和州独案内あるいは野菜大全

第一回奈良観光ソムリエであり、野菜のソムリエ(笑)でもある者の備忘録のようなもの。文章力をつける為の練習帳に

防風ネット張り

2010年06月08日 | ハウス造り
 ハウスの立地によって風の吹き方はかなり異なるので一概にどうとは言えませんが、うちのハウスは南西の風が殆どになり、冬場の季節風も北風ではなく南西から吹くのが特徴的です。ただし、低気圧の通過に伴う風は他所と同じく東から吹き、その後南から南西に移ります。低気圧が発達した台風も基本同じ風の吹き方をしますので、やはりうちのハウスは南からの風に注意する必要があるのは以前から述べる通りです。

 風上に位置する南側のハウスは風下のいわば楯のような役割をしており、風を一番もろに受けるため非常にビニルの劣化が激しいものです。基本、うちでは農ポリを使っているため農ビのようにマイカ線でアーチ間を絞らずにスプリングで止めるので、風で天井部が膨らむような緩い張り方をしているとビニルの劣化は激しく、一年で天井部に穴が開いてしまいます。これは、ポリは破れが広がりにくいのですが、擦れにはとても弱い性質を持っているためです。ですからマイカ線をアーチに渡すと返ってビニルの劣化を早めるので、農ポリはサイドのスプリングのみで止めるそもそもの仕様になっています。

 今年のように冬場に農ポリを張ると、どうしてもビニルが伸びずに、暖かくなってくると次第に緩んできますので再度引っ張り直す必要がありました。緩い所で2~3センチの緩みが出てる上に、スプリングの止め方も滑らせるようなやり方はせず、丁寧に止めていかないと簡単に穴が開いてしまいます。
 肩のスプリング部分は一番力が掛かるので、この部分の劣化が最も顕著になります。スプリング止めの部分が次第にミシン目のように破れ始め、それが風上側であるために破れると一気に吹き込んだ風が反対側を突き破ってしまうのです。これはある意味仕方の無い話ですが、風上の楯になってくれていたハウスの、更に風上に防風ネットを設置する事で最前線のハウスの風圧をいくらかでも軽減出来たらというのがネット設置の目的です。
 勿論、風を弱めるのが目的で防ぐものではありませんから、網目が4ミリ目合いが一般的で建設現場に設置されるような細かい目合いのものは風圧を受けすぎて逆に危険になります。

 設置するネットの高さHに対して風下で20H、意外ですが風上も5Hの減風圧効果があるといわれます。そんなネットを張る手順は
 一、支柱を立てて、硬質樹脂線のエスター線を吊り線として支柱に通す。
  
 エスター線の張り方が意外に難しくテンションをどれ位かけるのか、線の仕舞いをどう結ぶか悩みましたが適当です。
 
 二、ネットをクリップで留めて張っていき、エスター線を数本張ってネットを更に止める部を作る。

 これもネットのテンションをどれ位にするべきか結構悩みます。ぴっちり張り詰めたのは見た目も良いですが、止め部にかなり余計な力が掛かってしまう様にも思えます。たかが防風ネット張りですが、されどと言う所でしょうか。このネットが破れたり飛んだりする時がいつか来るのかと思うと残念でなりませんが、その時はハウス本体が潰れている事でしょう。

ハウスの作り方というかビニルの張り方 

2010年02月27日 | ハウス造り
  


 ここで言うハウスとはアーチパイプハウスの事で、曲げた亜鉛メッキパイプを地面に挿し込んで棟部で繋ぎ合わせたものです。25ミリ径が標準で、22ミリが限界、それ以下は細すぎて意味が無い。25ミリ以上になると値段が跳ね上がるので25ミリが一般的です。
 パイプハウスが柔構造か剛構造かと問われれば間違いなく柔構造の代表でしょう。試しにハウスのサイドを手で少し揺らしてみれば、ハウス全体が波打つ事からも解るように、アーチパイプと直管パイプを鋼線や接合金物で接続しているだけの極めて単純な構造をしています。少し考えれば、こんな構造で内部の大空間を維持している事に根本的に無理があるという事は、構造の専門家でなくとも気付くはずですが、慣れというのか費用対効果からなのか、これが当たり前と言う感覚が勝っているのが現状でしょう。そこでアーチパイプに合わせて筋交いを入れるのですが、これは最低限行なうべき補強であり、これだけでは到底強風には耐えられません。
 
 それは置いて、ビニルの張り方です。自分ではすっかりビニル張りはマスターしたと思っていましたがおごっていた様で、今回は少々肝を冷やしました。基本的に一人で張るのでいつも緊張するものですが、どうしたら上手く張れるか考えたものの詰めが甘かったようです。
 天井のアーチ部分のみの張り替えは、ビニルが軽くて安く付くので良いのですが、風の吹き込みとあおりをモロに受ける危険さを孕んでいる事をもう少し考えるべきでした。本来は日中に張らずに、朝凪夕凪に向けて張り始めるのが普通なのですが、冬のビニル張りということもあって、ビニルを成るべく温めて伸ばす必要があったので昼間に張り始めたため、やはり風が出て途中で挫けそうになりました。

 棟部にビニルを伸ばし広げていくため、ずり落ち防止の直管を刺しておく。
  
 
 このソリ(修羅)が上手く使えるかで頭がいっぱいだったと言い訳しておきます。
  

 ハウスの真ん中辺りで棟上にビニルを上げ、このソリに端を巻きつけて引っ張ると力もいらずスムースにビニルが展開してくれ、これは想像以上に上手くいった。
  

 この時点でハウスバンドをアーチに渡しておけば良かったのと、長辺の端四点を先に仮止めするべきでした。ビニルを展開していくと途中から風にあおられヤバイ感じでしたが、もう後戻りできないのでなんとか密閉して室温を上げてビニルを膨張させながら、仮止めを繰り返して弛みを無くしていく、何とも地道な方法しかありませんでした。
  

 妻部のビニルは先に別張りするとして、サイドと天部が一枚物の場合はこのやり方でもいいのかもしれませんが、天部だけの張り方は別の方法、サイドの肩から展開する方法で張るべきだと痛感しました。そのための金具をまた作らないといけないか。

 




台風十八号狂詩曲

2009年10月09日 | ハウス造り
 本来ここはいわゆるブログとは違うものとして書いているつもりなのですが、丁度台風が通過した事と、書きかけの話が少しかぶる所があったので急遽纏めてみました。
 
 三日ほど前から新しい台風の進路がどうもおかしいなと嫌な感じはありました。いや、それ以前から三週間ほどは雨らしい雨も無く、こういう時は自然はきちんと帳尻を合わせてくるから大雨か台風が来るんじゃないかという予感めいたものはありました。日本に近づいて上陸がほぼ確定的になった頃から、さてどうしたものかと思案しましたが、左程の切迫感も無かったのも事実です。というのも、台風情報を米軍系サイトでチェックするのが既に習慣になっており、それによると紀伊半島の南端から東端を、かすめる様に通過するルートの予報になっていたので、当地が台風の左側になり、しかも時期的に更に東へ流れるのではと高を括っていた訳です。
 がしかし、テレビの天気予報で直撃コースをたどることが解り、何時ぞやの七号台風の再来かという事態になった前日は、朝からハウスの補強にひたすら時間を費やしました。白浜に上陸する可能性が高くなったというテレビの台風情報に影響されてか、ラジオではみかん農家が、およそ千坪のハウスのビニルを自主的に切り落としたと云う話題を取り上げていましたが、この頃にビニルの除去を決断した方も多かったのではないでしょうか?そうなるとハウス保険もおりないはずなので、余程キレイにビニルを外さないと二度張りは大変なんだろうと思いますし、ビニルを切ってしまえばもちろん二度張りは出来ません。 うちはと言うと、数少ないビニルが残ってる虎の子のハウスの為に、ビニルを外す訳にも行かず、ハウスの補強するしか選択肢が無かった訳です。
 
 ビニルハウスは一般的には、いわゆるアーチパイプハウスの事で、22から25mm径の曲げたパイプを地中に挿し込んだだけの簡便なつくりです。鉄骨ハウスに比べてコストは格段低いですが、当然耐風力も低く風速30m、場合によってはそれ以下でも倒壊すると言われています。各部材は緩くつながっている柔構造の典型なので、筋交いをはじめ補強は欠かせません。
 そこで先ず、一番弱いといわれるアーチ部分につっかえ棒をしておきました。次に、下の写真に有るようにハウスサイドの連結を強め、引き抜き力に対抗し、横風の押し込みに対抗するための重石を付けました。

  

 そして台風の一番の怖いところである、真上からの押し込みとその後の引き抜き力に対応する為、棟持ち柱を基礎付きで設置しました。
 最後に今回は間に合いませんでしたが、防風ネットを張る事も重要だと思います。但し、中途半端に張るとネットの切れ目で、縮風という現象が起きる事があるので気を付けないといけません。それもあって今回は防風ネットの設置を見送りました。
 これ以上はやる事が無く、これでハウスが倒壊するのなら仕方が無いかなと思える処までにはなったでしょう。ただ、ビニルが破れて飛んでしまう事は、これらの補強とは関係なく起きる事なので、既にくたくたのビニルが破れないように祈るしかありません。

 そうして眠れない一夜を過ごしたのですが、結果として台風は紀伊半島の東を、上陸もせず掠める様に中部方面に逸れた訳です。そのおかげかブルーシートが破れた程度で、大きな被害も無く台風をやり過ごす事が出来ました。逸れたとは言え相当の雨風が吹き荒れたのは事実で、覚悟はしていたのですがビニルが飛ぶ事もありませんでした。
 それとあくまでも結果論ですが、今回も米軍情報がほぼ正しかったのは複雑です。規模は小さいが勢力の強い台風だった事もあり、場所によってかなり影響にばらつきが出たみたいですが、紀伊半島の西端と東端の予報では対応に違いが出ても当然だと思われます。最後は自己責任と結果論になってしまうのですが、情報は多すぎても少なすぎても駄目なのでしょう。
 

  

 台風が過ぎてしまえば、また蜘蛛は糸を吐き、何事も無かったかのように蜘蛛の巣を造っていました。感情のある人間は流石にそうはいかず、被害に逢われた方は呆然自失の状態かも知れません。心よりお見舞い申し上げ、この話を終えたいと思います。