映画食い倒れ。

~映画は人生のデザートです~

個人的覚え書きのため、たまにネタばれありです。

「もののけ姫」

2008年04月23日 | 映画~ま~
1997年 日本映画

いわずも知れた、長編アニメーション映画の大作です。この映画、1997年ということは、『千と千尋の神隠し』よりも古いんですね。なんだか意外です。

宮崎さんの描くモンスター…といったら語弊がありますな。ええっと、なんといいますか…巨大生物?特に人間の行いが原因で戦うことになったものたち。『もののけ姫』でいえば呪いをもらってしまったタタリガミ(祟り神?)、『風の谷のナウシカ』でいうとオウムとか。ものすごくグロいですよね。心をざわつかせる様な、かなり直接的な気色悪さをあえて出してくる。宮崎監督の姿勢の表れともいえるのかな。でもこれ、テレビアニメだったら苦情とか来ないのかしら。「表現がきつすぎる」とか。この場合は映画だし、宮崎監督=権威だからこないだろうけど。

この映画を観るたびに、ものすごく申し訳なく、身につまされる思いに駆られます。ほかの動物や植物のことは良く知らないけど、世の中の連鎖を乱しまくっているのが、人間。映画の中でアシタカが何度も「森と人間が共生する道はないのか?」と問うているけど、その答えは見出せないまま。モロ(山犬)には「アホか?」と一蹴されるし。でも、現在の地球上の出来事を考えてみても、人間は破壊こそするけれど自然やその他の動植物が生活する助けには全くなっていないものなぁ。今でこそリサイクルじゃ、再生じゃと歌っているけど、壊してしまったから、限界に来たから動き始めただけで。それでもやっぱり生きていくしかないわけだし、「人間が存在すること=地球を破壊していくこと」…とは等式で言い切れないかもしれないけど、どこか認めざるを得ないことのような気がする。

私が『もののけ姫』を魅力的に感じる理由のひとつに、登場人物たちの描き方がある。正義の味方と悪者というとおり一辺倒ではなくて、人間のもつ多様性、一人の人間のさまざまな顔、また立場によってその人への評価や見方が異なるということを見事に描いていることに、本当に感心する。その中でも特に好きなのはエボシ。タタラ場のリーダーで、鉄を製造するためには山も切り崩すし動物たちも皆殺しにする。製品や材料、食材を運ぶ牛飼いの命だって、仕事と天秤にかけ見殺しにもする。反面、偏見をもたれていた皮膚病(ハンセン病だと思う)患者たちの世話をし、仕事も与える。売られた女性たちを保護し、タタラ場で仕事を与える。とにかくタタラ場での彼女の存在は絶対であり、尊敬を集めているように見える。アシタカに助けられ命拾いした牛飼いたちへも、実際は見捨てたわけだが、「私がついていながら、すまなかった」と本人、その妻に謝る。そう言葉に出し詫びることで、彼女への尊敬や信頼は失われず、皆が彼女についてくる。しかしジバシリたちにはうまく使われてしまったり。

アシタカがタタラ場を去る際の牛飼いの長の言葉にも、名前もわからない一人の登場人物だが彼の性格や人となりを表していてとても印象に残っている。この牛飼いの長、声は名古屋章だったのですね。今ウィキペディアで知りました。

それにしても声優陣がものすごく豪華。川に落ちエボシに見捨てられた牛飼い・甲六は西村雅彦。ぴったりです。こういうアニメの声優に選ばれる、って俳優冥利に尽きるでしょうね。

正直、シシ神の昼の姿に少々脱力しましたが(笑)、とても興味深く引き込む力のある作品。娯楽作品ではないので、内容は重いですが見る価値のある一本です。


おすすめ度:☆☆☆☆☆


「ミス・ポター~Miss Potter~」

2008年04月22日 | 映画~ま~
2006年 アメリカ・イギリス映画

一度記事が完成したのに、ネットの接続がどうもよくなかったらしく消えました…むきーーーーっっっ!!!!!

さ、気を取り直して。

ピーター・ラビットの作者、ヴィクトリアス・ポターの伝記映画です。伝記映画というとものすごく堅い印象ですが、いろんな要素が詰まった映画らしい映画です。

結婚適齢期をとうに迎えたヴィクトリアス・ポター(レネー・ゼルヴィガー)は、自らが生み出したウサギのキャラクター「ピーター・ラビット」を出版しようと、出版社に通う日々。洋服を着たウサギの話なんて…とどこも取り合ってくれず、上流階級の女性が仕事をするなど考えられない時代背景もあり、ヴィクトリアスは変わり者扱い。ある日ある出版社でノーマン(ユアン・マクレガー)と出会い、作品を気に入ったかれた出版を了承。「ピーター・ラビット」は瞬く間にベストセラーになる。ノーマンを通し、ヴィクトリアスは彼の姉であるこちらも変わり者のミリー(エミリー・ワトソン)と親友に。ヴィクトリアスとノーマンは恋に落ち結婚を意識し始めるが…。

この映画が日本で公開された2007年9月当時。テレビCMを打っているにもかかわらず、あまり話題に上りませんでしたよね。でもね、仕方がないのですよ。この同じ時期に、『HERO』(木村さんのやつね)、『スキヤキ・ウェスタン・ジャンゴ』。その後『ALWAYS 続・三丁目の夕日』と日本映画が立て続けに持ち上げられていた時期なんです。この邦画が興行的にどうだったかは知りませんが、そのコマーシャルはものすごかった。そんな中での『ミス・ポター』の公開。地味でしょ?目立たなくても仕方がなかったんですよ、きっと。そういう私も『ミス・ポター』は観ずに『めがね』観にいきましたけど…。

だって、そりゃファンはいるだろうけど、日本人にとって「ピーター・ラビット」ってあんまり身近じゃないし、その作者なんかもっと身近なわけないし。俳優陣は豪華だったけど、興味を惹かれなかったんですよね。


というわけで全然期待せずに観た『ミス・ポター』ですが、これがなかなかいい作品だったんですよ!先日書いた『アメリカン・ギャングスター』と同じく実話を基にした映画なのですが、テンポがよくて、かわいらしさ、悲しさ、喜び…といろんな要素がぎゅっと詰まった良作なんです。

なんといってもレネー・ゼルヴィガーがいい!!実はレネー、どちらかというと苦手なタイプなんです。いろんな彼女の映画見てますしうまいと思うんだけど、いわゆる「美人女優」とは言い切れない外見、そしてかなり独特の演技。私の中では「不思議ちゃん枠」です、レネー。シニカルな演技や場面も、彼女を見ているとコミカルに感じたりもするのですが、その独特さが今回は生きてます。お絵かき大好きの変わり者ヴィクトリアスが、レネーのまじめなんだけどコミカルに見えてしまう表情などがぴったり合致。レネーが今まで演じてきた役柄の中で、これが一番いいんじゃないかとすら思います。あくまで個人的な感想ですが。

そして忘れてならないもうひとりの不思議ちゃん、エミリー・ワトソン。彼女もものすごく独特な役柄が多いですよね。『本当のジャクリーヌ・デュ・プレ』とか『パンチ・ドランク・ラブ』とか。そしてこれまた独特の外見。彼女も苦手枠だったんです。だって彼女に気をとられて映画自体にのめりこめないんだもん。それが、この映画ではいいんです。彼女演じるミリーも、この時代に珍しく独立心旺盛で結婚適齢期無視の女性なんですが、この時代に媚びない感じがエミリーの演技によってものすごくキャラ立ちし、ものすごく魅力的な人物として映画に存在しています。ちょっと見る目が変わるんじゃないか、と思うくらい。

ユアンは良いです。演技もうまい。そして映画の中でも魅力的。ただ今回はほか2人の主演女優たちがものすごく良かったので、ユアンについては特にコメントなし。

紙の上で動き出す動物たちのファンシーさも、「ヴィクトリアスには本当にこう見えているんじゃないか」と思えてくるほど。映画情報サイトでは、イギリスの風景も見ものだと書いてありますし、実際美しいのだけど、内容がとにかく良いので風景にまで私は目がいかなかった!きっと湖水地方は美しいんでしょうね(夏限定)。


おすすめ度:☆☆☆☆★

「アメリカン・ギャングスター~American Gangster~」

2008年04月21日 | 映画~あ~
2007年 アメリカ映画

60年代後半のアメリカ、ニューヨーク。長年仕えていたボスの死後、独自の麻薬ルートを開拓し、その力を確固たるものとしていったフランク・ルーカス(デンゼル・ワシントン)。麻薬捜査チームのリーダーに抜擢されたリッチー・ロバーツ(ラッセル・クロウ)は、ニューヨークにはびこる麻薬汚染を捜査から、フランクの存在にたどり着く。

監督は『グラディエーター』のリドリー・スコット。今回もラッセル・クロウを採用。ラッセル、好きなんでしょうね。

2大俳優の競演なのですが、なんとなく地味な印象の映画です。実話を元に作られているので、これは仕方がないのかも。『Ray』でもそうだけど、実話を基にしていると歌っているからには、盛り上げるために山場を作ることもできないだろうしね。

主役であるギャングのフランクさんなんですが、私が見る前に想像していた「ギャング像」と全く異なります。対極です。ギャングというか、仕事のできるビジネスマンです。売り物は麻薬。そこは全うなギャング道なんですが、堅実でよく働く。「自分が、自分が!」と前にしゃしゃりでない。ちょっと違うんです。だから伝説なんでしょうけど。その堅実さは、デンゼル様しっかりと表現されていらっしゃいます。目立とうとするタイプではないけど、ギャングの長のお約束のお召し物、毛皮のコートと帽子のセットも難なく着こなしてしまうあたり、さすがデンゼル様な訳です。

一方ラッセルさんはといいますと、離婚訴訟を戦いながら、自分の弁護士である女もきっちり自分のものに。麻薬捜査にも手を抜きません。ある時はスチュワーデスをも自分のものに。ワイルドな風貌。女大好き。ラッセルさん、そのままですね。でも60年代のちょっと長めのバングス…失礼、前髪。ラッセルさん、似合わないですね。ブルドッグ顔には短髪が一番なんでしょうね。

デンゼル様が見初めた相手は、ミス・プエルトリコ。この方、まぁ美人なんでしょうけど…華がない。残念だわ~。途中、「ギャングの女」っぷりをあげてくるかと思いきや、なんとなく中途半端なままプエルトリコに帰ってしまわれました。実話とはいえ映画なので、もっと癖のある、それでいて美しい女性がよかったなぁと思います。

出演者は俳優2人以外もかなり豪華ですが、その豪華さがなんとなく生かしきれていないような気がします。ジョシュ・ブローリンは存在感はあったけど、胡散臭さが感じられた(あ、演技かも)し。この人の初映画って『グーニーズ』なんですって!見たことないけど、実は今日テレビで放送されてたわ。またも見逃しちゃったけど。ほかにキューバ・グッティングJr、キウェテル・イジョフォー(デンゼル様の弟役)などそれぞれが個性のある俳優さんたちだから、もう少しそれらが映画に出ているとキャラが立ってよかったなぁ、と思います。キウェテルさんって今回初めて名前を知ったのだけど、『ラブ・アクチュアリー』の人だったのね。覚えとこ。

よくできた映画なんだけど、事前に期待しすぎたのか入り込むほど夢中になれる作品ではありませんでした。でももう一度ちゃんと日本語字幕入りで見直してみようかと思います。



おすすめ度:☆☆☆

「Bug(原題)」

2008年04月19日 | 映画~は~
2006年 アメリカ映画

なんだかものすごい映画を見てしまいました。これはちょっと、この感情をうまく説明できないくらい。

『エクソシスト』の監督ウィリアム・フリードキンの作品で、DVDのパッケージには「最近の20年間で最高傑作 Byシカゴ・トリビューン」って書いてあるけど、・・・これが感性の違いというやつでしょうか。アシュレイ・ジャッド、マイケル・シャノン、ハリー・コニックJr主演のホラー(?)です。では話の内容説明にうつりましょうかね。

モーテルを棲家とするアグネス(アシュレイ)は、毎晩元旦那のゴス(ハリー)からの無言電話に悩まされている。ある日、レズビアンバーでバーテンとして働くアグネスに、友達(彼女?)のRCがある男性ピーター・エヴァンス(マイケル)を紹介する。アシュレイの部屋に戻り、RCはピーターを置いて外出。そんな時ゴスがやってきて、彼女を殴りつけ金を取って帰っていく。それを助けたピーターとアグネスとの間に奇妙な愛情が生まれ一緒に生活をはじめる。真夜中にピーターは虫に噛まれたといい、電気をつけ虫を探し始めるが、アグネスには虫の姿が見えない。それでも常に虫の存在を恐れるピーターとの生活を続けるアグネスも次第に強迫観念に駆られていく。

説明してしまえばたいしたことないのですが、見ている側にとっては結構ややこしい話でした。これにピーターやアグネスの持つ過去やトラウマも絡んできて、ますます強迫観念は強くなる一方。


ホラーとは書いたものの、実はホラーかどうかもよくわかりません。虫を排除するために、なんだか80年代のテレビ番組の宇宙コントみたいな空間で(わかりませんよね、こんな説明じゃ。壁も床もすべてをアルミホイルで覆った感じです)、二人が生活していたりするんですが、この二人の生活が突飛過ぎて「何してるの?」とものすごく客観的で冷静に見てしまう。これがもし、実話をベースにしたものだったら、「ああ、こんな風に狂っていってしまったのか」と納得もできるのだけど、もちろん実話でもなんでもなくて「何でこの話を作った?いやなぜ映画化した??」と監督に小一時間話を聞いてみたいです。そしてシカゴ・トリビューン紙の評価。まぁ、その記事を書いた人個人の評価ですから当てにはならないんですけど…。アシュレイ・ジャッドの演技はものすごく迫真に迫るもので、これがなかったら最後まで見れなかったと思います。この映画撮ってる最中、「あたし、何してるんだろ」とか思わなかったのかな?>アシュレイ・ジャッド  というか、よく最後まで観たなぁ・・・とそんな自分を褒めてあげたい。

いや、本当にわからなかったの、内容が。上に内容を説明してはいるけど、ウィキペディア見ながら要訳したもん、実は。わからないから後味が悪いわけでもなんでもない。何も感想が残らない。「何だったの?」という疑問だけ。

マイケル・シャノンの不気味な、そしてちょっと世間ずれした不思議な雰囲気はうまく出ていたと思う。この人、『8マイル』で、エミネムのお母さん(キム・ベイシンガー)の彼氏役だった人らしいわ。いろんな映画出てるみたい。ふーーーん、知らなかったわぁ。

板尾創路…じゃなくて(もういい?)、ハリー・コニックJrは、『P.S.I LOVE YOU』の時よりも板尾度は低めですが、それでもやっぱり似ていると思います。むしろ彼の顔から板尾の声ではなく、ちょっと高めの声が出てくるのが不思議なくらい。

日本ではもちろんですが(!)劇場公開は今のところ予定はなさそうです。仮に公開されたとしても、行かないほうが…。DVD発売も怪しいくらいではないかと思います。


おすすめ度:・・・  無星。

「ドッジボール~Dodgeball: A True Underdog Story~」

2008年04月18日 | 映画~た~
2004年 アメリカ映画

経営難のジムの経営者ピーター(ヴィンス・ヴォーン)は、何とかお金を集めなければ近所にできた最新鋭のジム「コブラ・ジム」より買収される危機に。そこで目をつけたのがドッジボール世界大会の優勝賞金。そのためにピーターと常連客たちはドッジボール修行に励むことに。


ドッジボールって、日本では誰もがやったことのあるスポーツですが、欧米ではもんのすごくマイナー。家の旦那(イギリス人)も一度もやったことがないし、見たこともないそう。イギリスのキッズは確かにみんなサッカーやってそうですけど(実際そうです)。だからこそこの映画で取り上げたんでしょうけどね。

ヴィンス・ヴォーンがお金の催促のできないお人よしには見えませんが、いいんです、コメディーだから。ベン・スティラーの小さいおっさんぶり、笑えます。もうビジュアルで笑いを取ろうとしているところが、日本のコントと一緒。ベンが出ているコメディーって、どことなく日本のコントを思い出すことがあるのですが、これもそうです。

この映画、カメオ出演者がちょっと面白い。アメリカ人やアメリカ映画をよく知る人はその辺で余計に笑えるんでしょうね。私がわかったのは2人のみ。それでも面白かったけど。ロードレーサーのランス・アームストロングとチャック・ハリス(アクション俳優)とかね。あと、『チアーズ』のパロディ場面があったりもします。

この映画の中で、ベン・スティラーは権力者の役(でも馬鹿なんだけど)なのですが、ベンは問題に巻き込まれてあたふたしている役の方が合っているような気がします。というか、アタクシはそういうベンが見たい。次回はどたばたに巻き込まれてくれるかしら・・・。


おすすめ度:☆☆★ (ベンのコメディーにしては低め評価です)

「パンズ・ラビリンス~Laberinto del Fauno(Pan's Labyrinth)~」

2008年04月16日 | 映画~は~
2006年 メキシコ=スペイン=アメリカ映画

おとぎ話です。「おとぎ話」というと、子供だましで面白くない…と印象を持つかも知れませんが、そんなスケールではありません。もう圧倒的です、この映画。

1944年。内戦終結後のスペイン。戦争で父を亡くしたオフェリアと母は、再婚相手であるヴィダル大尉と暮らすべく森の中の駐屯地へ。ヴィダル大尉は独裁を振るう冷酷な男。気に入らないものは次々と殺していく。父親の死、妊娠中の母。自分を疎ましく思う義父。駐屯地での生活。オフェリアにとっては耐えられない現実。そんな彼女の前にある日妖精が現れ、オフェリアは魔法の王国の王女で、王は彼女の帰還を待っていると知らされる。自分が王女であると証明するには3つの試練をクリアしなければならない。オフェリアは現実世界の苦しみから逃れ生き延びるためにも、その試練に立ち向かうことにした。

この映画ものすごいのです。「素晴らしい」と言う言葉では陳腐に聞こえるかもしれませんが、ほかに言葉が見つからない。グロテスクでおどろおどろしくて、残忍で、それでいて美しい。

おとぎ話って、お姫様が出てきてきれいなドレスを着て幸せに暮らす…ような、ものすごく幸せに満ち溢れたディズニーチックなイメージをしませんか?私たちが通常子供のときに聞かされるおとぎ話って、良いとこ取りですよね。でも、子供ながらになんとなく納得いかなかったり、理不尽に思ったり、残酷に感じたりすることってありませんでしたか?白雪姫だって、美しさゆえに毒を盛られて殺されそうになるし、シンデレラだって、かぼちゃの馬車やガラスの靴の魔法は12時に解けてしまう。日本のおとぎ話だってそう。かぐや姫は育ててくれた両親を残して月に帰らなくてはならない。子供のころから私の中でおとぎ話って、幸せに溢れたものではなくて、どうも気持ち悪さが胸に残るものでした。何か重大な秘密を隠されているような。

この映画では、おとぎ話に隠された残忍性、救いようのない不幸、そしていつものメルヘンもすべて包み隠さず表現されています。幼いころには教えてもらえなかった、おとぎ話の本当の姿が、抜群の映像とともに押し寄せてきます。そくぞここまで表現してくれた!と。

スペインの映画というと、『オールアバウトマイマザー』や『トークトゥーハー』くらいしか見たことがないのですが、いつも驚かされるのがその色彩の鮮やかさ。ただきれいなだけではなく、鮮やかな色だからこそ持つ毒味も含まれた、独特の色彩美が特徴なのですが、この映画の中でもそのセンスが垣間見られます。また、登場するキャラクターが恐ろしい!しかもただヴィジュアルとして恐ろしいのみならず、性格の多面性・心の裏表があり心理的な恐怖をあおられ、さらにほんの少しのかわいらしさが加味され、どうにも魅力的。怖いからただ逃れたいのではなく、怖いけど心挽かれる。そんな人間の心理をついたような、棘を持った美しさ。そしてグロい。小さい子が見たらトラウマになるくらい強烈なデザイン。

オフェリアの目の前に現れる「妖精」も、「妖精」と訳せばかわいいけど、正直化け物です。小さい姿のときは馬鹿でかいカマキリみたいだし、人間サイズになるともうこの世のものではないし。この世のものではないけど、二本足で立っていて自分を王女であるというこの化け物の言葉を信じたくなるオフェリアの気持ち。客観的に見ていたら、「なんでこんな化け物についていくーーーっっっ???」とオフェリアの行動に驚きますが、そのくらい彼女の現実世界はひどかったということなのでしょう。とにかくキャラクターたちは気色悪さのなかに人間味を持ち合わせているんです。ただただ化け物だったらここまで気持ち悪くない。ゾンビとか首なしお化けとかそういう怖さとは違う、また『リング』の貞子とか「元・人間」である幽霊とも種類の違うモンスターたち。「こんなのいねーよ」とは言い切れない、「本当はいるかもしれない」と思わず信じたくなる出来です。

この映像美はさすが。各国の映画賞の美術賞を総なめにしているのも納得です。だってこれ以外にどの映画が取れるというの?というくらいずば抜けています。そしてただ映像が素晴らしいだけでなく、映画として本当に面白い。

スペインというラテン文化がある国だからこそ出せる独特の雰囲気が、この映画を恐ろしいながらも妖艶さのある仕上がりにしています。そう、映像に艶やかさがあるのです。ラブシーンがあるとかそういう意味ではなく、映像そのものに。

オフェリア役の女の子の演技、ものすごくいいです。引き込まれます。映画が終わるまで、その手を離してくれません。その世界にどっぷりはまりたい、そんな気分になります。そしておとぎ話だからなのか、登場人物の性格をきちんと端的に表現しているし、無駄がない。だからといって単調ではないし、奥深さにかけることもない。いい塩梅なのです。これが普通のドラマだったら、人間の描き方が少し物足りなく感じると思いますが、この映画ではこれが功を奏しています。


私、ものすごく褒めてますね。残念だった部分を探してみましょうか…んーーー…それを探すのが難しい。あ、でかいカエルがちょっと笑えた。その見た目がちょっと安っぽくて、ほかのキャラたちとある意味一線を画しているような。そのくらいでしょうか。全然残念ポイントではなくて、むしろ面白いんですけどね。

この映画、本当に本当に映画館で見たかったです。テレビで見ちゃったの、ワタクシ。独特の世界のある映画ですし、キャラクターのデザインも強烈なので、苦手な方はとことん苦手だと思います。でも、私はこの映画に惚れました。強力におすすめ。


おすすめ度:☆☆☆☆☆

「MUSE HAARP at the cinemas」

2008年04月15日 | 映画~ま~
2008年 イギリス

今回はちょっと志向の違うフィルムのご紹介。映画館で見たので映画には間違いないのですが、「フィルム・コンサート」です。イギリスのバンド「MUSE(ミューズ)」が2007年6月(フジロックの前ですね)にロンドンのウェンブリースタジアムで行ったコンサートの映像です。

ライブDVDとCD発売のプロモーションの一環として行われた映画館でのフィルム・コンサートは、イギリス全土のVUE系列の映画館で3月11日(たしか…)に1回のみの上映でした。


私が今回お伝えたいのは、フィルム・コンサートの内容ではなくお客さんたちのこと。20時半からの上映で、私は19時40分ころ劇場に到着。チケットは事前に予約していたので、発券してもらうのみ。ちなみに10ポンド。約2,200円くらいでしょうか。通常の映画は、劇場にも依りますが大体7ポンド(約1,500円)。少々高いですが、この日1日のみ、1回だけの上映なので良しです。

私が到着したとき、すでに40~50人ほどが並んでいました。到着後すぐに私の後ろには長い列が。年齢層も幅広く、多いのは10代後半から20代半ばですが、10歳前後の小学生から50代の夫婦連れまで様々。「MUSE Tシャツ」を着ている人たちも結構多い。

映画館では一番大きな部屋での上映で、席は後ろから順番につめていきます。かなりセキュリティーがしっかりしていて、劇場がちょっとピリピリムード。お客さんたちはいたってのんきなのですがね。結局何人くらいのお客さんが入ったのかわかりませんが、空席は数えられるほどほぼ満席。

そしてスクリーン上でカウントダウンが始まり、いよいよ上映開始!

ものすごく盛り上がって、みんな大合唱・・・かと思っていたら、ものすごく静か。流れてくる音楽についてリズムをとっている人すら見当たらない。私の席から見える何人かの若者たちも、実はもっとリズムを取ってノリたいんだけど、周りの様子を気にしてどうにもノリ切れず…といった様子。

あれ?
ここってロックの国ですよね?
グラストンベリーフェスティバルが開催されている国ですよね?
MUSE大好きですよね?
あなたたち、ロックの申し子たちですよね?

…と心の中で疑問を投げかけつつも、実はものすごく周囲を気にするし、恥ずかしがり屋さんなイギリス人たちの姿に爆笑(心の中でね)。日本でGLAYとかラルクアンシエルのフィルム・コンサートのほうがよっぽど盛り上がるんじゃないかと思います(もし、演ったらの話です)。

みんなフツーに映画を見るように(まぁ、そうなんだけど)、ポップコーンとドリンク片手に静かに鑑賞。曲が終わるとパラパラと、こちらも遠慮がちに拍手が起こる程度。『STAR LIGHT(曲目)』のときは何人かは手拍子してました(私を含む)。

「ものすごくうるさいくらいに盛り上がるんじゃないか」との予想を見事に裏切られ、少しがっかりもしたのですが(むしろ笑えたけど)、そんなことが気にならなくなるくらいコンサート映像にのめりこんでしまいました。あーーー、コンサート行きたいなぁ、という気分が滾々と湧き出てきました。

帰宅後旦那にお客さんたちの様子を語ったところ、「映画館だしね。当然じゃない?」と言われました。そうか…そういえばイギリスの映画館で映画を見てても、皆ものすごく静かにしてるわ。(コメディーでは笑います)

フィルム自体は、実はちょっと音が小さめでもう少し大きくしてほしかったなぁ、と。どうもほかの会場でも音は少し小さかった様子。→(他のレビュー参照 英語版)でも映像も音楽も楽しめたし、イギリス人観察も面白かったりし満足でした。


4月始めころにはローリング・ストーンズのフィルムも1日のみ公開されていました。マーティン・スコセッシ監督が撮った彼らのドキュメンタリー・コンサート・フィルムのプロモーションの一環だったと思います。イギリスではこういったフィルム・コンサート形式のものがたまに上映されるようです。日本でもたまにありますが、一般の映画館でというのはなかなかないですよね。映画館じゃないからこそ盛り上がれるのかもしれませんが・・・ええ、そういう私は日本でフィルム・コンサートなるものに行った事があるのですよ。誰のかって?彼らよ!!!このとき、みんな叫ぶわ、踊るわ、ものすごかったので、きっと今回もそうなんだろうと思い込んでいたのよワタクシ。かれこれ16年も前の話です、ええ大昔です。


おすすめ度:☆☆☆☆ (←ミューズファンのみ)どうもこのDVDの発売が日本では中止になっているようですね。サイトには製造中止とありましたが、どうなっているんでしょう?

「The Accidental Husband(原題)~アクシデンタル・ハズバンド(仮)」

2008年04月14日 | 映画~あ~
2008年 イギリス映画(←サイトによってはアメリカって…どっちがホント?)

ユマ・サーマン、コリン・ファース、ジェフリー・ディーン・モーガン主演のコメディー。舞台はニューヨーク。ユマ演じるエマはラジオの人気番組を持つ「愛のエキスパート」。文句のつけようのない婚約者(コリン・ファース)もおり、何もかもが順風満帆。ある日一人の女性の恋愛相談に乗り、「別れた方がいい」と忠告。その結果振られたのが消防士のパトリック(ジェフリー)。見ず知らずの女・エマに婚約破棄に追いやられたパトリックは軽い復讐心からエマと自分が結婚しているよう、ネット上で戸籍を改ざん。婚姻届を提出しに行ったエマは「すでに結婚している」といわれ、その取り消しを求めてパトリックに接触する。

説明が長くなったわ…入り組んだ話ではないのですけど、まぁこんな話なわけです。

実はコリン・ファースを見たくて(ブリジット・ジョーンズ以来なんか好き)劇場に足を運んだのですが、実はそれほど出番が多くなく・・・・・・というか実はコリンがぜんぜん魅力的でない。何の仕事をしているのか忘れたけど、ものすごく成功していて誠実で知的で洗練された都会の男性で、エマの婚約者としてパーフェクトなはずなんだけど・・・なんか物足りないのよねぇ。別れても惜しくないというか(お前が言うか?)。まぁ、お金はあるだろうけど。

それよりもジェフリー・ディーン・モーガンがものすごくいい!洗練されたかっこよさではなくて、なんというかむさ苦しいけど、クマのぬいぐるみみたいに愛嬌があっておもしろい。男性に好かれそうな(変な意味じゃなくて・えへ)、おおらかでやさしそう…あれ、そうだったっけ?もしかして私、自分の中で勝手にジェフリー像を作り上げているかもしれません。この映画見たの、3月半ばだったしなぁ(言い訳)。いや、まあとにかく彼がいいんです。ケーキ食ってるシーンがもう抜群にいいのです。実際こんなのが彼氏(旦那)だったらものすごくウザイけど、いいんです見てる側だから。前に見た『P.S. I LOVE YOU』にもいい役どころで出演していて、どちらも少しタイプが似てます。なんとなく。そういえば今回はオーストリア系(だったかな?ブンデスリーガ《ドイツのサッカーリーグ》に詳しかったからたぶんそっち系)の役で、『P.S.~』ではアイルランド人の役。英語も独特の訛りを話していたような気がするのでジェフリーってイギリス人かしら・・・と勝手に思っていたのですが、シアトル生まれのアメリカ人でした。何系かはウィキペディアではわかりませんでしたけど。

そしてユマ・サーマン。個性のある美人だし、「恋愛専門家」とか似合ってたりするし(胡散臭くて)、女性に人気がある設定だけあってどのカットを見てもちゃんとキマッてるし。でも、なんていうのかね~。「間」とでも言うのかしら?コメディーだから笑いたいじゃない?でもね、なんか安心できないの。「ユマに私たちを笑わせることができるのかしら?」ってコメディー見てるのにハラハラしてしまうのよ。私、笑えなかったらどうしよう、って不安になってしまうの。今までにもコメディーには出ているし(私は見たことないけど…あ、KILL BILLってコメディー?)コメディーなれしていないことはないんだろうけど、なんか信用できない。いや、がんばってたよ、ユマは(何様?)。でも、ユマが主役のはずなのにコメディーの流れや雰囲気を作っていたのはジェフリー。ここがちょっと残念。その点『P.S.I LOVE YOU』のヒラリー・スワンクは見事だった、と比べても仕方がないけどあらためて感心してしまう。

それでも笑えるし、楽しめる作品。他のサイトの映画評は散々でしたしわからんでもない(笑)ですが、軽い気持ちで楽しめるのでいいんじゃないかなと思います。ただ、もっのすごくベタな「ガールズ・ムービー」ですので、そういうのが苦手な方には、特にエンディングはきついと思います。

日本での公開は現在のところまだ決まってなさそう。もしかしたらDVDスルーの可能性もあるかも…。



おすすめ度:☆☆☆  軽~い気持ちでどうぞ。

「マイビッグファットウェディング~My Big Fat Greek Wedding~」

2008年04月13日 | 映画~ま~
2002年 アメリカ映画

アメリカはシカゴに住むギリシャ系移民家族の話。お父さんの夢は、子供たちがギリシャ人と結婚して子供を生み、家族のつながりを大切にし、誇り高きギリシャ系として生きていくこと。娘のトゥーラはなんとなく冴えない生活を続け気づけば結婚適齢期。身なりにもまったく気を使わず、家族経営のギリシャ料理店で働く毎日。そこにお客として現れたイアンに心ときめき、「このままではいけない!」と一念発起して自分磨きを始める。縁あってイアンと交際、結婚することになったトゥーラだが、ギリシャ系ではないイアンとの結婚への道のりは波乱万丈…。

この映画の公開時、日本でもかなりテレビでCM流れてましたよね。でも有名俳優が出ているわけでもなんでもない映画を何でこんなに盛り上げるんだ?と不思議に思ったものです。後にDVDで見てみたけれど、「そんなに大プッシュするような映画?」となんだか腑に落ちなかった覚えが。

今日、たまたまテレビでやっていて、ほかに見るものもなかったので(殴)見てみました。2度目です。

皆さんすでにお気づきのとおり、日本の題名では原題にある「グリーク」の文字が抜けてるんです。グリークというのは「ギリシャの」という意味で、説明したとおりこれはアメリカのギリシャ系の家族のお話。この映画、アメリカでも大々的に広告を打ってヒットをした、というものではないそうで、インディーズ系で日本で言うと単館系とでもいうのでしょうか。何百、何千という映画館で上映していたわけではなく、小規模な映画館で上映していたところ口コミで人気が広がり、大成功を収めたという映画なのです。

文化の違いがキーになっている映画ですが、日本と違いアメリカのような多文化社会でもこんなにドタバタする物か?と以前見たときは思った程度。あまり記憶にも残っていませんでした。でも今回見直してみて、「これって日本と似てるかも」という箇所が意外にたくさん。国際結婚とはいわなくても、日本にも地域によっていろんな風習があるでしょ?私は愛知県出身なのですが、娘が結婚するときは「菓子撒き」の風習があります。最近見ませんし、愛知県の中でも地域によって屋根からお菓子をばら撒く所もあれば、家の近所はお菓子詰め合わせを集まってきた人たちに配っていました。でもこれ、愛知県以外のところにすんでいる人には驚きでしょ?お金もかかるし、第一なんでお菓子を屋根からばら撒くのか?『名古屋嫁入り物語』(植木等、川島なおみね)を見たことがある人ならわかると思いますが、あれです。驚きませんでした?ほかにも引き出物の大きさや重さ(!)にこだわったりとか。

これって、こういう価値観がない人や別の地域の人と結婚するとなると、ものすごく大変でしょ?理解ができないもの。「なんで?」ときかれても「こういうものだから」「風習だから」としか言えない。むしろ国際結婚のほうが楽に話が進むんじゃないか、と思うほど。違っていて当たり前だから。

この映画、日本で公開を決定し広告を打ったのは絶対女性だと思うわ、アタクシ。30歳前後くらいの女性が中心だったんじゃないかしらね。男性社員が、いくらアメリカで大化けしたといってもここまで宣伝打ったりしないとおもうのよ、この映画に。主人公トゥーラの垢抜けていく様子は、『プリティーウーマン』とか最近だと『プラダを着た悪魔』見たいな、女性が変身していくのが見ていてうれしいしね。お姫様願望よ。文句ある? それにこの映画のよさは、女性が等身大だというところ。女性のみならず登場人物が。トゥーラが垢抜けたといっても、ジュリア・ロバーツと肩を並べたわけではないのよ。アン・ハザウェイだって垢抜けない格好をしていても、そもそも顔がきれいなつくりをしてるじゃない?でもトゥーラの変身前は本当にひどい。私が言うな、っちゅう話だけど…こんなにひどかったのに、ちょっと気を使うだけでこんなによくなるのか!、と。希望を持たせてくれるのよ。

相手のイアン役のジョン・コーベットが、等身大で(また)いい感じなのです。決してブラピではないけど、雰囲気のいい人って言ったらいいのかしらね。映画が始まって30分あたりまで、どうもジョン・トラボルタがかぶってしまってつらかったんだけどさ・・・どうも顔というか骨格が似ているらしい…それも後半気にならなくなったし。

トゥーラの親戚の中に、髭面のどこかで見覚えのある、やたら踊りたがる男がいたんだけど、「いや~、まさかね。一応(!!)当時は超アイドルだったし」と思い調べてみたら、インシンクのジョーイ・ファートンでした(名前は今知った)。インシンクって知ってます?カリフラワー…じゃなくて、ジャスティン・ティンバ-レイクがいたグループね。2002年の映画だから、当時彼ら爆発的な人気があったのではと思うのですが、ジョーイはインディーズに出てたんですね。なんかちょっといい奴に思えてきました。「何でこの髭面がアイドルなのよ?」と当時心の中で疑問を抱いていたことは秘密です。


おすすめ度:☆☆★ 

面白いけど、そこまで強力にプッシュはしません。んー、暇つぶしにどうぞ。「ギリシャ人の友達がいる!」「私の知ってるギリシャ人はこんなだ!」という人にはうってつけかも。

「30デイズ・ナイト ~30days of Night~」

2008年04月12日 | 映画~さ~
2007年 アメリカ映画

ジョシュ・ハートネット主演のホラー映画。
アラスカで日照時間がまったくなくなる30日間、ある町は吸血鬼に襲われる・・・というものすごくシンプルな物語。私はよく知らないのですが、原作となっている小説が日本でも有名なようですね。映画を見た後、アラスカの気象状況を調べてみたら、北部のほうは12月から1月にかけての約1ヶ月間、日照時間ゼロでした。そうなのか~。

話はものすごくシンプルなんですが、何なんでしょうこの満たされない気持ち。2時間弱のそれほど長い映画ではなかったのですが、なんだかものすごく長く疲れた。

話の山場がよくわからないんです。結構最初から映画の展開のスピードは飛ばしていて、あっという間に吸血鬼が登場して…(以下省略)。吸血鬼は吸血鬼でそれ以上でもそれ以下でもないのでしょうけど、なんだかよくわからないんです、これが。どうやら人間の生き血のにおいを嗅ぎ分けることができるらしく、人間を襲い、襲われた人間は吸血鬼になっていく。これはわかる。吸血鬼グループ(一人じゃないですよ!大勢います)は30日間の暗闇とともに町の外からやってきます。だから誰も彼らを知らない。そのグループの中にリーダーと思しき男性とその妻?恋人?ちっくな女性が中心になっているのですが、「だからどうした?」といった具合。リーダーがいようがいまいが、映画の中ではまったくその存在意義がないんです。

「俺たちの時代を築くぞ!」と意気込んでいるのですが、その狙いもよくわからない。ただ血肉がほしくて人を殺していく、としてくれたほうが納得もできるのですが(だって吸血鬼だから)、時折何か目的があるような台詞をはくんです。結局それが何なのかわからないまま映画は終わります。そして仲間同士で、やたらと人間らしい愛情の見せ方をしたりもする。

走っている車に追いつきボンネットに飛び乗ったり、ものすごいスピードで移動したり高いジャンプを決めたり。かなりの身体能力の高さも伺えるのですが、場面によりその能力にムラがあって「一体どっちなんだよ!?」と。

この映画全体的に、怖がらせ方が「びっくりさせる・驚かせる」といった視覚・聴覚に訴えるもので、大きな声で奇声を発するとか、人の首を斧ではねるとか。80年代にヒットした『死霊のはらわた』と変わってない。(今偶然『死霊のはらわた』を検索していてわかったのですが、『死霊のはらわた』の監督、この映画でプロデューサーをしていた模様。わはは!)吸血鬼たちも本気で怖がらせようとしているのかさえ疑いたくなる。表情とか人を襲うときの溜めとかが、なんというか「風雲!たけし城で悪役だったストロング金剛」を見ているような。どこかコミカル。わかってもらえますかね、この説明で。無理がありますよね、ええ。

映画を見ている途中までは、『アイアムレジェンド』を、そしてその後は『ドーン・オブ・ザ・デッド』を思い出し。ジョシュ・ハートネットの演技力が無駄に使われていて物悲しいです。弟・ジェイクを演じた彼(名前わかりません)もいい演技してました。

ただね、ヒロイン役のメリッサ・ジョージという女優さんがね。見ていて、「若林志穂」とか「渡る世間は鬼ばかり」に出てる人たちの演技を思い出しました。なんだか同じにおいがする。花王愛の劇場。なんというのだろう…うまく説明できないんだけど…演技が大げさ?あと、ものすごく漂白したのかシリコンなのかわからないけど、ブラックライトを当てたらものすごく浮きそうな歯が印象的です。

日本ですでに公開していると思ったら、どうやらまだ見たいですね。いろいろ検索してみたけど、公開予定も今のところなさそう…。まぁ日本では当たらない予感はぷんぷんしますしね。



おすすめ度:★  ホラー好きでもどうかと思う。



---追記(2009年6月27日)-----------------------------------------------
どうやら、この映画の日本公開が決まったみたいですね。8月22日からだそうです。なぜこのタイミングなのかわかりませんが…ジョシュ・ハートネット、最近ぱっとしないし。うちの旦那は「悪くない」と言っていたので、評価は人それぞれなんでしょうね。私個人としてはおすすめしません。