タミアのおもしろ日記

食文化・食育のお役立ちの話題、トンデモ食育、都市伝説、フードファディズムなどを分析して解説します!(^.^)

乳酸菌豆知識3:動物性と思ってたら植物性、植物性と思ってたら動物性でした。

2016年08月28日 | Weblog
お食事中の方は食事を終えてから読んでください。今回は、動物性乳酸菌と信じられていた乳酸菌が実は植物由来であり、逆に、一部サイトで「漬け物由来の植物性乳酸菌」とされている菌が実は動物性・・・しかも人間などのウ〇コ由来だった、というお話です。
要するに、世に言う「植物性乳酸菌だから身体に良い。」という式のお話がいかにメタメタなのかをご紹介する内容です。

まず、最初にご紹介するのは、ヨーグルトの乳酸菌は国際規格では全て植物由来だという事実です。言い換えると、世界の常識としてはヨーグルトは植物由来なのです。日本ではヨーグルトとは乳などを乳酸菌または酵母で発酵させたものの総称ですが、FAO/WHOによるヨーグルトの国際規格(Standard No.A-11a,step7,1977)によるとLactobacillus delbrueckii subsp. bulgaricus Streptococcus thermophilus の作用により、乳および乳製品を乳酸発酵して得た製品と定められています。ちなみに原料乳などについても詳しい定義がありますが、ここでは省略します(出典「醸造・発酵食品の事典」p549、2002年、朝倉書店)。

つまり、上記の2種類の菌でなければヨーグルトでないというのが国際規格なのですが、この2種類の菌、日本では動物性と呼ばれているのですが、実は植物由来なのです。

2007年にMichaylova,M.先生他が発表した論文「Isolation and characterization of Lactobacillus delbrueckii subsp. bulgaricus and Streptococcus thermophilus from plants in Bulgaria. 」によると、ブルガリアでは伝統的に、温めたミルクの中に特定の植物の小枝を入れてヨーグルトのスターター(ヨーグルトの素。)を作っていたのだそうです。そこで先生らが、ブルガリアの各地で様々な植物を採取し、表面についている乳酸菌を調べたところ、様々な植物から上記2種類の乳酸菌が見つかったのです。特に発見される確率が高かったのがセイヨウサンシュユという植物でしたが、他にも、スピノサスモモ、スノードロップ、キンセンカなど多様な植物からこれらの菌が見つかりました。つまり、現在世界中で商業的に使用されているこれらの菌は、実は植物起源と考えられるのです。

さて、2つ目は、漬け物由来の植物性乳酸菌と信じられていたのが動物性食品などにも広く存在する菌だった、という話をしましょう。

農研機構という研究所の食品総合研究所(現在は食品研究部門という名称に改名されています。)の「研究ニュースNo.35」p8~10 に興味深い研究成果が掲載されています。同研究所の齋藤勝一先生は、Lactobacillus brevis という乳酸菌が、キシランという植物成分(植物細胞壁の成分。)に付着することを発見しました。この菌、日本国内では「ラブレ菌」の俗称で知られています。K社のラブレ菌はある漬け物から取り出されたもので、他にもスンキ、ザワークラウト、キムチなどからも見つかることから、日本では一般には「植物性乳酸菌」と呼ばれています。

ところが、専門書によると、このラブレ菌ことLactobacillus brevis は「広く自然界に分布」し(出典:「「醸造・発酵食品の事典」p38、2002年、朝倉書店)、しかも少し古くなったかまぼこの表面がネバネバすること(業界用語でネトと呼びます。)がありますが、このネトの原因菌の一つでもあります(出典:「食品微生物学」技報堂 1972 p57)。さらに、アサマ化成株式会社の「アサマNEWSパートナー 2013-7No.155」記事によると、包装食品が膨張する場合に乳酸菌が原因であることも多く、Lactobacillus brevis などが主原因なのだそうです。つまりラブレ菌はかなり色々な所に居て、動物性食品からも自然に見つかるのです。こういう菌を植物性と呼ぶのはどうかと思われます。

話を齋藤先生のキシラン研究に戻すと、ラブレ菌は静電作用で付着するので、キシラン以外にも、胃腸管粘膜成分のムチンなど様々な物質に凝集するとのこと。つまり、動物(人間を含む)の体表やウ〇チ(昭和30年代までは肥やしとして野菜の上に直接かけていましたから。)などを介して、ラブレ菌は植物と動物の間を行ったり来たりのピンポン状態を起こしていた可能性があるのです。

次に「可能性がある」レベルではなくて、人間のウ〇チ由来であることがはっきり専門書に記載されているものの、一部のサイトで「植物性乳酸菌」とされている例を挙げましょう。
Streptococcus faecalis (旧名称。現在の名称はEnterococcus faecalis で、日本では通称フェカリス菌と呼ばれている。) は「食品微生物学」(先出。)p173によると、米麹、味噌麹に多く含まれる乳酸菌であり、同書p187とp202によると漬け物にも多く含まれています。ところがこの乳酸菌、同著p41~42によると、「本来は人間由来のものが多く」と記載されており、どういうことかというと、フェカリス菌は元々、人間の腸管で繁殖する常在菌の一種であり、それがウ〇チとして排出され、肥やしなどの様々なルートで植物や漬け物や味噌などに入っていったのです。

昭和20年代まではトイレを出て手を洗う習慣のない地域も多かったので、こうして様々なルートで、人間の腸管菌が漬け物や味噌に入って言ったと考えるべきでしょう。一部のメーカーでは残念なことですが、こうしたことを知らずでか、「当社で使用しているフェカリス菌は、漬け物から分離された菌で人間の腸にも生きたまま届く強い菌です。」というような意味の宣伝をしていますが、もともと人間の腸の中に居た菌が漬け物に混じったというのが実態ですから、話の順序はまるで逆なのです。まあ、由来はどうであれ、一般論としては、おなかに良い乳酸菌はいい乳酸菌なのでしょう。

・・・さて、今まで見てきたように、乳酸菌はそれぞれ別の種(しゅ)であり、種や株によって性質も全く異なるものですし、植物性とか動物性とかいう分類も曖昧であることが分かりました。植物性が良くて動物性が悪いという話がいかにいい加減か、ご理解いただけたかと思います。

最後に、岡田早苗先生の論文「植物性乳酸菌世界とその秘める可能性」(2002)から引用したいと思います。「「植物性乳酸菌」という語は「植物」と「乳酸菌」からなっており、両方とも人々には「健康的な」というイメージがある。従って、新規な食品開発に植物性乳酸菌が活用される機会が増えると考えられる。」
14年前に書かれた、この一見何気ない文章に込められた深い思いを、じっくりとかみしめるこの頃です。


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和食と砂糖と「爆笑!クールジャパン」。

2016年08月22日 | Weblog
日独ハーフのサンドラ・へフェリンさん原作の、コミックエッセイ「爆笑!クールジャパン」を読みました。日本文化が海外で変容していく様を笑いのオブラートにくるみながら描いていて、面白く興味深い本で、お勧めです。

タミアは和食に興味があるので、特に次の3つのエピソードには関心を持ちました。
第一に、「多くの外国人は緑茶に砂糖を入れて飲む。サンドラさんは、緑茶に砂糖を入れるのは間違いだし健康に悪いと思うので、日本式の正しい飲み方を知って欲しいと思っている」というエピソードです。また、「イギリスの料理番組で、味噌汁の作り方を紹介していたら、最後に鍋にスプーン一さじの砂糖を入れていた。」「カナダ人に、『日本人って何にでも砂糖を入れるんでしょう?』と言われた。」との話にも強い関心を抱きました。

この本全体が、海外における日本文化の変容について考えさせられる内容でとても面白いのですが、中でも上記の3点については、タミアはこう考えるのです。すなわち、緑茶に砂糖を入れてもいいと思いますし、味噌汁の隠し味に砂糖を入れると美味しくなるのは事実ですし、外国の人から「日本人は何にでも砂糖を入れる」と信じられてしまうのも理由があってのことだから、笑顔で「確かにそうですね~。」と答えてもいいのではないか、と。以下、その理由を記します。

まず、最初のエピソードについてですが、「お茶には何かを加える」というのがここ数百年の多くの国の共通理解です。欧州を例にすると、1609年に平戸を出たオランダ船によって、最初のお茶がアムステルダムに到着し、以降、オランダからイギリス、そしてヨーロッパ各地にお茶が広まり、特にイギリスで愛飲されるようになり、その過程で砂糖とミルクを入れるようになりました。そして、やがてヨーロッパでは緑茶から紅茶に切り替わっていきます。アジアでも蒙古の人達は山羊のミルクを入れて飲んでいました。(以上、論文「お茶と砂糖とお菓子」角山榮先生、「砂糖の文化誌」八坂書房収録を参考にしました。)それ以外にも、国によって、お茶に塩やバターや、あるいはナツメグなどのスパイスを入れる地域もあります。
サンドラさんも指摘している通り、現在海外では、砂糖入りやオレンジジュース入りなどのペットボトル緑茶が普通に売られています。で、ここはサンドラさんが知っているかどうかは不明なのですが、実は、現地に進出した日本メーカー自らが、現地の人達の好みを調査した結果として、砂糖や果汁入りの緑茶を販売したケースもあるのです。

もしも「日本人もお茶の中に砂糖を入れるのでしょう?」と外国の人に聞かれたら、それは否定するべきところですが、海外の人が砂糖入り緑茶を好むことについては、批判は出来ないことと思います。ナポリタン(実は日本人が創作した「なんちゃってイタリア料理」です。)をイタリア人は批判しませんし、味噌ラーメンを中国人は批判しません。

ちなみに、サンドラさんはお茶に砂糖を入れることを「健康に悪いだろ-!」と心配していますが、普通に食事して運動している人ならば、お茶にティースプーン1杯程度砂糖を入れるのならば健康を害することはありませんので、サンドラさんには安心して欲しいと思いました。

それに角山先生の論文に話を戻すと、日本の茶道でも、砂糖たっぷりのお菓子を食べて、口の中に甘みが残っている段階でお茶を飲み、口の中で混ぜ合わせているとの指摘。結局、日本でも口の中で海外と同じことが起こっているのです。

さて、2番目の、味噌汁に砂糖を入れるという話ですが、日本の高級料亭でも隠し味として味噌汁に少量の砂糖を入れると聞いたことがあります。もっともこれは耳学問なので、そのことについては100%の自信をもっては断言できないのですが、その代わり次の話は断言できます。美味しくてリピーター続出のA社のインスタント味噌汁の定番商品の中には、隠し味に砂糖を入れているものもあるんです。原材料表示にしっかり「砂糖」と書いてありましたから間違い有りません。もちろん、とても美味しいです。
というわけで、日本人の間で人気のメーカーでさえ味噌汁に砂糖を入れるのですから、イギリスの番組が間違いとは言いがたいでしょう。そのTV番組の料理監修者が、日本の高級料亭か味噌汁メーカーから「隠し味は砂糖なんですよ!」と教わった可能性も考えられます。

最後に3つめの「日本人は何にでも砂糖を入れる」という指摘、実はこれは事実です。
例えば豆料理に砂糖を入れる国は日本などアジアの一部地域であり、世界から見ると少数派です。ヨーロッパや南北アメリカ大陸、アフリカ、オセアニアなどでは豆は、塩味、クリーム味、唐辛子味、カレー味などしょっぱい系で調理します。一方日本では大豆(黒豆を含む。)やインゲン豆やエンドウ豆などを砂糖で煮豆にしますし、甘納豆も作りますし、小豆からあんこ、ようかん、まんじゅう、最中、鯛焼きなど様々な和菓子を作ります。

かれこれ20年ほど前にこんなテレビ番組があったのを覚えています。日本人レポーターがアメリカで大勢の人にあんパンを紹介したところ、「しょっぱい系しかあり得ないと思っていた豆にまさか砂糖を入れるなんて。」とさんざん驚かれて気持ち悪がられてしまった、という内容です。それぐらい、豆に砂糖を入れるのはショッキングなのです。

砂糖を入れるのは豆料理だけの話ではありません。昭和の頃の伝統的な和食を思い起こしてください。照り焼きや焼き鳥などのたれ、めんつゆ、魚の煮物、野菜の煮物、かまぼこ、すき焼き、酢の物(キュウリの三杯酢やなますや菊花かぶなど)、漬け物(たくあん、福神漬け、奈良漬け、らっきょう付け、壺付け、ガリ、一部の梅漬けなど。)、卵焼き、田作り、きんとん、栗の甘露煮、昆布巻き、田楽みそ、ざらめせんべいにかりんとうにカルメ焼きなどのお菓子・・・と、挙げると驚くほど多様な食品に砂糖が欠かせないのです。砂糖をふんだんに使うのが伝統的な和食の特徴だと言っていいほどです。
こういう状況ですから、海外の人からは「日本人て何にでも砂糖を入れるんだねえ。」と思われてしまっても仕方有りません。

「健康に良い」とお題目のように唱えられている和食ですが、昭和の頃の伝統的な和食は大量の砂糖なしには成立しません。ということは、砂糖は健康に良いのかな?いやいや、それとも和食が身体に良いという話は嘘?・・・さて、皆さんはどっちだと思いますか。


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「ツタンカーメンの豆」伝説は勘違いでした。

2016年08月11日 | Weblog
「1922年に発掘されたツタンカーメン王の墓の埋葬品の中には、エンドウ豆の種があり、それを発掘者のカーター氏がまいたら花が咲き、実った。」という説があります。その「証拠」としてその子孫とされる「ツタンカーメンのエンドウ豆」という種が市販されたり、学校教育などを通じて広まっています。寒冷地などでは、夏休みの自由研究でこれを育てていて、このブログにたどり着いた読者の方もいらっしゃるかもしれませんね。どうか気を落とさないでください。その植物は残念なことに、ツタンカーメンの墓から出土したものではありません。

まず第一の重大な問題は、日本国内で「ツタンカーメンの豆」として広まっているのは、花弁の上が薄ピンクで下が赤紫の2色咲きの花が咲く「エンドウ豆」である一方、英語圏で広まっているのは主に、青い「スイートピー」であることです。

日本で「ツタンカーメンの豆」を検索すると料理サイトの「美味しい料理法」が沢山ヒットしますが、英語で検索(King Tut pea)すると、調理法はほとんど掲載されません。スイートピーは毒が有るので食べられないからです。

そして、次の疑問。そもそも英語圏で広まっている種自体が、本当にツタンカーメンの墓から出土したのでしょうか。答えはNOです。以下、ワシントン州のHeraldNetというニュースサイトの2012年6月19日記事「Marysville pea's tall tale starts with King Tut」に基づく情報です。

世界の植物学者から信頼されているイギリスの王立キューガーデンのスポークスマンは、ツタンカーメンの豆の話はまずあり得ない、と同紙に語りました。なぜならば、ツタンカーメンの墓からは他の穀物と混ざった豆がたった7粒見つかりましたが、全てキューガーデンに保管されたからです。また、カイロのアメリカン大学の教授の証言によると、他の墓から出た古代エジプトの種子について発芽が試みられ、それらは全て発芽に失敗したため、当時の種子はもはや古すぎて発芽不能と考えられるとのことです。

そもそもツタンカーメンの墓に限らず、古代エジプトの墓から出た種子が発芽したという話が事実ならば、植物学上大変な発見なので、記録ノートや写真や論文などが残るはず。ところが、これらを主張する物で科学的に裏付けられた物は一切無い、とキューガーデンの資料も指摘しているそうです。

一方で、19世紀から20世紀初めにかけて西洋で「エジプトブーム」が大流行し、「ミイラの種」と銘打ったお土産がイギリスなどで沢山売られていました。これを真に受けた旅行者が持ち帰って、善意で各地に広めた、というのがどうやら事の真相のようです。

また、ツタンカーメンの豆は、カーター氏を資金援助したカーナーヴォン卿の荘園が発祥、という説もあるそうです。卿の業績を称えて、(発掘された豆にではなく)彼の荘園で栽培されていた豆が「ツタンカーメンの豆」と命名されたとの説です。

以上が、米国内の報道に基づく情報です。
日本に入った種が、ジョークグッズ経由だったのか、荘園経由だったのかは、もはや分かりませんが、いずれにせよ日本には昭和のころに、ある善意の米国人が日本人にプレゼントし、「善意の輪」で広がってしまいました。(2018年4月22日追記。著名な作物学者が、日本に広まっているのがツタンカーメンの墓から出た物では無いことを証明しました。実は善意の米国人が日本のAさんにプレゼントした際、英文の手紙が誤訳されたのが勘違いの発端でした。その仰天エピソードについて、詳しくは、このブログの2016年10月9日記事に掲載しましたので、ぜひそちらもお読みください。)

以上が「ツタンカーメンの豆」の「種」明かしでした。
善意は大事なことですが、時には誤解や都市伝説の温床にもなってしまうことがあります。この豆を育てている方が、もしもこのブログを読んでくださっているならば、「数千年の時を隔てて発芽した神秘」に浸る代わりに、誤解や勘違いをついしがちな私達人間のおもしろさとおろかしさを話の「タネ」にしながら、皆で笑いながら鑑賞してみてはいかがでしょうか。

ところで専門家の方へ。snpに基づいてエンドウまたはスイートピーの種内変異の分岐図を書けば一発と思うのですが。どなたかやってくれませんか?

(8月13日追記:内容の正確さを期すために、文章を微修正しました。2018年4月22日追記:かつてはsnipsと言われてましたが、現在ではsnpと表記するのが普通になったので、現代の表記にしました。)

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乳酸菌豆知識2:植物性乳酸菌は生きて腸に届く、とは限らない。

2016年08月04日 | Weblog
最近ひんぱんに「植物性乳酸菌は生きて腸に届くので、動物性乳酸菌で作られるヨーグルトよりも、植物性乳酸菌で作られる漬け物や味噌などを食べた方がいい。」という噂を聞きます。雑誌等で、そのようなことを示唆する文章もよく見かけられます。ですが、これらは誤解です。

まず、味噌は普通加熱調理して食べますから、その時点で死んでますよね。
それに、乳酸菌を植物性と動物性に分けるアイデアは、東京農大の岡田早苗先生が提唱したものですが、先生の論文「植物性乳酸菌世界とその秘める可能性」(2002、p31)において、乳酸菌を植物性と動物性に分類学的に線引きすることはできないと思う、と指摘しているのです(注:論文発表当時は先生は動物性乳酸菌という名称ではなく「発酵乳乳酸菌」と呼んでいました。)。

つまり、植物性と動物性を明確に分けるラインはないということ。とはいえ、漬け物だけから分離できる種の乳酸菌は確かにいます。では、それらは皆、ヨーグルトなどの乳酸菌よりも「生きて腸に届く」のか?そんなことは有りません。これも岡田先生がネットで公開している「植物性乳酸菌研究から広がる応用」というPDF資料によると、人工腸液で10時間処理後の乳酸菌の生残率(%)を見ると、植物性乳酸菌でも発酵乳乳酸菌(動物性乳酸菌)でも、生残しやすいのもあれば全く生き残れないのも居る、という結果です。

要は、植物性乳酸菌の中には例外的に生残率の非常に高い種も居る一方で、コロッと逝ってしまうのも居るし、逆に動物性で生存しやすいのも居る、というデータなのです。

ではなぜ、これが「植物性乳酸菌は動物性乳酸菌よりも生きて腸に届く。だから漬け物などが良い。」という奇妙な話にすり替わってしまったのでしょうか。それは謎なのですが、可能性として考えられるのは、10年以上前にある食品メーカーが「生きて腸に届く植物性乳酸菌」(を当社では使用しています。)と大々的コマーシャルを打って以降、植物性乳酸菌という概念が一般の人に知られるようになったこと、が関係しているのではないか、と考えられます。
このキャッチフレーズは日本語の文法的には「赤い野菜」というのと同じ構造ですよね。野菜が全て赤い訳ではないが、赤い野菜もある、そういうこと。「生きて帳に届く植物性乳酸菌」という言い回しもこれと同じです。

このコマーシャルに関して、植物性乳酸菌には生きて腸に届くのもあるし、そうでないのもあるが、当社では生きて届く特別な菌を使用しています、という趣旨だと解説する広告記事が、当時ある雑誌に載っていたように記憶しています。

それがどこかで誰かが、このキャッチフレーズを「植物性ならみんな腸に届く」という意味に勘違いして、話がふくれていったのではないかと推測します。
より正確な知識が広まることを願っています。



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