platea/プラテア

『ゲキxシネ五右衛門ロック』『The Musical AIDA』など、ミュージカルの話題作に出演の青山航士さんについて。

『TOMMY』/音がみせるもの

2007-04-05 | TOMMY
 今回、観る事を諦めていた『TOMMY』、想いもよらない巡りあわせで私は観る事が出来ましたが、公演会場から遠かったり、お子さんが小さかったりで観にいくのが難しい、という方もたくさんおられると思います。「青山航士さんの歌った曲ってどんな曲?」とお想いの方に、アマゾンの試聴ページの紹介です。
 この曲、改めてCDで聴いてもカッコイイですが、今回のバンドの方がまた素晴らしい演奏をされていました。「音」が情景を描く、というか、イントロのギターが響くと、ロンドンの隠微な街にたちこめるマリファナの匂い、霧の湿気に重く冷たく沈んだ空気まで伝わってくるようで、青山さんの歌い出しまでの何秒かのうちに、その世界にすっかり取り込まれます。
 BW版制作に際し、ピート・タウンゼントが、(日生劇場もそうですが)「いい」劇場にロックバンドのドラムセットが入った事がないのを変えたかったと語っていますが、ここのドラムは本当に、「この音でなければ/この音以外にはない」というキマリようでした。もう一度だけでいいから、生でこの曲が聴きたいです。
 今回、演技の中では演奏されなかったROLLYさんの「いとこケヴィン」にも、歌い出しだけで、残虐さに憑かれた一人の青年の歪んだ心が剥き出しになって舞台に差し出されるような感触を覚えました。これまでもヴィジュアル性の高いステージ作りをしておられるのですが、視覚的要素をあとから「足す」のではなく、音の一つ一つが視覚的に捉えられるまでに凝縮して表現している印象を受けます。

 プロデューサーのキット・ランバートは、ロックというジャンルが音楽的に低く見られていることに対し、その意識を変えることに取り組んでいたと聞きますが、確かに今回のこの公演を聴いていると、"Tommy"という曲によって与えられる感情、カタルシスの大きさには、世界の名曲と言われるものが与えるものと何の違いもないと感じます。私はBW版も来日版も見ていませんが、このいのうえひでのり版が「ロック・オペラ」の本質を誠実に提示しているのは間違いないようです。


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