和州独案内あるいは野菜大全

第一回奈良観光ソムリエであり、野菜のソムリエ(笑)でもある者の備忘録のようなもの。文章力をつける為の練習帳に

玉虫

2010年08月09日 | 和州独案内
 子供の頃は普通に見かけた玉虫ですが、すっかり見なくなってしまいました。環境が変化して個体数が減ったのかもしれませんが、自分がそういう環境から離れてしまったのが主な要因なだったのかもしれません。
 というのも、ここ最近はハウスをビニルで蓋をして太陽熱処理をしているので、余り畑には居らず、市場が品薄の時には必ずうちもものが無いという法則が発動中です。こういう高値の時に狙って出荷する嗅覚の優れた人に自分は成れそうにもありません。
 そんな開店休業中の農に代わりに伐採した木材を相手に何やら色々する仕事を手伝っているのですが、既に二回も玉虫に遭遇しています。まあいるとこにはいる訳です。

何とも美しい翅を持つ玉虫も飛び方は不恰好で出鱈目な感じがして、あちらからぶつかってくると言った風に飛んできます。実際にはぶつからずに急ブレーキをかけたように目の前でボトリと落ちてくれるので捕まえ易いことこの上ない間抜けな虫です。ケヤキやニレを好むのは知りませんでしたが、近くにそう見かけるものでもないし、陀羅尼助の原料になるキハダが栽培されているのは見かけるのですがニレ科の木も雑木の中にポツポツと生えているのかもしれません。

 さて、玉虫と言えば法隆寺の「玉虫厨子」です。天平の「流記資材帳」には宮殿像二具の一つとして金堂内に安置されており、これには4542匹分、9083枚もの玉虫の翅が使われたといわれています。最近復元された平成の玉虫厨子と現代の匠の技法を取り入れた厨子の二基では2万匹以上の翅が使われたそうです。流石に2万匹ともなると一定の環境下で個体数に影響を及ぼしかねない数ですし、そもそも国内では集められずに東南アジアに求めて解決したそうです。
 そんな玉虫の装飾が1300年以上経た現在でもかろうじて輝きを残していると誰が想像したでしょうか。紫外線劣化をしない構造色ではあってもキチン質の有機物である以上は分解されるのが必至のはずで、それが今でも光を当てれば鈍く輝くのは奇跡に近いものです。

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