映画食い倒れ。

~映画は人生のデザートです~

個人的覚え書きのため、たまにネタばれありです。

『おくりびと』

2011年11月26日 | 映画~あ~
2008年 日本映画


実はいま、イギリスではテレビで放送中なのです。
去年の帰国時に日本でDVDをレンタルして、うちの祖母と一緒に見たこの映画。そういえば感想書いてなかったなぁと(いつもどおり)ふと思いましてね。このブログもほったらかしだったし。久々の更新ですが、なんだかいつも以上に反感を買いそうな内容になるような…あくまで個人の感想ですので、あしからず。


おくりびと(納棺師)という職業、この映画を見るまで知りませんでした。でも、どんな職業に対しても偏見とか差別とか、もちろん無くはないんだろうけど、妻(広末さん)の「汚らわしい!」というセリフは強烈だったなぁ、といまだに思い出します。でも、例えば葬儀屋さんとかに対して「汚らわしい」なんて思ったりする?亡くなることって、人生の一大イベントで、その後のお葬式などの一連の儀式ってなくなった本人よりもむしろ、残された家族の為の儀式。それをつつがなく執り行われるようサポートしてくれるのが葬儀屋さんや納棺師さんなわけで、むしろある種の尊敬すら覚えると思うのだけど…それを自分の家族が職業として選ぶこととは違うのかしら。それとも地方によって偏見や見方は異なる??

「お前ら、死んだ人間で食ってんだろ?」というセリフも。
もうね、わかんないんですよ。まだ30代のあてくしには、納棺師や葬儀屋さんって幸い身近なわけではなくて、かなり未知の世界。全く知らないわけです。だからそういう職業に対する「イメージ」というものすらない。だから映画の中で出てくる「納棺師に対するイメージ(偏見)をはっきりと持っている人たちの態度」というものに、賛成も反対もできない。

ある意味ね、この映画は私にとって「衝撃体験」だったのかもしれません。もちろんこれが本当のこの職業の姿ではないのかもしれないし、あくまで映画なのだけど。それでも納棺という儀式、この映画で見るかぎりでは、正直美しいと感じました。亡くなった人への尊敬、そして残された人たちへの尊敬を形にするような仕事なんだな、と。もちろん、そういう「美しい」仕事ばかりではなくて、仕事御始めたばかりのモッくんが遭遇した「キッツい現場」もあるんでしょうけど。

先ほどの暴言(セリフ)を吐いた俳優さん。名前は存じませんが、素晴らしい演技でございました。


でもね、カタギの仕事をしている旦那に「汚らわしい」と吐き捨てて出ていくような嫁、そんなひとでなしな女とは別れろ!モッくん、別れてしまえ!!!と心のなかで叫んだわよ。

実はモッくん(シブガキ隊も知っている世代なので、本木さんは私の中ではいつまでもモッくんのまま。ららら~)の「オモシロ演技」ってもともと苦手で、だからどんなにいいと言われても映画自体を見る気になれなかったというのが本音。モッくん若かりし頃の『ファンシーダンス』とか『シコふんじゃった』とか。『おくりびと』のなかでも、「ああ、モッくん!」とちょっと個人的に辛い「オモシロ演技」もあったのだけど、それでも映画自体は素晴らしかったと思います。だからやっぱりテレビで放送してると見てしまうんですよね。でも・・・


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広末涼子さん。


自分が高校生の時は広末さん本当にアイドルで、ドラマにも歌番組にも引っ張りだこ。かわいいという印象はあったのですよ。でも、三上博史と出ていた『リップスティック』の不良少女役が全然不良少女に見えなくて、更に相手が三上博史だからなのか、演技力の差が素人目にも痛々しくて。そしてその後に見たのが、映画の『秘密』。この時のお相手が小林薫で、もちろん売れっ子の広末さんは「演技力が高い」と評判だったので、きっと彼女も女優として成長しているんだろうと思ってみてみたら、全然変わってなくて、もう見るに耐えなくて途中で止めたくらい。

この映画でも、全体のレベルと広末さんの存在(と演技)のギャップが強烈すぎて…正直、辛かったです。彼女が出てくると映画自体に集中できなくなるほど。この配役を恨んだくらい。どんな役でも「常に可愛らしさを忘れない(はあと)」っていうのが全面に出てるような。「行ってらっしゃい(はあと)」「わー、米沢牛!(はあと)」…。もちろん役柄が「健気で明るい妻」なんだろうけど、健気というよりは状況が全くわかっていないように見えるのよ。モッくんの妻ではなく、広末涼子なの。演技でなく、広末涼子として笑顔を振りまいているようにしか見えないの。すいません、言葉きついけど、これ正直な感想よ。

たぶんね、広末さんに合うドラマや映画もあると思うんですよ。『ケンジとヤスコ』に出てた時(帰国時に1回だけ見た)、「ああ、広末さん!この役抜群に会ってるじゃない!」と思ったもの。今更言っても遅いかもしれないけど。


でもね、やっぱりこれって個人の趣味の問題じゃないですか?それにファンの方だっているだろうし。友達とこの映画の話をした時も、自分からはあえて言わなかったのですよ。でもね、私が言い出さなくても友人たちが先人を切ってくれたの。「映画よかったよね…広末涼子以外は」。しかもね、3人も。別々の機会に、友人3人が3人とも私の心にそっと秘めていたこの思いを口にしてくれたのよ。ある意味有難かったけど。


私個人の感想なんだけど、日本の女優さん(いや、韓国の女優さんも)って、どんな映画や場面でも、常に「美しさ」「かわいさ」を失わない人多いですよね。それがありがたがられて「さすが女優、どんな場面も美しい!」という評価になるのかもしれないけど、個人的にはその方向は好きではないのですよ。演技だから「リアリティがない」というのはおかしな話かもしれないけど、話の内容より、ドラマや映画の質より、己の美が最優先!というところ。いや、もしかしたら女優さんたちの考えではなく、事務所だったり映画やドラマの制作の意向で「常に美しく」なのかもしれないけど、正直ね、白けるんですよ。

「プラダを着た悪魔」のメリル・ストリープのすっぴんの場面覚えてます?メリルだとわかっているのに、メリルに見えなくらい地味な顔が画面いっぱい。一個人の単なる映画好きに、「メリル、いいの?」と本気で彼女の今後のキャリアを心配してしまったほど。
「フラガール」の富士純子さんの演技、覚えていますか?炭鉱の町しか知らない女性。化粧っけなんかまるで無くて。いつもは凛とした着物姿しか見ていなかったから、あのギャップにもものすごく驚いたんですよ。それと同時に、「ああ、日本の女優ってすごい人がいるんだ」と嬉しさのあまり彼女に拍手を送りたくなったほど。


話が飛びましたが、『おくりびと』、面白かったです。そして山形県の風景が、本当に本当に美しい。でも広末さんが好きでない人には、ある意味辛いかもしれません。



おすすめ度:☆☆☆★ (しつこいのは承知ですが、広末さんの演技が良かったら、4つ星は確実でした。)