和州独案内あるいは野菜大全

第一回奈良観光ソムリエであり、野菜のソムリエ(笑)でもある者の備忘録のようなもの。文章力をつける為の練習帳に

(ウルトラ)スーパースイート

2009年06月29日 | 野菜大全
 まだ終わりと言う訳ではないのですが、とりあえず今年はゴールドラッシュとみわくのコーンというサカタの同じシリーズ品種に偏ってしまいました。低温伸長性のあるゴールドラッシュを最初に持ってこれたのは良かったのですが、やはりセルで育苗したほうが確かな事は間違いありません。剥き身で350gを超えるので十分な大きさと言えるのでしょう。比べてみわくの方は草勢がおとなしく、特に雄穂雌穂のコンパクトさが目立ちました。絹糸の抽出もおとなし目でゴールドを見ているときちんと受粉するのかついつい不安になってしまいがちですが問題は無さそうです。
 ゴールドは初期生育にばらつきが出て、分けつの大小や着果位置や二番果の状態もかなりばらついてしまいました。無除けつの無摘果にして二番果も獲れればと思いましたが先端の受粉が出来ず、収穫間際からのアブラムシの被害もあって早々にあきらめて自家消費としました。アブラーの被害軽減にトッピングだけはしておいたほうがいいと思いますが、栽培規模が大きくなれば余計な労力を割くことになるので無理でしょう。どのみち後半のパンデミックにはなす術が無く、化学合成農薬が嫌なら除虫菊乳剤でも適散したほうが良いのでしょう。しかし羽根付きは普通のやつより薬剤抵抗性が有るのか接触毒に強いような、いや羽根付きになると吸汁しなくなるのか浸透性も効果が無いような気がするがそれこそ気のせいか。アブラー被害が激しくなると、足元で動き回るアリを踏み潰したくなる衝動を抑えられませんが、いくらやってもきりが無いので実際はやりません。

 次はサニーショコラですが、この作からは普通栽培に徹していきます。これまで品種の特性を上手く出す事ができませんでしたので今年はきちんと管理をしたいと思います。というか大産地では天水だけで収穫まで持っていくのでしょうか?生育後半に絶対水不足になるに違いなく、そうなればせっかくの粒がシュリンクしてしまいかねませんが、そこがプロとなんちゃってとの違いですか?
 生でかじるにはサニショコが一番美味しい気がします。と言っても味来を栽培した事がないので言い切るのは早いかも知れません。ウルトラスーパースイートの名を冠した革命児ですが今のところ味来は栽培する気が端からありませんので比較は決して出来ません。生で食べるって云うのはチートと言うか、一種のパフォーマンスいやパフォーマンスそのものなのでしょう。生で食べられるほど美味しいとなれば消費者へのアピールは相当なものになります。でもやっぱり加熱調理したほうが飽きないものです、消化も良くなるでしょうし。
 スーパースイートは種として美味しさが保障されているので、きちんと栽培すれば誰でもおいしいトウモロコシが作れます(それはそれで難しいか)。寧ろ大変なのは2,3日と云われる収穫適期をいかに逃さないかということかもしれません。
スーパースイートからウルトラと来て次はマックスかアルティメットかは分かりませんが行くとこまで行っちゃった感があります。さてその先は何処へ行くのやら。甘さばかりが求められる今日日の風潮にはいささか食傷気味ですが、確実に言える事はそういった種は発芽率が極端に悪く、植物体も病気に弱いいびつな物が多いということです。

 

アマガエル?

2009年06月25日 | 蟲のこと
 

 ユーモラスな姿とのんびり間の抜けた動きが可愛らしいアマガエル。厳冬期を除いてハウス内に必ずいる常連で、葉っぱにちょこんと丸まっている佇まいは少し哲学的でもあります。
 そんなアマガエルですが時折雰囲気の違う個体に出くわす事がありました。アマガエルをさらに不恰好にしたような何とも奇妙な姿で、突然変異かはたまた病気なのかと訝りつつも何年も放って置いたのですが、やはり気になって調べてみると何とアマガエルだと思っていたのが実はモリアオガエルだったのです。
 イメージというのは恐ろしいものでこんなハウス中にまさかモリアオガエルが居るはずが無いと思い込んでたのですが、肌の色合いや不恰好な手足とやけに大きい吸盤、決め手の赤い目はアマガエルでもシュレーゲルでもなくモリアオガエルそのものでした。パッと見がセサミストリートのカエルにそっくりな感じですか、思い返すと春先には居なくなっていたのは繁殖のために水辺に帰っていたのですね、その為に画像はありません。
 確かに畑一枚を隔ててちょっとした雑木林があるし、護岸をコンクリで固めていない用水の溜め池もありますから居てもおかしくは無かったのですが、やはりまさかこんなハウスに居るはずが無いと言う思い込みが邪魔して気付くのに何年もかかってしまいました。
 それにしてもモリアオガエルは天然記念物だった気がするのですが繁殖地によるのでしょうか?一体地元の人達のどれ位がモリアオガエルのことを知っているのでしょうね、恐らく誰も知らないのではないかと思います。ハウスだろうが何だろうが居心地が良ければやつ等は何処でもやって来るという良い例かもしれません。

  
       いつかのコモリグモが子守をしている様子、子蜘蛛がわらわら群れている

スイートコーン

2009年06月06日 | 野菜大全

 スイートコーンは南米が原産と言われ、小麦、米と並んで世界三大穀物に数えられますが日本においては穀物としてではなく、野菜の一種として未熟果を食べるのが主流です。かつては夜店の焼きトウモロコシやフルーツミックスの付け合せのようなイメージが強いような気がしますが、今はスイート種から更にスーパースイート種へと進化を続け、まるで果物の様に扱われるに至っています。生産者の、栽培者の特権かもしれませんが畑で食べる生のトウモロコシの味は将に果物そのものの美味しさです。特にスーパースイート種のいくつかは生食が断然美味しいと思わせる程の濃厚な味をしているものです。


 スイートコーンはイネ科のC4植物で強日射の条件下でも効率良く光合成を行なえる優れた性質を持ち、吸肥力も強いので畑に溜まった余分な肥料分を吸収してくれるクリーニングクロップとしての役割を果たしながら美味しい果実を生産する一石二鳥の有り難い野菜です。加えてイネ科作物は連作障害を軽減すると言われ、輪作体系に組み込むと良いとされていますし、その残渣の葉稈は土に漉き込めば格好の有機物の補給になります。
 そんなスイートコーンは数ある野菜の中でも有数の美しさを持っていると思います。光沢のある葉は大きく広がり、太くたくましい茎稈は品種によっては二メートル近くに成長してやがてその頂点に雄穂を出穂させます。根元ではわき芽とタコ足のような気根がその大きな図体を支えるためにしっかりと地面にくさびを打ち込みます。


 一番高いところに出る雄穂は傘のように折りたたまれた棹を開き、風の吹くのに任せて花粉をこれでもかと放出しますがその下部に成る雌穂の絹糸抽出は3日から5日のずれが有り自家受粉をなるべくしないように出来ています(結局自家受粉するんですが)。雌穂の絹糸はその一本一本が子実の一粒ずつに繋がっており、受粉が上手くいかなかった時は歯抜けの未充実な果実になってしまいます。


 そして雌穂の繊細さは絹糸の名の通り金色の絹の糸そのものです。とは言えそれも受粉を果たすまでの束の間の美しさで、受粉が完了すると次第に絹糸は萎びて茶色味を帯びてしまいます。はかない美しさはやがて子実へと移り、プリプリとはち切れんばかりに充実した黄金の実は噛み締めると甘く濃厚な汁が溢れます。