タミアのおもしろ日記

食文化・食育のお役立ちの話題、トンデモ食育、都市伝説、フードファディズムなどを分析して解説します!(^.^)

二十四節気は太陽暦。伝統的季節感は太陽暦。

2019年03月04日 | Weblog
今年は2月4日が立春でした。今年の立春はたまたま暑かったけど、いつもの年は「今日は立春だというけど寒いじゃないか。旧暦から太陽暦にしたから季節感が分からなくなったんだ。旧暦の方がいいんじゃ?」と言う人がいます。でも、それは大変な勘違いなんですよ。立春や春分や夏至などの「二十四節気」は、大昔からずっと太陽暦です。

あんまりにも暦関連のトンデモ説が増えたためか、ここ数年は一部のブロガーさんが正確な情報を発信してくれてますが、初心者向けには次の2つの国立天文台のページをおすすめします。
二十四節気の簡単な解説はこちら!
https://eco.mtk.nao.ac.jp/koyomi/faq/24sekki.html
図解も交えて太陽暦である理由を解説した頁!
https://eco.mtk.nao.ac.jp/koyomi/wiki/B5A8C0E12FC6F3BDBDBBCDC0E1B5A4A4C8A4CFA1A9.html
ね、国立天文台の上記の2つの頁に書いてあるように、二十四節気は太陽の動きを24等分しているのです。だから、二十四節気は太陽暦です。

日本では古来より明治の初めまで公文書や個人の記録などでは「太陰太陽暦」を使い、季節感を正確に味わう時や農作業では太陽暦の二十四節気を使っていました。
太陰暦だと1年が354日なので、同じ日付でも長期的には夏になったり冬になったりします(イスラム圏ではこの方法が主流ですね)。
農業が盛んだった日本では長い年月の間で同じ日付で夏になったり冬になったりするのは混乱するので、太陰暦は採用しなかったのです。

じゃあどうしたのかというと、まず、日付は月の形で決めました。新月なら朔日(ついたち)、満月なら15日、という具合です。でもこのままだと、太陽の周りを地球が一週する日数より約11日不足するので、約3年に一回の閏(うるう)月を入れて、太陽の運行とのずれを補正したのです。これが太陰太陽暦ですが、この方式だと日付と季節がおおまかには対応するけど、完全には対応しません。

商売の記帳や町民の手紙、幕府の文書などは太陰太陽暦でいいけど、農家さんなど季節をきちんと知りたい職業の方々にとっては太陰太陽暦は困る。ちゃんと季節が分かるようにしたい。そのためには、一年で昼と夜の長さが同じ春分と秋分などをはっきり知りたい。だから、記録用の太陰太陽暦とは別個に、太陽暦の二十四節気も併用したのです。

さらに詳しくは、国立天文台の頁「質問3-5)「旧暦」は現在の暦より季節に合っているの?」がとてもわかりやすいのでこちらをご覧ください。
特に次の説明文は実感しやすいと思うので、国立天文台のサイトから引用します→「現在の暦であれば、月日と季節が一致していますので、「この場所ではだいたい4月の上旬に桜が咲く」というような言い方ができます。また、例年と比較して、「今年は桜の咲くのがずいぶん遅い」などといえるのは、現在の暦の月日が季節に合っているためです。「旧暦」では、同じ月日でも年によって季節が違いますので、月日は桜の咲く時期など、季節の目安にはなりません。」https://www.nao.ac.jp/faq/a0305.html

「あれれ?確かに桜の話については、天文台のいう通りだけど、じゃあ立春は「春」の字がつくのになんで寒いの?」という人も多いと思います。これは、二十四節気は中国大陸で作られたからです。日本に導入された「立春」の語句を、先人達は春の先取りの感覚で用いました。「まだまだ寒いけど太陽の高度も上がって来た。注意深く観察すれば春の予感があるなあ。」というのが「立春」の伝統的感覚だから、寒くてOK。

「でも、7月7日の七夕祭りは旧暦で祝うと今の8月頃に相当するから晴れるが、太陽暦の7月7日は梅雨の季節だ。だから旧暦の方が季節感が正しいんじゃ?」というのは、「あるある」勘違いです。旧暦の日付の方が季節感が毎年ずれていたんだけど、「旧暦7月7日」だけに焦点を当てると、この日付は、梅雨明け以降のどこかの日にとりあえずなんとなくスポッとうまい具合に収まっちゃうの!!この事実を知らない人が、「旧暦の方がより季節を正確に反映した」と勘違いしたのです。

なんで食のブログで暦のことを話すの?それはね・・・あれは数年前のことでした。
「二十四節気は旧暦だから太陰暦だ。江戸時代までの農家さんは月の運行に従って種まきや田植えや稲刈りをしてたんだ!」という誤解が意識高い系の方々に広まって、「バイオダイナミック農法」(ドイツ式有機農業のうちの一つ。月の運行と農作業を合わせるのが特徴。シュタイナー式農業と呼ぶ人もいます。)が流行しかけたんです。あるマスコミでも、「江戸時代は太陰暦で農業した。」と信じているバイオダイナミック農家さんを紹介していました。それよりも前のゼロ年代から、表参道のおしゃれグッズ店に、月の運行に合わせて植物を育てようとかおすすめする本があったのを思い出すなあ。夢のあるメルヘンだと言っているうちは趣味の範囲だけど、江戸時代の伝統農法だという説は誤解ですので、それは止めてくださいね。

和風文化が見直されて、日本の伝統は素晴らしい、といいながらこんなことになってしまうのはとっても残念です。伝統文化の正確な知識を大切にしたいと思ったので、今回はこういうブログを書きました。日本の伝統では、太陽暦に基づく二十四節気で季節感を大事にしていたことを、どうか忘れないでくださいね。

ちなみに、国立天文台の暦Wikiには次のように書いてあります。
「旧暦は既に廃止され、天保暦の手順どおりに推算・公表する機関はありません。」
https://eco.mtk.nao.ac.jp/koyomi/wiki/C2C0B1A2C2C0CDDBCEF1.html
例えば市販のカレンダーに「今日は旧暦の何月何日です」と書いてあることもありますが、民間団体や個人が善意で計算した日付で、公的に保証する機関はありません。現時点では旧暦を計算できますが、2033年に計算が不可能になります。これが有名な「旧暦2033年問題」です。詳しくはこちらをどうぞ。https://eco.mtk.nao.ac.jp/koyomi/topics/html/topics2014.html

太陽暦の良さを実感しながら、二十四節気を味わう今日このごろです。次は3月6日の啓蟄です。これからますます春らしくなりますね!どんな生き物が見つかるか、地面や草花を観察したいなーと、楽しみにしてます。都会の中でも、よく探すと、小さなかわいい生き物が見つかりますよ。そんな時はほっこりしたきもちになります。
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