フラワーガーデン

ようやく再会したハルナとトオル。
2人の下す決断は?

食卓の幸福

2006年02月04日 03時18分18秒 | 第12章 逡巡編
それでもどうにかこうにかピノが奏効し、その日の夕食はハルナが腕を揮った。

以前オレが作ったヤツとは違い、人間として食べられる物が食卓に並びオレは大いに感嘆した。

「すげ。トンカツ!おっ!!味噌汁、うめ!!サラダ・・・・・・いけるじゃん」

相変わらず、お粗末なボキャブラリーでハルナの手料理を持て囃しながらひとつひとつを箸に取り、眺めながら口に運んだ。
だが、凄く腹が減っていたために、彼女が1時間掛けて作った料理をオレはたったの5分でタライあげてしまった。

「もっと、味わって食べようよ」
ハルナは箸でウィンナーをブスッと指しながらぶすったれた。

「お~い!ブスがもっとブスになるぞ」
オレは箸の裏で彼女の頬を突付くと、その頬っぺたは更に膨れた。

「冗談だって。お礼をやるから、手ェ出してみ」
「お礼って?」
機嫌を直して嬉しそうに差し出すハルナの手を引き寄せるとキスをした。

ハルナは一瞬で真っ赤になって唇を抑え、俯いた。
やばい。
オレまで真っ赤になってきた。
こいつとはあーんなことや、こーんなことまでして、アカンボだって腹にいるのに・・・・・・。
いまさら、キスごときで?!

これで、料理を啄ばむカポーにありがちな「お前を食べたい」なんてベタなエロトークをカマシたら、こいつはきっとぶっ倒れるかもしれないなぁ・・・・・・。


試してみたい気持ちを押さえつつ、オレは食器をシンクまで運び終えると、こいつ用に買い置きしていたパジャマを手渡した。

そして、オレは今や空き部屋となったリョーコの部屋にアウトドア用の寝袋を持ち込み、自分の寝床を構築した。

「今日も泊まってくだろ?オレはこっちの部屋で寝るから」
「え?!寝袋だけなんて風邪引くよ!?」
「大丈夫。適当に上に掛けるから」

オレは床に新聞紙を引くと、寝袋を延べ、上に厚手のコート数枚を掛けてその夜は眠った。
床が固かろうが、布団が無かろうが、抱けない女の隣りで寝ることに比べたら、その方が遥かに天国だった。



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