タミアのおもしろ日記

食文化・食育のお役立ちの話題、トンデモ食育、都市伝説、フードファディズムなどを分析して解説します!(^.^)

マクガバン・レポートは和食をほめてない。

2015年09月12日 | Weblog
食品関係の仕事をしていると、
「1977年にアメリカ上院議員のマクガバン氏が発表した『マクガバン・レポート』には、和食または日本食が身体に良いと書いてあるんだよ。」
という話を聞いたり、書物で目にしたりします。

しかし「火薬と鋼」というブログで詳しく解説されている通り、マクガバン・レポートには和食または日本食が身体に良いというような話は一切書かれていません。

その後、大阪府立大学客員研究員の戸川律子氏は、英文原文の第1版と第2版の両方を精査し、和食または日本食を賛美する記述が全くないことを確認し、論文発表しました。

論文のタイトルは「マクガバン・レポートと日本における食の「近代化」の内発的契機」といいます。
無料でネット上でも読めるのでご関心のある方は検索してみてください。

ところが、よく耳にするうわさにこんなものがあります。
「第1版には和食が身体に良いと書いてあったのだが米国内の食品業界の猛反対にあって、削除されてしまった。そして第1版は葬り去られてしまったので、業界に改悪された第2版しか読むことは出来ない。」と。

しかし、戸川氏は第1版を入手できました。
実は米国には日本よりも厳密な公文書保管制度があり、一度発表された政府の書類はすべて保管され、全米の図書館を通じてアクセス出来るのです。
「第1版はこの世から失われた」説は都市伝説です。

ところで、「マクガバンレポートには元禄時代の和食が最も身体に良いと書かれてあり、それこそが日本政府の推奨している「日本型食生活」である」との噂を耳にすることもあります。

「日本型食生活」とは、1980年の農政審議会答申で提案された概念であり、その後、農水省が広報に長年力を入れている食事スタイルです。
そこで、農水省の知人に確認したところこのようなお返事でした。

「農水省の勧めている日本型食生活とは、ご飯を中心にいろいろなおかずを食べることであり、おかずに洋風のものや中華風のものを食べたり、牛乳やフルーツや洋野菜などを食べてもいいので、伝統的な食事ではないことにご留意ください。

また、時々パン類や麺類を食べることも日本型食生活の特徴です。
農水省のホームページで「食事バランスガイド」を見てください。主食にパンを食べても良いことや、牛乳などの乳製品も大事な食品であることが
図解されていますから。」

なるほど、食事バランスガイドを見たら、確かに、パンや牛乳の絵が掲載されていました。
マクガバンレポートの噂はやっぱりデマだったのですね。

噂を鵜呑みにするのは怖いことだと思います。
以上の話が、少しでも多くの家庭科や食育担当の先生方に伝わることを願っています。

(なお、マクガバンレポートの正式な翻訳名は「米国の食事目標」ですが、家庭科や食育の担当者の間では、マクガバン・レポートとかマクガバン報告と通称で呼ばれているため、このブログでも通称に沿って表記しました。)
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