心理学の本(仮題)

【職場に】心理学書編集研究会(略称:心編研)による臨床心理学・精神医学関連書籍のブックレヴュー【内緒♪】

心理学界のJKT王,ジョン・ピネル~素敵な素敵なカバーの世界・番外編~

2006-06-05 13:13:53 | 基礎心理
 今日はJKTです。JKTつっても,PPFMがイイとか,D&Gがシブいとか,そういうことではありません。JKTすなわちジャケットすなわちカバーすなわち装丁ですな,こりゃ。ああじゃあまた「素敵な素敵なカバーの世界」でもやんの? 答えはYes & No。今回は特に,米国のバイオ・サイコロジスト,ジョン・ピネル博士をFeatureしながらいく所存なんであります。後半ややマジメ,かーもねっ。



Basics of BiopsychologyBasics of Biopsychology
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 すごいね,このJKT。いろんな意味で大変なことになっています。手書き風のピンク色のタイトルと全体の緑の組み合わせは,まあアメリカンといえばアメリカンですが,なぜか,樹状突起か毛細血管か,よくわからないものがツタ状に全体を覆っています。これだけですでにちょっとキモイですが,まだまだこれから,そのJKTに載せるモデルがなぜかドレッドヘア(樹状突起のメタファーか?)&唇ピ(唇ピアス)の東洋系の女性で,当然頭部は透けて(?)ます。しかしあくまで書名は「Basics of Biopsychology」。生物心理学の基礎……。こんな『BURST』にも匹敵するようなデザインでありながら,基礎。これぞ,まさにパンクだ!



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 まあ,上記だけなら,ただの出版社の担当編集のお遊びが過ぎただけ,とも善意に解釈もできましょうが(ってもOK出してるんだから同じですが),こんなのも出してます。僕,これ初めて見たときには,まったく違うものを想像してしまいました。何を想像したかは皆さまの想像にお任せしますが,とにかく違うものを想像しました。内容をあえて問わず,違うものを想像した,ということだけ強調させてください。読んだことないですけど,きっとカラー図解で,カラー使いが綺麗なんだろなと思いたいですが,この人の色のセンスは少々心配にはなりますがね。



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John P. J. Pinel

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 こちらはおなじみの書ですが,JKTとしては,この最新版が一番ハジけてます。またしても写真のモデルが右斜め45度から,遠くを見つめる女性ですが,あはあは,怖ぇー。ここまでくると,政治的・宗教的・思想的な信念に基づいてやってるとしか思えません。ピネルさん,きっとアンダーグラウンドな文化にも造詣が深いに違いない。それを基礎心理学の概論書でやっちゃうところが,なんともアヴァンギャルド。JKT王は,ピネル,キミに決めた! と私が思う所以なのです……。まさに「ソウテイ(装丁・想定)外!」(うわー)。


 と,いつもならここで終わるのですが,今日は実はここからがホンチャンなんすわ。



ピネル バイオサイコロジー―脳 心と行動の神経科学ピネル バイオサイコロジー―脳 心と行動の神経科学
ジョン ピネル John P.J. Pinel 佐藤 敬

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 既に各専門誌等で,書評にも採り上げられていますが,今さらですが,一読を強く,強くオススメする書籍として,本書を挙げたいと思っています。

 神経科学と名のつく本は,概論書から啓蒙書から一般書から,たくさん出ておりますし,最新知見を知りたくば,論文を読むほうが,正確かもしれません(必ずしもそうとはいえないかもしれませんが)。

 それでも,まずまず新しい知見を得るのに有用であるとも思うのですが,何よりこの本は,「確固とした視点」があるという点で,他の本とは一線を画すと思わざるを得ないのです。その「確固とした視点」とはすなわち「心理学者としての視点」に他ならないわけですが,もはや最先端の研究において,その研究者たちの,心理学者としてのアイデンティティというのを非常に保ちにくい時代であります。もちろん,個々の研究において,それを敢えて心理学と呼ばない,ということは可能であり,呼ぶことに意味があるのか,といえば,意味はないのかもしれません。それでもなお,「心理学者として」見ることの意義,それを魅力と言い換えてもいいですが,その魅力をこの本は,存分に伝えてくれるわけです。書いてあることを暗記するのももちろん大事ですが,それ以上に,「どう考えるか?」ということを問い,その一端を示してくれるわけです。

 これは何も本書で著者が訴える,科学的思考云々,という話だけではありません。これを「科学的」のみとすると,やや矮小化してしまう気が個人的にはするのです。もしかしたら,もう終わってしまったかもしれない,心理学というひとつの見方から見ること,考えることの大切さを教えてくれるのです。臨床系の方がたからすれば,ガチガチの科学のように思えるかもしれませんが,それはもはや,ある種ロマンティックな考えかたなのかもしれません。それでもなお……。それもすべてこの著者が「心理学者」として,この本を書いているからだと思わざるを得ません。

 などなど,もちろん「教科書」的にも,バッチリな本なんですが,上記に書いたような「くだらないこと」を考えたくなる,そういう素晴らしい本であると思います。精神分析であれ,認知であれ,行動であれ,ヒューマニスティックであれ,大切なのは,「考え」を鵜呑みにするのではなく,「考え方そのもの」をアクティブに「理解する」ことなんだなと思うわけです(うまい言い方が見つからない……)。

 パラダイム信奉するより,パラダイム創造を,なんて,まあ言うだけなら誰でもできるわけですけどね。


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