映画食い倒れ。

~映画は人生のデザートです~

個人的覚え書きのため、たまにネタばれありです。

2022年ベスト。②

2023年12月29日 | 年間ベスト

さて。
2023年の年末に、2022年の映画のベストの発表です。

いつも通り、新しいものから古い作品まで、中には何度も見直している作品も含まれています。
ベストは、あくまで「私がこの年に見た映画の中のベスト」です。




2022年は、いつもよりも多くの映画を観たので印象に残っている作品も多いのですが、まずは個人的がっかりから。




・『ブロンド Blonde』 (2022年 アメリカ)

Netflixで公開された、マリリン・モンローの生涯を描いた作品。
賛否が分かれた作品で、私は正直あまり好きではなかったなー。描き方、映画としての表現の仕方が、結局これまでのマリリン・モンロー関係映画や作品をなぞっているだけの印象でした。



・『リコリス・ピザ Licorice Pizza』 (2022年 アメリカ)

映画館で鑑賞。前評判もよく、ミニシアター風情も懐かしく、楽しみにしていたのですが…私には全くハマらなかった。
ただ、バンド・ハイムのメンバー、アラナ・ハイムの佇まいやクーパー・ホフマンの垢抜けなさ(お父さんはフィリップ・シーモア・ホフマンというサラブレッドだけれども!)はすごくよくて、この映画を楽しみきれなかったことを悔やんでもいます。観るタイミングや年齢によって今後感想が変わる可能性を感じてはいて、今一度観てみたいなと思っています。



・『フレンチ・ディスパッチ ザ・リバティ、カンザス・イヴニング・サン別冊 The French Dispatch』(2021年 アメリカ)

ウェズ・アンダーソンの映画は好きで、作品の8割は観ていると思います。犬が島もグランドブダペストホテルは大好きで何度も観ているほど。しかし、『ライフ・アクアティック』とか、稀に全然入り込めない作品があって、今回はまさにその系統でした。こちらも映画館で鑑賞。これも、あらためて見てみたらもう少しは楽しめるような気がしないでもない。



・『ネクスト・ドリーム/ふたりで叶える夢 The High Note』(2020年 アメリカ)

多分トレーラーが良すぎて、私の期待と想像が上がり過ぎてしまったのだと思う。



・『台風家族』(2019年 日本)

これは、作品がと言うことではなく…。草彅さんやMegumiさんととても魅力的な俳優さんたちが出演されている作品だったのですが、性犯罪歴のある服役中の俳優さんが出演されているんですよ。作品にはとても興味があったし見続けたかったのですが、個人的にその人が出演している、画面に映る時点でそれ以上観ていられなくなってしまいました。こういう感覚を経験したのは初めてのことで、打ち切りやお蔵入りでなくともこういう形で本来は観てくれていたであろう観客に見てもらえなくなることもあるし、それはその作品に関わったすべての人たちの努力を無駄にする行為でもあるんだな…と色々と考えさせられました。





次は、ベストには入らなかったけど面白かった、もしくはおすすめしたい作品。


・『リザとキツネと恋する死者 Liza, a rókatündér』(2015年 ハンガリー)

久しぶりのトンデモ映画でした。(←良い意味で!)
もしかしたら、初めてみるハンガリー映画だったかもしれません。

日本大使の未亡人のハンガリー女性を住み込みでお世話をするリザ。往年の日本歌謡のスター、トミー谷の幽霊と仲良しの彼女は、音楽が流れるとマイク片手に姿を現わす彼と踊りデュエットすることが唯一の心の慰め。お世話をしていた未亡人が亡くなった後、自分と関わる人々が次々と命を落としていくことに。きっとこれは、狐の仕業。私は狐につかれているんだわと悩むリザ。

話の前提からトンチンカンなんだけど、それがうまくはまっていて、監督の底知れぬ日本愛が散りばめられてもいて、トミー谷はデンマークの俳優デイビッド・サクライさんという日系デンマーク人。私は映画の中盤まで本気で賀来 賢人だと思っていた。苦笑



・『パワー・オブ・ザ・ドッグ The Power of the Dog』(2021年 イギリス・アメリカ・カナダ・ニュージーランド・オーストラリア)

アメリカ・モンタナで牧場経営をする兄弟二人の話です。舞台は1925年なのだけど、そこに描かれているのは現在の日本が抱えている男尊女卑、家父長制、人権など諸問題そのものだったり、今でいう「ホモソーシャル」(女性及び同性愛(ホモセクシュアル)を排除することによって成立する、男性間の緊密な結びつきや関係性を意味する社会学の用語)の化身のような人物なのだけど、それが本人を苦しめていたり、セクシャルマイノリティーの生きづらさにも触れられていたり。設定こそ100年前の話なわけですが、現代だからこその切り口による描き方で、この映画で論文一本書けるんじゃないかと思えるほどの重厚さ。それでいて、昔ながらの「映画らしい映画」っぽさがあり、そのバランスもたまらない作品でした。主演の一人のカンバーバッチは、いろいろな役を演じている役者だけど、個人的に彼の「育ちの良さ」を感じることが多いのですが、この映画ではその真逆の役柄で、それも良い驚きでした。



・『ドント・ルック・アップ Don't Look Up』(2021年 アメリカ)
・『ハスラーズ Hustler』 (2020年 アメリカ)

こちらは同じ理由による選出なので2本まとめて。
『ドント・ルック…』のメリル・ストリープ、『ハスラーズ』のジェニファー・ロペスが、まさしく私が個人的に思い描いていた「きっとこの人たちはこんな人だろう」という勝手な決めつけがそのまま役になっていて、その役柄と配役だけでワイン3本くらい空けられそうなくらいにぴったりで小躍りした作品です。






やっぱり長くなったので、ベストの発表は次の投稿で!


『マディソン郡の橋 〜The Bridges of Madison County〜』

2023年12月20日 | 映画~ま~
1995年 アメリカ映画






公開されたのは高校生の頃で、ずいぶん話題になっていました。当時通っていた英会話学校で、2歳年上の高校生だったクラスメイトがえらく感動したらしくこの映画を推していたのですが、10代半ばだった私は「不倫映画の良さを、17歳がわかるわけがないだろう」と鼻白らんで見ていたのを昨日のことのように思い出せます。

私がこの映画を観たのは、多分大学生の頃だったと思います。

20歳を過ぎていても、この映画の良さや伝えたかったことは当時の私には届かなかったし、それを理解できるだけの人生経験なんてあるわけがありませんでした。確かに「好き同士なのに結ばれない二人」の関係に涙はするのだが、それ以上でもそれ以下でもありませんでしたし、どうしてこの作品がこれほどまでに取り上げられたのかもわかりませんでした。



数ヶ月前に、この映画がBSシネマで放送されており、なんとなく録画したままになっていたのを観ました。


ただの不倫恋愛映画だと思っていたこの作品には、人間らしさが詰まっていました。

その人間らしさとは、「人生には自分たちでどうにかできることとできないことがあること」で、この映画にはそれが散りばめられていました。




私は個人的に、「運命の人」は人生の中で何人も出会うと思っています。
何を持って運命と呼ぶかにもよりますが、私の中では恋愛相手に限定したものではなく、歴代の恋人や友人や同僚や同級生、家族たちも含まれている。人生の節目に関わった人、長く付き合いのある人、ほんの一瞬でもその後の人生に大きな影響を与えた人…。


しかし、おそらく一般的には、運命の人とはソウルメイト的なパートナーのことを呼ぶのでしょう。


出会ってから一緒に過ごした時間の長さに関係なく、一瞬でお互いを分かり合える、お互いを自分の人生の一部だと感じる相手というのが世の中には存在します。







映画の中で印象的だった写真家ロバートのセリフ。


”We are hardly two separate people now..."

「僕たちは二人のバラバラの人間じゃない。人生を賭けてこんなふうに感じ合える出会いを探し続けても、出会えずに人生を終える人もいる。そもそもそんな相手が存在しているとも思っていない人もいる」

「これまでの人生は、君とのこの4日間のためにあったんだ」

(どちらも意訳)




これだけなら、ただ恋愛に燃え上がってしまった二人のセリフとして片付けられるし、前回見たときに20代前半だった私はまさにそんな感想を持っていました。


今回あらためて見返してみると、結局二人は4日間を共にした後に別々の人生を歩むことを決めるのですが、直接会うことはなくても生涯を通じてお互いを思い続けていました。

ロバートが亡くなったときには、フランチェスカに愛用のカメラと一緒に過ごした4日間を収めた写真集が弁護士経由で送付され、フランチェスカは自身が亡くなる前に、子供達にロバートとの関係を記した日記を残し、思い出の橋に自分の遺灰を撒いて欲しいと頼んだのです。



初めは母の「不貞」を受け入れられず拒絶反応を示した40代になっていた息子や娘も、母の日記を読み進めていくうちに意識が変わっていきます。



母はロバートを想いながらも自分たちを愛を持って育ててくれたし、父に対しても同じで最期まで看取ったという事実を子供達は理解したのでしょう。
「家族以外の好きな人がいること=家族の誰よりもその人が大事で家族を裏切る行為」ではなく、ロバートを愛しながらも家族も愛していたこと、その家族への愛情がロバートとの関係で減ることがなかったこと、むしろ家族のためにロバートと一緒にならない選択をしたこと。さらにいうと、自己犠牲の精神から家族を選んだというよりは(当初はそれがあったかもしれないが)、家族・子供達はフランチェスカにとってかけがえのない存在だったことが、子供たち二人にも通じたということなのだと思います。

妻であり母であることを全うしたフランチェスカの告白に、子供たち二人が人生を見つめ直すきっかけを与えられた事がどれほどに大切なメッセージであったか。



そして、ロバートとフランチェスカは、再び出会うことはなくとも、ただ互いが存在しているというだけで互いに救われていたのでしょう。


これは私の理解だが、映画の中でロバートが言う「古い夢は良い夢だ。実現しなくても、見て良かったと思える」(意訳)とは、フランチェスカとの出会いのことを言っているように思えた。一緒にはなれなくとも、出会えたことが二人の生きる希望であり宝物になっていたのだと思います。






そりゃ、二十歳そこそこではわからなかったよな…、と今あらためてこの作品が話題になったことの意味が理解できるようになった気がします。



最後に、映画でとても印象的だったのが、ロバート(クリント・イーストウッド)の目の輝きです。
役柄では52歳の写真家ですが、フランチェスカと出会い喜びに満ちたロバートの目は輝きを増して、少年のように素直で純粋でキラキラとしていました。一つだけ好きなシーンをあげるとしたら、ロバートの目の輝きかもしれません。





(あと、全くの余談ですが、もしこの映画がリメイクされるとしたら、息子・娘役もそこそこ有名な俳優が演じるのではないかなと思いました。
この映画は90年代の作品ですが、昔って主人公以外の脇役って本当に見たこともないような俳優たちが配役されることが多かったように思います。その為、主役たちとの演技力の差が歴然で、脇役シーンになると一気に安っぽくなってしまうことがあったり。でも最近って、ほんの短いシーンや脇役でも、かなりの有名俳優たちを使うことが増えた気がしています。)





おすすめ度:☆☆☆☆☆

2022年ベスト。①

2023年12月13日 | 年間ベスト

年が明けてしまう前に、2022年ベストです。

まずは、鑑賞した作品の一覧から。



・Finding Banni: The boy my family tried to adopt | Chernobyl Documentary(2022年 アイルランド)
・ハウス・オブ・グッチ House of Gucci(2021年 アメリカ)
・ジュディ 虹の彼方に Judy(2019年 イギリス・アメリカ)
007 ノー・タイム・トゥ・ダイ No Time To Die (2021年 イギリス・アメリカ)
・リコリス・ピザ Licorice Pizza  (2022年 アメリカ)
・フレンチ・ディスパッチ ザ・リバティ、カンザス・イヴニング・サン別冊 The French Dispatch(2021年 アメリカ)
・Yuli:The Carlos Acosta Story(2018年 スペイン・キューバ・イギリス・ドイツ)
・ロスト・ドーター The Lost Daughter(2022年 ギリシャ・アメリカ)
・ドント・ルック・アップ Don't  Look Up(2021年 アメリカ)
・ドライブ・マイ・カー Drive My Car (2021年 日本)
・ファーザー The Father(2020年 イギリス・フランス)
・ガス燈 Gaslight(1944年 イギリス)
・ダブリンの時計職人 Parked(2014年 アイルランド)
・マネー・ショート 華麗なる大逆転 The Big Short(2015年 アメリカ)
・ハスラーズ Hustler (2020年 アメリカ)
・スポットライト Spotlight (2015年 アメリカ)
・パワー・オブ・ザ・ドッグ The Power of the Dog(2021年 イギリス・アメリカ・カナダ・ニュージーランド・オーストラリア)
・セバーグ Seberg(2019年 アメリカ・イギリス)
・クイーン+アダム・ランバート・ストーリー: ショウ・マスト・ゴー・オン The Show Must Go On: The Queen + Adam Lambert Story(2019年)
・ある公爵夫人の生涯 The Duchess(2008年 イギリス・アメリカ)
・スキャンダル Bombshell(2019年 アメリカ・カナダ)
・ドリーム Hidden Figure(2016年 アメリカ)
・リトル・ダンサー Billy Eliott(2000年 イギリス)
・オールド・ガード The Old Guard(2020年 アメリカ)
・小さな恋のメロディー Melody(1971年 イギリス)
・オールウェイズ Always(1989年 アメリカ)
・ウィンストン・チャーチル/ヒトラーから世界を救った男 Darkest Hour(2017年 イギリス・アメリカ)
・ネクスト・ドリーム/ふたりで叶える夢 The High Note(2020年 アメリカ)
・ニキータ Nikita(2010年 フランス)
・ひまわり Girasoli(1970年 イタリア)
・ライオン 〜25年目のただいま〜 Lion(2016年 オーストラリア・アメリカ・イギリス)
・インビクタス/負けざる者たち Invictus(2009年 アメリカ・南アフリカ)
・7月4日に生まれて Born on the Fourth of July(1989年 アメリカ)
・夢に行きた男 ベーブ The Babe(1992年 アメリカ)
・Mixtape(2021年 アメリカ)
・イミテーションゲーム Imitation Game(2014年 イギリス・アメリカ)
・スラムドッグ・ミリオネア Slamdog Milionaire (2008年 イギリス)
・僕たちはみんな大人になれなかった(2017年 日本)
・ブロンド Blonde (2022年 アメリカ)
・I used to be famous(2022年 イギリス)
・世界の中心で愛を叫ぶ(2004年 日本)
・エリザベス Elizabeth(1998年 イギリス)
・エリザベス:ゴールデン・エイジ Elizabeth Golden Age(2007年 イギリス)
・ロンドン、人生始めます Hampstead(2017年 イギリス)
・護られなかった者たち(2021年 日本)
・最高の人生のつくり方 And so it goes (2014年 アメリカ)
・冷静と情熱のあいだ(2001年 日本)
・パリの家族たち La fête des mères(2018年 フランス)
・人生スイッチ Relatos salvajes(2014年 スペイン・アルゼンチン)
・9人の翻訳家 囚われたベストセラー The Translators(2019年 フランス・ベルギー)
・大統領の料理人 Les Saveurs du palais(2012年 フランス)
・ゲゲゲの女房(2010年 日本)
・プロミシング・ヤング・ウーマン Promising Young Woman(2020年 アメリカ)
・裏切りのサーカス Tinker Tailor Soldier Spy(2011年 イギリス・フランス・ドイツ)
・木更津キャッツアイ日本シリーズ(2003年 日本)
・あなたのママになるために Ma Ma(2015年 スペイン)
・ゴッド・ヘルプ・ザ・ガール God Help the Girl(2014年 イギリス)
・ある天文学者の恋文 The Correspondence (2016年 イタリア)
・コッホ先生と僕らの革命 Der ganz große Traum(2011年 ドイツ)
・ラビング 愛という名前の二人 Loving(2016年 アメリカ)
・旅立ちのとき Running on Empty(1988年 アメリカ)
・昨日何食べた?(2021年 日本)
・アイアムサム I am Sam(2001年 アメリカ)
・Coda 愛のうた(2021年 フランス・アメリカ)
・ビリーブ 未来への逆転劇 On the Basis of Sex (2018年 アメリカ)
・女神の見えざる手 Miss Sloane(2017年 アメリカ)
・永遠に僕のもの El Angel(2018年 スペイン・アルゼンチン)
・シェイム Shame(2011年 イギリス)
・シェフ!三つ星レストランの舞台裏へようこそ Comme un chef (2012年 フランス)
・パパが遺した物語 Fathers and Daughters(2015年 イタリア、アメリカ)
・きみがぼくを見つけた日 The Time Traveler's Wife (2009年 アメリカ)
・Ethel and Ernest (2016年 イギリス)
・台風家族(2019年 日本)
・シェルブールの雨傘 Les Parapluies de Cherbourg (1964年 フランス・西ドイツ)
・グリーンブック Green Book(2018年 アメリカ)
・僕の巡査 My Policeman  (2022年 イギリス)
・ボヴァリー夫人とパン屋 Gemma Bovery (2014年 フランス)
・リザとキツネと恋する死者 Liza, a rókatündér(2015年 ハンガリー)
・クレイジーホース・パリ 夜の宝石たち Crazy Horse(2014年 フランス)
・ポーラーエクスプレス Polar Express(2004年 アメリカ)
・ラブ・アクチュアリー Love, Actually(2003年 イギリス)
・漁港の肉子ちゃん(2021年 日本)
・タルサ 俺の天使 Tulsa(2020年 アメリカ)
・Jenifer Lopez:Half Time(2022年 アメリカ)
・Love Goes, Sam Smith Abbey Road Studio(2021年 イギリス)
・One Direction  This is us (2013年 イギリス・アメリカ)
・大いなる沈黙へ グランシャトールーズ修道院(2005年 フランス・スイス・ドイツ)
・バレエボーイズ Ballet Boys(2014年 ノルウェー)
・U2 Live in London(2017年)




この年はいつもより多めの89作品でした。


感想やベストは次回に!