copyright (c)ち ふ
四郎太さんと過ごす時間は短いわ。
いったい、あの人何処に住んでいるのでしょう。
お家も見てみたいわ。
でも、いつも言葉を濁すだけ。
私のこと、そんなには愛してくれてないのかしら。
私は、鴨鳥や白鶴さんたちのように、
片ときも置かず寄りそっていたいのに。
(路の長てよ、吾を帰すな!
それにしても、雪香にオレ自身のことを問われても、
本当のことは口が裂けても
言えるものではない。
仲は深まるばかり。
あの子のいない世の中なんて考えられない。
どうすればいいのだろう)
あの人の足跡を踏みながら、後をついてゆこうとしたけれど、
私の足では追いつかなかった。
まだまだ若いので、露に覆われた道行でも、
苦にはならないのだけれど、
男の人には適わない。
あの人いつも山歩きをしているせいかしら。
飛ぶ鳥になりたい。
今日は、仕方ないから、草結びのお願いで我慢したわ。
草の根さん、ごめんなさいね。
あの人の家、分かったら解いてあげる。
それまで、辛抱してね。
あなたも分かったら、あの人のこと、
夢でいいから教えてちょうだいね。
・・・・・・・・
そうだわ。
もっと確実な方法、思いついた。
今度あの人が来たら、上衣に麻糸を縫い付けておこう。
その後を辿れば、きっとあの人のお家がわかるわ。
そうしたら、夜こっそりあの人のお部屋を訪ねていって、
驚かしてあげよう。
いつもあの人ばかりに来てもらって悪いから。
あの人、どんな顔するかしら。
つづく