今月10月、一度も記事更新ができないまま31日の末日を迎えてしまいました。
会議と、授業と、宿題に追われて、相変わらずの自転車操業の日々です。
先週末10月27日~28日は、日本精神保健福祉士協会の会議に出ていました。
臨時理事会と、都道府県支部長会議と、公益社団法人移行の臨時総会、三連ちゃん。
理事会の議論は多岐にわたり、一件の記事ではとても収まりませんが、一つだけ。
「新たな入院制度に関する本協会の見解」を決めたので、以下に貼り付けておきます。
ようやく、精神保健福祉法の保護者制度が廃止になることが確定しました。
来年の通常国会(1~6月)に精神保健福祉法改正案が上程される見通しです。
精神病者監護法(1900年)以来、日本でご家族に過重な負担を強いてきた保護者制度。
数多の問題が指摘されながら、実に1世紀以上にわたり放置され来た制度が変わります。
同時に、同意入院~医療保護入院の非自発的入院制度が大きく変わることになります。
「新たな入院制度」がどのような形で示されるのか、注視していく必要があります。
保護者制度を廃止した後に、保護者の役割を精神保健福祉士に求める声もありました。
病院ないし地域のPSWが、入院の要否にかかわる判断をし意見を述べるというものです。
しかし、今回の協会見解表明で、PSWはこれを明確に拒否しました。
かつて「Y問題」を経験してきた専門職能団体としては、当然の選択と言えるでしょう。
早期の見解表明を優先した以下の見解は、内容的に荒削りなことは否めません。
それでも、今後の精神医療法制の組み立てには、大事な骨格を示していると思います。
法改正の案文そのものは、厚生労働省で今後さらに検討されていくのでしょうが。
どのような具体的な法制度の青写真が描けるのか、議論は重ねていく必要があります。
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新たな入院制度に関する本協会の見解
2012年10月29日
社団法人日本精神保健福祉士協会 会長 柏木 一惠
障害者権利条約の批准に向けて国内法が整備される中で、障がい者制度改革推進会議での議論も踏まえ、厚労省内に設置された検討会では精神保健福祉法の改正による保護者制度の廃止と、その際の強制入院のあり様について基本的な考え方が示された。
これは、精神病者監護法施行以来110年にわたる日本の精神保健福祉体制の大きな転換と言われている。
これに関しては社会防衛を優先し、隔離収容施策を民間に依存しながら貫いてきた国策への反省の上に立つものと受け止め、真に精神障害者の社会的復権を成し遂げるという活動方針を掲げている本協会も肯定的に評価したい。
今後も法改正に向けて詳細の検討が継続されることから、ここで本協会としての見解を改めて掲げておきたい。
見解の中では、現状に照らして実現可能な制度設計を提案するのではなく、精神保健福祉士として「あるべき方向性」を示す提言も含まれている。
これについては今後その実現に向けて我々精神保健福祉士が何をなすべきか具体的な提案が必要となってくるだろう。
構成員各位には各々の現場で協議を展開し、積極的なご意見をお寄せいただきたい。
1.保護者制度の廃止について
保護者制度は精神病者監護法の流れを汲み、家族(三親等以内の親族)に、患者の意思に反する「監禁と保護」の責任の一端を負わせる一方、患者の治療や社会復帰への協力を含む権利擁護機能も持たせようとしたものであり、長年月に渡り家族に矛盾した役割を課していた点は早急に改められるべきである。
○本制度の廃止には全面的に賛同する。
○保護者に代わる同意者の機能を精神保健福祉士は担ってはならない。
2.医療保護に変わる新たな「非自発的入院」形態の創設について
本協会が掲げる精神障害者の自己決定の原則に照らせば、本人の同意なく患者を強制入院させる仕組みについては反対の立場であることは言うまでもない。
しかし厳密な精神医学的診断の結果、入院という形態でなければ治療困難で、患者本人の同意がどうしても得られない病状にある場合には、非自発的入院以外の選択肢がないであろうことは十分に想定される。
そこで、本人の同意なく患者を強制入院させる新たな仕組みを創設する場合には、障害者権利条約、国際人権B規約、精神疾患を有する者の保護及びメンタルヘルスの改善のための諸原則を遵守し、患者の権利擁護を第一義とする仕組みを整備しなければならない。
なお非自発的入院には、社会状況や生活環境の不備を理由とする保護的な要素は含まないことを前提とする。
「医療と保護」における保護の拡大解釈が社会的入院を助長してきたことを忘れてはならない。
保護は医療ではなく福祉その他の手立てによってまかなわれるべきである。
○非自発的入院を必要とする者は、「保護」ではなく強制的にでも医療提供が必要と医学的に診断される者に限定することを求める。
○精神保健福祉士は、非自発的入院の医学的診断場面の要否判断には加わらないことを確認する。
○強制入院の判断には複数の医師による診察を求めるものとし、その要否を診断する指定医に対しては研修制度の強化を求める。
○入院の是非については行政もしくは司法による審査機能を強化する仕組みを求める。
3.新たな仕組みでの強制入院患者の権利擁護について
閉鎖的な環境に強制的に入院させられた患者に対する医療機関による不当入院等の権利侵害を防ぐため、特に入院決定及び入院継続に際しては権利擁護の観点からの新たな仕組みが導入される必要があると考える。
<医療機関の責任・義務>
○非自発的入院の決定と同時に、退院支援・生活支援の観点からその医療機関の精神保健福祉士が必ず関与するシステムとすること
○出来うる限り早期の退院を目指し、最善の治療努力をすること
○当事者を含む第三者委員を構成員に含む院内権利擁護委員会設置を義務化すること
<精神医療審査会の機能強化による監視体制の厳格化>
○入院から短期間の内に審査会を開催し、入院の是非を判断する。3ヵ月以上の入院の長期化に対しては報告書の提出や必要に応じて意見聴取などを義務付けること
○医療機関において退院請求・処遇改善請求システムが正常に機能しているかどうかを評価すること
○審査会の構成メンバーに精神保健福祉士を必置とすること
<代弁者制度の創設>
○新たな強制入院の決定と同時に、患者の権利擁護の担い手の一部として院外から患者が指定する代弁者を選定する仕組みの創設を求める。
○患者の判断能力等により代弁者の選定が困難な場合を想定し、当該患者が不利益を受けないよう代弁者制度と同等の権利擁護制度の仕組みを合わせて創設することを求める。
なお、ここに記した精神保健福祉士は、所定の研修を修了した者であることを要件とする必要があると考える。
以上