タミアのおもしろ日記

食文化・食育のお役立ちの話題、トンデモ食育、都市伝説、フードファディズムなどを分析して解説します!(^.^)

「夏バテに豚しゃぶサラダ」説の意外な理由。

2018年09月11日 | Weblog
先日のブログでおすすめした、佐々木敏先生と松永和紀先生の対談「栄養情報も流行には要注意、話は単純化され盛ってある」(9月3日 WEDGE Infinity記事。)には、こんな面白い指摘もありました。
よく耳にする「夏バテ防止に豚しゃぶサラダを食べるといい。」という説の真偽を松永先生が佐々木先生に尋ねたら、佐々木先生は「夏バテは、慢性疲労の一種だと考えられますが、慢性疲労に栄養がどのように関わっているのか、実はまだ明らかにされていません。」と指摘し、また、「食欲が減退しがちなので、なんとか食べて欲しい、という思いが、豚肉がよい、という話になったのかもしれません。」と推測されました。

・・・実は、タミアは、「夏バテに豚しゃぶサラダ」伝説が生じた理由を知っています。あれは昭和50年代後半から60年代のこと。当時のデパートの食堂メニューや学食の掲示板にはしばしば話のネタになる「食の雑学」が書いてあり、夏には毎年恒例で、次のような文章が掲載されたものです。

「夏バテするとついつい、そうめんやお茶漬けなど、さっぱり・あっさりした食事ばっかり食べたくなりますよね。でもご用心。そういう夏向けの食事は炭水化物ばっかりに偏りがちです。このためかつては特に夏にビタミンB1不足で脚気になったり、タンパク質や野菜不足で健康をますます損ねてしまう人が続出しました。でも現代の私たちも、つい気を抜いて炭水化物ばかり食べていたら、栄養不足になりかねません。
夏バテ気味な時こそ、これ以上の体調不良を防止するために意識してビタミンB1などのビタミンやタンパク質の豊富な食品を食べたいものです。
手軽に作れるメニューとしては豚肉の野菜炒めなどがおすすめですが、夏バテの時には『どうも油炒めは胃にもたれる』と敬遠する方も多いですよね。そういう時は、豚しゃぶにサラダをつければ夏でも食べやすいのでおすすめですよ。」

そうです、もともと「夏バテには豚肉と野菜の料理」と言われた理由は、夏バテ防止のためではなく、夏バテで食が細って脚気などの重い栄養障害に移行してしまうのを防止するためだったのです。平成後期の現代では「夏こそスタミナメニューを食べよう!」と言ってお肉ごろごろカレーや焼き肉を食べる人も多いのですが、昭和の頃は、夏にはさっぱりした簡便なものを食べる人が多くて、肉や魚や野菜炒めなどの油の多い料理は敬遠され、そのためビタミン・タンパク質の不足が懸念されました。なかでも脚気は昭和の日本人に恐れられたので、脚気防止情報が様々な場で提供されたのです。しかし、平成になると、夏にそうめんやお茶漬けばかりたべるような人はめっきり減り、「豚肉と野菜の料理がおすすめ」という部分だけが記憶に残って一人歩きした結果、本来の意図が忘れられて、「豚しゃぶで夏バテが防止できる」と誤解されるに至ったのです。

今日私たちが聞く様々な健康情報・食育情報の中には、元々の情報と異なって伝わっている事例がしばしばあります。食育に携わる方々には特にご留意ください。
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