジタリアンやビーガン故にかつおだしや卵入り天ぷらが食べられない訪日外国人は、せいぜい2%位と考えられます。もちろん、そんなニッチな訪日外国人を囲い込むビジネスはあり得ますが、わざわざ新聞社が写真やグラフを掲載して大きな記事で報道して「かつおだしや天ぷらの卵がインバウンドの障壁になる」と言うのは大げさな誤解です。
ここで、算出の根拠となった、ビーガンと各国のベジタリアンの違いおよびその割合についてまとめましょう。
まずビーガンとは動物性食品を一切食べない運動です。しかし、ビーガンは全世界で数が少ないのです。ビーガン運動が誕生したイギリス本国においてさえ、国民の1%も居ません(2019年データ、ジェトロの農水省補助事業「ベジタリアン・ヴィーガン市場に関する調査(英国、フランス、ドイツ)」より。)
次にインド式ベジタリアンを見てみましょう。
インドのベジタリアンの7~8割がラクトベジタリアン(牛乳・乳製品を食べるベジタリアン)です。これはインド政府が牛乳・乳製品を植物性食品と定義していることも関係しているそうです。これらの人は確かにかつおだしや卵が食べられません。また、インドのベジタリアンの1%がジャイナ教により、0.5%ほどがヴィーガンにより、かつおだしや卵が食べられません。しかし、インド人観光客は先ほど述べた通り非常に少ないので、そこをあまり気にかけても商売として成り立ちません。
次に台湾を検討しましょう。
台湾のベジタリアンは欧米のベジタリアンと全く概念が異なるのでいったん、今までの固定概念を捨ててください。台湾では動物食を食べないことを素食(スーシー)と呼びます。これが日本人にはベジタリアンと大雑把に誤解されている訳ですが、実際は仏教や斎教、一貫道などの宗教に基づく上、欧米のベジタリアンとは食べて良い食品と悪い食品の線引きが違います。
ヴィーガンに一番似る「全素」(動物性食品とネギ、タマネギ、ニンニク、ニラ、ラッキョウを食べてはいけない食事のこと。)は台湾全人口のうちたった1.2%しか居ません。また、「蛋素」(卵を食べていいが魚と肉はだめ。)が全人口の4.2%です(台湾食品消費調査統計年鑑2017より)。この人たちは確かにかつおだしは食べられません。
でも足して5.4%にしかなりません。
じゃあ、東京新聞の「台湾人の12.3%がベジタリアン」とは?
実は、「時々素食にする人」が7.4%もいるからです。農業ごよみの1日と15日だけ素食にしたり、朝だけ素食にしたりする人です。「肉邊素」(何らかの事情で動物性食品が入っていても気にしない)も1%います(出典は同上。足して東京新聞と同じにならないのは、東京新聞とは統計の出典が違うためです。)
つまりですね、台湾人のベジタリアンの大多数は、食べて良い日や時間帯なら、安心して和食を食べられます。しかも台湾人のほとんどはベジタリアンでさえないから、台湾人観光客に「かつおだしや卵を止めました」と言ってもニッチですね。
最後にカナダをみましょう。ネットで日本語検索すると「カナダにはビーガンがたくさん居る」と主張する頁がありますが、それらはおしなべてドメインがcomだったり、マクロビオティックサイトで信用出来ません。カナダ政府公式データは調べても見つかりませんし、カナダのビーガン協会でさえも3~4%と見積もっているそうです。つまり、カナダ人ベジタリアンの多くは、ビーガンでは有りません。
カナダ人ベジタリアンの多くは、卵を食べて良いオボベジタリアンや、牛乳乳製品を食べて良いラクトベジタリアンと考えられます。その理由は、完全にビーガンになると貧血などで体調を悪くする人があるため、長続きしないことが多いからです。ではオボやラクトのパーセンテージはどうでしょうか。大学のデータなどもひいて調べましたが、残念ながら統計が見つかりませんでした。(ベジタリアン関連協会やマクロビ団体のデータは、仲間が多いと主張するために多めにカウントしている可能性が高いためこのブログでは採用しません。)いずれにせよ、卵が食べられないと主張するカナダ人はカナダ人の中の数パーセント程度と見積もられますし、カナダ人観光客は少ないので、日本の和食店がそこを気にかけてもニッチですね。
さて、以上のように訪日外国人のほとんどは、卵もかつおだしも食べられるわけです。
ただ、どちらかというとかつおだしが食べられないケースの方がわずかに上回るので、それを気にするのだったら、味の素といの一番で調味すれば大丈夫です。
お後がよろしいようで。
じゃあ、東京新聞の「台湾人の12.3%がベジタリアン」とは?
実は、「時々素食にする人」が7.4%もいるからです。農業ごよみの1日と15日だけ素食にしたり、朝だけ素食にしたりする人です。「肉邊素」(何らかの事情で動物性食品が入っていても気にしない)も1%います(出典は同上。足して東京新聞と同じにならないのは、東京新聞とは統計の出典が違うためです。)
つまりですね、台湾人のベジタリアンの大多数は、食べて良い日や時間帯なら、安心して和食を食べられます。しかも台湾人のほとんどはベジタリアンでさえないから、台湾人観光客に「かつおだしや卵を止めました」と言ってもニッチですね。
最後にカナダをみましょう。ネットで日本語検索すると「カナダにはビーガンがたくさん居る」と主張する頁がありますが、それらはおしなべてドメインがcomだったり、マクロビオティックサイトで信用出来ません。カナダ政府公式データは調べても見つかりませんし、カナダのビーガン協会でさえも3~4%と見積もっているそうです。つまり、カナダ人ベジタリアンの多くは、ビーガンでは有りません。
カナダ人ベジタリアンの多くは、卵を食べて良いオボベジタリアンや、牛乳乳製品を食べて良いラクトベジタリアンと考えられます。その理由は、完全にビーガンになると貧血などで体調を悪くする人があるため、長続きしないことが多いからです。ではオボやラクトのパーセンテージはどうでしょうか。大学のデータなどもひいて調べましたが、残念ながら統計が見つかりませんでした。(ベジタリアン関連協会やマクロビ団体のデータは、仲間が多いと主張するために多めにカウントしている可能性が高いためこのブログでは採用しません。)いずれにせよ、卵が食べられないと主張するカナダ人はカナダ人の中の数パーセント程度と見積もられますし、カナダ人観光客は少ないので、日本の和食店がそこを気にかけてもニッチですね。
さて、以上のように訪日外国人のほとんどは、卵もかつおだしも食べられるわけです。
ただ、どちらかというとかつおだしが食べられないケースの方がわずかに上回るので、それを気にするのだったら、味の素といの一番で調味すれば大丈夫です。
お後がよろしいようで。