映画食い倒れ。

~映画は人生のデザートです~

個人的覚え書きのため、たまにネタばれありです。

『トレインスポッティング2 ~T2 Trainspotting~』

2017年04月01日 | 映画~た~
2017年 イギリス映画


*ロンドン地下鉄の駅に登場したT2ポスター

20年前に公開された『トレインスポッティング』の続編です。


日本でもコアなファンを持つこの作品。公開当時、この映画のサントラCDを購入した人も多いはず!『トレインスポッティング2』は、1作目から20年経った彼らの姿を描いています。そして、彼らの現在の姿は想像通りで、そこは期待を裏切りません(笑)。



内容はと言いますと…そのまま、彼らの20年後の姿です。一応端的に内容を説明しますと、ドラッグを売りさばいたお金を持ち逃げし仲間たちの前から姿を消していたレントン(ユアン・マクレガー)が、20年ぶりにスコットランドのエディンバラへ。彼以外の仲間たちは、20年前の出来事以降も、罠にハマったかのようにずっとかわらぬ生活ぶり。しがないパブ経営、妻子持ちで生活保護を受けながらの困窮した生活、刑務所暮らし…。そこに現れたレントンは、生活のすべてが上手くいっていて自分たちとは異なるライフスタイルを謳歌している様子。あの時持ち逃げしたお金を元に。過去の恨みつらみの爆発、袋小路に追い込まれたような将来に希望を見いだせない生活、自分たちを出し抜いて成功したかつての仲間。でも本当にそうなのか?…というところから話が動き始めます。


1作目から20年後の設定なので、前作と比べるのは全く意味が無いことなのですが、個人的には「これ以外には描きようがないよね」と思いました。もう20代の若者ではない彼らの生活の変わったところ、変わっていないところ。抱えている問題も20年前とは違うし、それに対処するだけの自由さ、体力、環境だって違います。


一番好感が持てたのは、1作目より良い映画を作ろうとしていないところ!そもそも、そこを超えていこうとしていないところが、清いなと思いました。前作のインパクトは、あの時代で、あの年齢の俳優たちの起用、あの時代の音楽だったからこその爆発力のなせる技。映画の続編を作る時、そこを超えていこうとか色々なものを詰め込みすぎて、逆にグダグダになるというパターンが多いと思いますが、さすが20年寝かせてやっと重い腰を上げて作っただけあって、そんな単調なミスは犯していないのはさすがです。


1本の作品としてどうなのかというと、当然ながら1作目の圧勝です。逆に言うと、上でも言及しましたが、制作側も1作目に勝る作品を作ろうとしていないし、見る側もそこを求めるのは間違っているのだと思います。これはあくまで続編なわけですから。


では、続編としてどうなのかというと、抜群でした。


前作との絡みもありますし、1作目を知らない人が見ても分かるようにしなければならない部分もあるので、映画の前半はどちらかと言うと「トレインスポッティングとは」とか、登場人物たちの関係性をしっかり明確にするために割かれています。続編としての面白さが増してくるのは後半。


トレインスポッティングのファンならスパッドを愛さずにはいられないと思うのですが、そんな気持ちを抱いている方なら絶対楽しめるし嬉しくなる作品です。彼のキャラクター、ダメダメ具合(それは全キャラクターがそうですが)、そしてそれでも愛さずにいられないし応援したいと思ってしまうのがスパッドの魅力。そして、話の内容にもダニー・ボイル的なひねりがあって、とってもニクイ!


映像の面白さは去ることながら、往年のファンなら満足の一本です。


私は前作が本当に大好きで多分20回位観ているのですが、この続編を映画館へ観に行った時は、もう嬉しくて嬉しくてニヤニヤが止まりませんでした(笑)。愛すべき全キャラクターがそのまま、でも20年の時を経て良くも悪くもリアルにそこにいてくれるのですから。この作品を楽しむには、「続編である」ということをきちんと念頭に置いて観てください。一本の作品として個別に楽しむのではなく、前作とのセットとして生きる一本です。





おすすめ度:☆☆☆☆★


日本での公開は、2017年4月8日から

『007 スカイフォール ~Skyfall~』

2012年11月06日 | 映画~た~
2012年 イギリス


日本では12月から公開の、007最新作『スカイフォール』です。

以前、『慰めの報酬』の感想を書いた時にも触れましたが、007シリーズは、ダニエル・クレイグのものしか見たことありません(キリッ)。厳密に言うと、ショーン・コネリーの時の『007は二度死ぬ』と、ピアース・ブロスナンの『007ダイ・アナザー・デイ』は部分的に見たことがあるのですが、最後までは見れなかったのね…私の好みではなくて。特にショーン・コネリーの『007は二度死ぬ』は、日本が舞台なんだけど、まぁ当時60年代のものだからしかたがないとはいえ、正直「日本か中国かよくわかんないけど、なんか東方の遠くの国」的な適当感、そしてベタベタな展開(そこがいいんだろうけど)に胸焼けして、もうね…。

ま、きちんと見てもいない作品のことは置いておいて、最新作『スカイフォール』です。


単刀直入に言います。

ダニエル・クレイグのボンドの中で、最高傑作です!



前回の慰めの報酬の感想を読んでみていただけるとわかるでしょうが、『カジノ・ロワイヤル』も『慰めの報酬』も、特にボンドファンというわけでもない私にとっては、「ただのアクション映画」以外の何物でもなかったのです。見ている間はそのアクションや展開の速さ(というか画面がバンバン変わる)ので楽しめるんだけど、それだけ。あとに何も残らない。


でも、今回は違います!!!ちゃんとストーリーがあります!!!!


もちろん、これまでだってストーリーがあったんでしょうけど、ほら、物覚えの悪い私には何にも残ってないのね。それが、今回はもう始まりの5分から目が離せなくなっちゃうくらい引き込みが強くて、見た目の激しさだけでなく物語そのものに関心が惹きつけられるのね。


ボンドのダニエルは間違いなくかっこ良くて、もうイギリスで放送されてたテレビCM(電車に飛び乗って、着崩れたスーツを正しただけ)だけでもその魅力にクラクラしたのだけど、この作品は絶対大画面で堪能してください!

ボンドの脇を固めている俳優はもちろん抜群。Mのジュディ・デンチ、レイフ・ファインズ、そして今回の作品の準主役のハビエル・バルデム(ペネロペ・クルスの旦那ね)が見事。これまでハビエル・バルデムの作品って、ペネロペと若い時に共演していた『ハモン・ハモン』(←どうでもいいというかなんというか微妙な作品)、『ヴィッキー・クリスティーナ・バルセロナ』、そして『食べて、祈って、恋をして』と、なんだかぼんやりした作品ばかり観ていたので、いい俳優なんだろうけど作品はどうなのさという思いが強かったのです。が、この作品は、彼の代表作の一つになること間違いなしでございます。本当に素晴らしい俳優さんだと、今回の映画で気付かされました(遅い)。


前2作のダニエルのボンドでは、かっこ良さ、アクション先行型だったのが、今回の作品は、ボンドの人間らしい所、007の歴史の長さが感じられるエピソード、イギリス的な笑いもところどころに散りばめられ(爆笑ではなく、クスッとさせてくれる感じ)、これが作品全体にメリハリを出しています。今年はなんと007映画シリーズの50周年で、いろいろな区切りとしての作品になっており、今後のシリーズへの布石にもなっています。

ダニエルがボンドに選ばれた時は、「ボンドになるにはかっこ良さが足りない」と批判されましたし、プレイボーイ的なわかりやすい男前な外見のこれまでのボンド俳優と比べると、確かに華が足りないと私も思ったのですが、ダニエルのボンドはある意味それまでとは異なる新しいカタチのかっこ良さを作っているような気がします。


今回の『スカイフォール』、ボンドファンでなくても楽しめます!個人的にはもう一度見に行きたいくらいお気に入りです。

日本では12月から公開です。



おすすめ度:☆☆☆☆★

「ターミネーター4 ~Terminator Salvation~」

2009年06月24日 | 映画~た~
2009年  アメリカ映画


SFが苦手の私ですが、『ターミネーター』『ターミネーター2』は別です。2なんて、弟がビデオを持っていたので、20回以上観てるんじゃないかと思います。しかし3は未だに未見。なんだか・・・観るのが恐ろしくて。前評判がよくなかったので、がっかりしたくなくて。ということで、3を飛ばしていきなり4です。


ジョン・コナー。大人になったんですね。ジョンを演じたのはクリスチャン・ベイル。さすが、期待を一身に背負う大役ですが、そつなくこなしていました。それでも映画を見ている最中、どうしても頭から離れなかったことが1つ。それはエドワード・ファーロングのこと。T2でのデビューから18年。現在31歳の彼なら、4で描かれているジョン・コナーを十分に演じられる年齢なわけですよね。確かにその後の彼はあまりぱっとした作品には出ていなかったけど、その作品からしばらく経ってから久しぶりに姿を見た『アメリカン・ヒストリーX』での演技は申し分なかった。ただ若さだけでキラキラと輝くような魅力ではなく、陰りのある彼の表情や抑えた演技はほかの同年代の俳優たちに比べてもずば抜けていたと思う。どうも前作の『ターミネーター3』でもキャスティングはされていた様子。いろいろな問題があり降板せざるを得なかったと言うのはなんとも悲しいなぁ、と。順調にいっていれば、間違いなく彼が今回の主役だったわけだし、やっぱりエドワード・ファーロングのジョン・コナー、観たかったです。


映画の所々に、『2』を髣髴とさせるシーンが何箇所か。おまけ映像と言うわけではないけど、サービスショット的な。でもどうしても私には「わざとらしく」見えてしまい、ちょっとしらけたり。話の内容は期待を裏切ることなく、まぁ満足の仕上がり。

この映画のキーとなっている役柄を、サム・ワーシントンと言うオーストラリア出身の俳優が演じています。この映画ではじめてみる俳優なのですが、もう初っ端から、何処と無く「ベン・アフレック」に雰囲気が似ていて(私には、よ)もうそれだけで映画に集中するのが難しくなりました。ええ、ベンが苦手なんです。

ジョンの奥さんの女優さん(ブライス・ダラス。ハワード)が、なんとなくイメージと合わないように思ったのだけど、本来はこの役、シャルロット・ゲンズブールが予定されていたらしいです。シャルロットのほうが、間違いなく合ってるわ。なんだか所々残念だったわ。ブライスさん、どっかで観たことあるような…と思ったら、M・ナイト・シャマランの『ヴィレッジ』『レディー・イン・ザ・ウォーター』のあの方だったのね。独特の雰囲気のある方なのよ、この人。うまく説明できないんだけど、地面から1センチほど宙に浮いてそうな(わかります?この意味合いを共感してくださる方、いらっしゃるかしら?)。そう、そういう独特さがある人だからこそ、もっと癖のある役のほうが合っていると思うのよね。


重要な役どころのアジア系の女性(ムーン・ブラッドグッド)の、戦闘時のメイクが“REM”を思い起こさせたり、みんな生きるか死ぬかの戦時中だというのに、ジョンの奥さんは出てくるたびにファッションが違ってたり。シュワちゃん、別に無くてもよかったんじゃないか、とか。面白いことは面白かったけど、作品に集中できたかと言うと実はそうでもなかったと言うのが実のところです。まぁ、1や2がものすごく好きだったので、それと比べてみてしまうと言うのは仕方が無いし、否応無くその作品への期待値やハードルは高くしてしまっていたと思いますが。

でも、観て損は無い作品です。5も予定されているとのことなので、このシリーズのファンの方はぜひ。


写真はまた後ほど。

おすすめ度:☆☆☆

「ドリームガールズ ~Dreamgirls~」

2009年05月18日 | 映画~た~
2006年  アメリカ映画


やっと観ました。劇場で公開されていた時からずっと見たかったのだけど、今まで機会を逃してきたのよね。

モータウン・ミュージックの創成期から音楽のスタイルを少しずつ変えていく時代の流れを、3人の女性歌手を中心にその業界の当時の様子を描いた作品。


登場人物の役柄は、実在のモータウン音楽の歌手やプロデューサーたちがモデルになっているそうで、思い浮かぶ人物像がチラホラ。ミュージカル映画なのだけど、ミュージカル映画が苦手な人でも音楽好きなら楽しめる作品だと思います。そういうあたくしも、実はミュージカル映画苦手。確かにこの映画を見ているときも、「いや、今歌わんでも」と思うところは数箇所あったんだけど、それはしょうがないよね。だってミュージカル映画なんだから。それでも、ケイト・ハドソンやビヨンセ・ノウルズの歌とステージが盛りだくさんで、見ごたえ十分。エディー・マーフィーの器用さには、本当に驚かされます。なんか、この映画の中の役柄、いろんな意味で彼にぴったりで言いキャスティングだなぁと妙に納得です。ほら、メルB(スパイス・ガールズね)との間に子供いるし。


自分たちの成功のために、ケイト演じるエフィーを「あんたが私たちが抱える問題のガンなのよ!」と皆でよってたかって彼女をなじるシーン。ものすごくアメリカだなぁと感心したわ。確かに彼女の意思の強さは誰もが受け入れられるものではなくて、時に反発を招くと言うのもわかるんだけど、より華やかな外見を求めるために切った、歌のうまさよりも誰もが受け入れやすい歌声を、という彼らの「成功」のために理不尽な選択を迫られた彼女の気持ちや、彼女が強い態度を取ってしまう理由は無視。まぁ少しは考えたんだろうけど、彼女を囲んでなじる(しかもべらぼうにうまい歌声で!)のは、うーん、日本人とは違うかも。イギリス人とも違うような気がする。「ショウビズの世界だから」と言われたらそれまでなんだけどさ。

でもただ華やかなだけでこの映画は終わらなくて、映画が進むにつれて登場人物たちの考え方や性格が変わっていく様も描いているところはいいなぁ、と思います。

はじめはただ3人のうちの1人だったビヨンセが、どんどん磨かれて美しくなっていくのね。本当にこの人、美しい!驚きの美しさです。ケイト・ハドソンの歌唱力の高さは、誰もが納得で、そしてこの映画の中の楽曲もすばらしい。ある友達は、この映画を劇場で見た後、その足でサントラを買いに行ったといっていたけど、その気持ち今ならわかります。

ケイトのお兄さんCC役の彼(キース・ロビンソンと言うらしい)、うまかったなぁ。



おすすめ:☆☆☆☆

『ディファイアンス ~Defiance~』

2009年01月20日 | 映画~た~
2008年・2009年  アメリカ映画



息を吐く間もない展開。まさにこの言葉がぴったりの映画だった。第二次大戦下、ナチス・ドイツがユダヤ人を虐殺、強制収容所に収容するために「ユダヤ人狩り」を行っていた時代。4人の兄弟が先頭に立ち、何とかナチスの追っ手から森へ逃げ込んだユダヤ人たちとともにコミュニティーを形成し、戦禍を生き延びる物語。実話を元にした映画です。


主演のダニエル・クレイグは007の役柄と「戦う男」という点は共通しているのですが、なんていうの?ベクトルが違うとでも言うのかしら。スマートな身のこなしのイギリス政府の孤高のスパイとは対極の、森で身を潜め仲間とともに戦う泥臭さのあるヒーローです。彼が長男トュービア。次男がザス(リーヴ・シュレイヴァ-)、三男アザエル(ジェイミー・ベル)そして四男アーロン(ジョージ・マッケイ)。まぁ、この兄弟たちの年が離れすぎているというのは目を瞑りまして。この3人がまったく兄弟には見えないのだけど、もうほんと、そんなことはどうでもよくて、それぞれのキャラクターが立っていて特に上3人の配役で映画が締まっています。


やっぱり好きなのでこの人を褒めずにはいられないのだけど、三男を演たジェイミー・ベル。『リトル・ダンサー』に始まり、テレビドラマの『バンド・オブ・ブラザーズ』、『ジャンパー』『父親たちの星条旗』とすでにキャリアも確立しているのだけど、この映画の中では若さ、あどけなさ、初々しさを見事に表現していてその演技力の高さに驚かされます。兄の後ろをついていくだけで精一杯だった少年から、兄たちの後姿を見て成長し、コミュニティーを引っ張っていけると期待できるほどにたくましく勇敢な青年に育つまでの変化。どうしたらここまで演じ分けられるのだろうと感心するくらい。

俳優たちはイギリス人、アメリカ人がほとんどなのだけど、映画の中ではナチスの脅威におびえるユダヤ人。なので基本は英語の台詞ですがドイツ語もあり。英語はドイツ訛でしたが、これってドイツ人が見たらやっぱり「・・・。」ってなるのかしら。ま、それを置いておいてもものすごい映画です。


トュービアが戦禍を生き延びるこの戦いの中で一番大切だと説いたのは、「人間らしく生き、人間らしく死ぬ」ということ。どんなに切羽詰った状況でも、理性を捨てた動物のように自分が生き延びることばかりを優先し、罵り合ったり争うのではなく、コミュニティーとして皆が共に生き伸びること、皆平等にそして助け合うこと。人間としての尊厳を決して失わないこと。

そのコミュニティにいる誰もが、親兄弟など身近な人々を殺され、いつ自分たちが殺されてもおかしくない状況にいる。その状況下で「人間の尊厳を守ること」を説き、その考えの下で共同生活をし、そして生き延びた人々。共同生活だったからこそ可能であり生まれた考え方なんじゃないかと思う。正直この兄弟なら、自分たち4人の方が動きやすいし、何百人分の食料の心配だってしなくていい、第一誰かに守ってもらわなくても戦えるし、「生きる」というか「死なないでいる」にはその方が楽だったと思う。しかしこの人たちは皆で生活し生きることを選んだ。それはどんな生活や方法でも良い訳ではなく、「人間として生活する」ことを選んだからなんじゃないかと思う。

次男は考えの違いからコミュニティーを離れ、敵(ドイツ軍)と戦う(と言うか殺しにいく)道を選ぶ。


次男を演じたリーヴ・シュレイヴァー。見たことがあるような気がするのだけど、全然どの映画なのか思い出せませんでしたが、調べてみるとかなり多くの映画に出演している様子。私は見ていませんが『スクリーム』シリーズとか。1999年にデンゼル・ワシントン主演の『ハリケーン』と言う映画があるのですが、たぶんこれで彼を見てうっすらと顔を覚えていたようです、私。しかも彼、ナオミ・ワッツの旦那さんだったのね。知らなかったわ。


このコミュニティー内で、教育や宗教といった文化面に広く従事した元編集者のアイザック役に、『イン・ハー・シューズ』でローズの恋人役だったマーク・フュ-アステイン。この人、賢そうな役似合います。


戦況に翻弄された人々の生活、想像しきれない戦況の恐怖におびえながらも生き抜いた人々の生き様、コミュニティーの難しさ、人間の尊厳、立場によって見方の変わる命の重さ、尊さ。いろんな要素が詰まっていて、状況は全く異なっていても現代に通じるテーマであり、考えさせられる映画です。移動しては住む場所を作り、また戦禍にさらされては場所を移動し。終わりの見えない旅路に耐えた人々の強さにただただ圧倒されます。映画のエンドロールで、このような生活がさらに2年間続いたと書かれていて、やりきれないと言う言葉では表現できない感情に襲われました。

こんな状況下に私は当然のことながら置かれたことが無く、「命」とか「生きるすべ」とか「生き方」とか、私がこんな言葉を使って意見を述べること自体ものすごくおこがましいことは重々承知の上なのだけど、ここは「映画の感想」としてあえて素直に思ったことを書かせて頂きました。


日本では2009年2月14日から上映予定だそうです。バレンタインですね。すばらしい映画ですが、デート向きではありません。





おすすめ度:☆☆☆☆☆


注:公開年度を2008年、2009年と書きました。この映画、ゴールデン・グローブ賞にノミネートされていた作品で、それに間に合わせるために一部のみで2008年に公開されていたとのこと。2009年に一般公開となったとのことなので、両方の年を記載しました。




「007 慰めの報酬 ~Quantum of Solace~」 

2008年11月25日 | 映画~た~
2008年 イギリス・アメリカ映画

007の最新作です。イギリスでは10月31日から公開中。ダニエル・クレイグのジェームズ・ボンド、2作目です。

実は007シリーズって今回の作品と前作の『カジノ・ロワイヤル』と2作しか見たことがありません。ピアース・ブロスナン以前は、私も小さかったので「007」を楽しめるほどではなかったし。ピアース・ブロスナンのときは、確かに人気があったけどなんというか甘いマスクの男前過ぎて、そして派手さがあって、どうも私の好みではなかったのよね・・・シリーズ見たことなかったくせに言うけど。そう、ピアース・ブロスナンが好みじゃないのよ。だから見る気が全然なかったの。


邦題は『慰めの報酬』っていうのね。たった今知りました。イギリスでは10月始めごろから、じわじわとテレビCMや関連商品、ダニエル・クレイグのトーク番組出演やプレミア試写のニュース報道で007最新作熱が高まり始め、この映画シリーズの人気が伺えました。スーパーとかで007カードとか売ってるもん。

で、人々の間では、「この最新作は前作の続き物だから、前作を見てから映画館に行ったほうがいい」といろんなところで語られておりました。ええ、前作は見ましたけど、毎度の事ながら話の内容はあんまり覚えていません。そして前作の復習をすることなく劇場に足を運んだ次第です。

感想は・・・実はよくわかりません。いろんなキャラの登場人物が出て来て、見ている間はスピード感もあるし楽しめたのは事実なんだけど、何ていったらいいんだろう。楽しんだにもかかわらず、後に何にも残らないの。感想さえも。最初から最後まで、アクション目白押し。これぞアクション映画!で、見ごたえは十分なの。殴り合いのシーンなんか、こっちが顔をしかめてしまうほど痛そうだし、すごく作りこまれているんだけど、動きが早すぎて何が起こっているのかついていけないの。いや、その激しさを楽しむわけだから、たぶん必ずしもすべての動作についていかなくてもいいんだろうけど。でもそれがほんとに最初から最後までその調子なの。飽きずに楽しめて、アクション満載で見ごたえもあるんだけど、後に何も残らない。アクションで満足しちゃうので、ストーリー展開なんかどうでもよくなっちゃうし、実際ほんとどうでもいい内容。

でもね、いいんですこれで。ジェームズ・ボンド・フィルムを観に来ている観客は、ボンドのかっこよさ、その妖艶さ、そして彼のアクションや最新の電子機器、車を見に来ているのだから。そのすべてが詰め込まれているので、たぶん満足なんです。確かにボンドが乗っていたアルファ・ロメオはかっこよかった。(たぶんというかきっと、アストン・マーチンも出てきているはずなんだけど、それにすら気づかなかった)

そう、中身がどうのこうの、ストーリー展開がどうとかいうシリーズじゃないのよね。だから私はそれなりに満足でした。

ダニエル・クレイグがボンドに決まった時、イギリス国内では不満の声が上がったと聞いているけど(今までのボンド像と異なる=ハンサムじゃない)、私個人としては悪くないと思います。まぁ、実際前回のカジノ・ロワイヤル公開後は彼の評判も良くなったんですけど。確かに、万人受けするわかりやすい男前ではないのだけど、男くささ、ポーカーフェイスに隠れた色香はすごいんです、ダニエル・クレイグ!雰囲気が色っぽいんです。それを堪能できただけで、私十分満足でございます。

そして今回のボンド・ガール、山田麻衣子さんを思い出しました。山田麻衣子さんって、テレビドラマの『青い鳥』以降見た覚えがないんですけど、元気なんでしょうか(誰目線?)。独特の存在感のある女優さんだったので、結構好きだったんですけど。また出て来てほしいわ。


日本での公開は1月24日の予定だそうです。


おすすめ度:☆☆☆★

「ダークナイト ~The Dark Knight~」

2008年09月07日 | 映画~た~
2008年 アメリカ映画

3日前に見てきました。イギリスでは7月半ばに公開となりましたが、9月現在も引き続き上映中。2時間半以上にわたる長い映画ですが、中だるみが全く無く、とにかくその世界に引き込まれていきます。

実はわたくし、バットマン・シリーズって今まで1本も見たこと無かったのです。興味が無かったの。アメ・コミ物だし、スーパーマンとかみたいに超人的で現実離れなSFというイメージが強かったし(私は基本的にSFが苦手)、私の中ではスーパーマン(見たことあります)もスパイダーマン(未見…というか見る気なし)も、バットマンも同じカテゴリーだったのです。でも今回はなんかものすごく興味を引かれた。それはやっぱりヒース・レジャーがジョーカーだったから。彼が亡くなったからとかではなく、ポスターや予告編のなかの彼のジョーカーは、私が今までイメージしていたアメリカン・コミックの登場人物とは全く異なっていたから。同じジョーカーでも、20年位前のジャック・ニコルソンのは、もう見た目が苦手。デザインがコミカルすぎて。まぁ、監督がティム・バートンだったから、コミカルさは仕方ないのだけど。その後ダニー・デビートが演じたペンギン男も。人間とは完全に違う生き物で、地球外生物。私には宇宙人と一緒。でも、ヒースのジョーカーには「人間」を感じたのです。

それは私が特別に何かを感じ取ったのではなくて、もちろん映画を見る前なので彼の演技力が云々でもなく、キャラクターデザインによるものなんだと思う。困ったときのウィキペディアでこの映画についての記述を読んでみると(2008年9月6日付)、「ジョーカーの外見は、彼の性格を反映したもの」とある。まさに彼の心の内の狂気や苦しみを体現したキャラクターデザインだと思う。ほかのバットマン・シリーズを観た事が無いので内容は比べようが無いのだけど、外見に関してはジャックが演じていたジョーカーには、悪事の中に「お遊び」的な気分が含まれているような外見だった。あくまで外見の話なのだけど、そのひねくれた性格の原因とかはどうでもよくて、ただ単純に「悪者」のイメージ。でもヒースのジョーカーは、もともとは普通の「人間」で、苦しみや辛さを知っているからこそ突き抜けた「悪魔」になってしまったように見えるし、凶悪さと心の闇を持つ繊細さも垣間見えて、あの強烈な外見はだからこそ余計に恐ろしい。生まれ持っての悪魔ではなく、いろんなきっかけや経験がそうさせてしまったという怖さ。


見る前の期待を全く裏切らないどころか、期待以上。「ヒースがジョーカーを演じている」のではなく、あれがジョーカーそのものだった。外見と彼の性格が見事に一致していて、一寸のブレもない。こんなに「映画」という枠の中ですべてがぴったり合致するキャラクターって、私は今までに見たことが無いかもしれない。私の中のジョーカー像は、完全に固定されてしまった。

皺が浮き彫りになる白塗り、未完成な目の縁取りや裂けた口に塗られた口紅。場面によってそのメイクにムラがあって、警察で身柄を拘束されていたときは全体的にメイクが取れたりして薄くなり、肌色が見えて人間の生々しさがある。次に別の場面で登場するときには、また色が塗られているのだけど、毎回同じではなくやっぱりムラがある。ジョーカーがジョーカーと言う人物になるために施すメイク。そのときの状況や気分でムラが生まれ、全く完璧ではないところに「心の不完全さ」が表れているようでものすごく異様だった(褒めてます)。



ジョーカー以外の見所も満載。とにかくすべてを見逃したくないくらい。

あの映画を作った俳優・スタッフたちの並々ならぬ意気込みを感じる作品でした。あんなに豪華な俳優陣なのに、それぞれが良さを引き立てあっていて、映画は人間(登場人物たち)の心の闇を見事なまでに表現していて、とにかく細部にいたるまで手を抜くことなく、攻めるように作りこまれたすばらしい映画だった。この映画の撮影、絶対にきつかったと思う。その厳しさが伝わってくるほど、ストイックで、「映画が好きだから」という映画への尊敬を感じる。ものすごい大作で時間も長いのに、ここまで丁寧に作られている映画ってどのくらいあるのだろう。映画館で見ることの幸せを感じることができる、たぶんものすごく稀な作品だと思います。


長編映画で興行的に成功した映画というと、どうしても私には『タイタニック』が思い浮かんでしまうのだけど、一言で「長編」「興行収入○○ドル(円)」と言っても、いろいろあるんだなぁと映画を見ながらふと考えてしまいました。いい映画、面白い映画が必ずしも当たるわけではないし、逆に言うと興行的に成功している作品がすべて面白いわけでも優れているわけでもないと言うこと。その点、この映画はすべてを満たしていて、本当に驚いた。

わたし、ものすごく褒めちぎってますね。いや、ほんとに良かったのよ。


やっぱりどうしてもヒース・レジャーに目が行ってしまうのだけど、バットマン役のクリスチャン・ベイルのナルシストっぽい雰囲気もバッチリだった。もしバットマンを演じていたのが別の人物だったら、もう比べようが無いくらいジョーカーに食われた、バランスの悪い映画になっていたと思う。ベイルだったからこそ、いやそれでもやっぱりヒースはものすごくすばらしかったけど、なんとかバランスを保てたように思う。

それでもトゥーフェイスのところとかは、ものすごくアメコミ風味だったし、驚きの無い「やっぱり感」はどうしてもあるのだけど、それは仕方ないよなぁ。だって原作コミックだし、そこは忠実にしていかないとまずいんだろうし。それ以前に私がそういうテイストが好きではないから、どう描いたとしても受け入れられないと思うけど。

あのトゥーフェイスの人、『ブラックダリア』に出てたジョシュ・ハートネットの相棒役の人だったんだね。どこかで見たことあるけど気づかなかった。そしてレイチェル役のマギー・ギレンホール。前作はケイティー・ホームズだったようだけど、これはタレ目つながりの配役と言うことでしょうか?マギーって結構癖のある映画に出ているイメージが強かったし、そういう役が合っていたので、なんかうまくいえないけど「驚き」ました。ああ、「ヒロイン役」なんだ…って。でも、周りがものすごく個性的な俳優だらけだったから、このくらい強い個性のある女優でないと無理かもしれない。ケイティーだったら、ただの「きれいな人」になってしまったかも・・・と無理やり納得しようとしてます。というか、いいのかしらわたくし、レビューがこんな終わり方で…。


とにかく。この映画、圧巻です。


おすすめ度:☆☆☆☆☆


「ダンス・レボリューション ~Honey~」

2008年08月10日 | 映画~た~
2003年 アメリカ映画

ジェシカ・アルバ主演の青春?映画です。テレビをつけたらやっていたので、なんとなく観てみました。

プロのダンサーになることを夢見ているハニー(ジェシカ・アルバ)は、ダンス教室の講師やバーテンをして生活している。ある日音楽ビデオのプロデューサー・マイケルの目にとまり、彼が手がけている有名アーティストのビデオに出演、さらに振り付けまで担当することに。これをきっかけに彼女の実力が開花し評価も得られていくが、マイケルに迫られたのを拒否したことをきっかけに業界から干される。音楽ビデオの業界での仕事はなくなり、期待していた収入元を失い、計画していたダンススタジオ設立も危ぶまれるが、彼女の実力を認める人々に助けられ・・・。


何のひねりもありません。とてもあからさまなストーリー展開なので、感動もありません。正直映像としての見せ場もありません。でもいいんです。だってこれは、「ジェシカ・アルバ」の「ジェシカ・アルバ」による、「ジェシカ・アルバ」のための映画なのだから。とりあえず、ジェシカが常にスクリーンに写っていて、彼女のダンスや抜群のスタイルを堪能できるようになっているし、それが最大の目的なんだと思います。

でもね、ジェシカ・アルバのための映画なのだけど、私の中で一番目立っていたのは、ミッシー・エリオットなのよね・・・。あ、ミッシー・エリオットは歌手ね。ヒップホップの。もちろんミッシー・エリオット役です。業界から干されてたハニーをミッシーが、「私はハニーと仕事がしたいのよっっ!」と彼女を探しだしたところで映画は終わるんだけどさ。でも、ハニーがものすごく特別な振り付け師だったかどうかは、映画では全くわかりません。いや、別にわからなくてもいいんだけどね。こういう映画だし。

いやいや、実はさ、それ以前に疑問があるのよ。去年だっけ?ジェシカ・アルバが最もセクシーな女性に選ばれたのって??でも、これといって代表作があるわけではないし、個人的には彼女が飛びぬけて美しいとかかわいいとかセクシーとか思ったこともないし。そういう対象になるアイドルが、もしかしたらアメリカでは現在少ないのかもしれないけど。まぁ、それは置いといて・・・ジェシカ・アルバって主演をはるような、そういう女優さんであるとは思えないのよ。「女優」という肩書っていうの?それがなんとなくダブついているように感じるのよね。別に好きとか嫌いとか、そういう感情も持っていないんだけど、何か納得できなくて・・・いや、いいんですけど、べつに。

それより何より、邦題の『ダンス・レボリューション』て言うのを見たら、去年くらいにあった『RIZE』とか、まぁそこまではいかないにしても、見ごたえあるダンス対決とか革命を起こすほどの激しい力強さがあるものなのかと思うわよねぇ。さらに原題は『ハニー(Honey)』。・・・・・。確かにダンスを通じた話ではあるけど、映画の中心はダンスではなく、ジェシカ・アルバなわけよ。ダンスを前面に出す必要もないし、ましてレボリューション(革命の意味)ではないと思うし。ものすごく無理やり解釈すれば、映画の中の彼女の人生においてはダンスで革命がおこったかもしれないけどさ(やっぱり納得できないけど)。いやー、紛らわしいわ。だからといって邦題が『ハニー』のままでは、間違いなくお客さんはいらないだろうけどさ。

映画は悪くはないです。中身がないだけ。何も考えずにぼーっと見ていられるから暇つぶしにもってこいです。



おすすめ度:☆☆


「ドッジボール~Dodgeball: A True Underdog Story~」

2008年04月18日 | 映画~た~
2004年 アメリカ映画

経営難のジムの経営者ピーター(ヴィンス・ヴォーン)は、何とかお金を集めなければ近所にできた最新鋭のジム「コブラ・ジム」より買収される危機に。そこで目をつけたのがドッジボール世界大会の優勝賞金。そのためにピーターと常連客たちはドッジボール修行に励むことに。


ドッジボールって、日本では誰もがやったことのあるスポーツですが、欧米ではもんのすごくマイナー。家の旦那(イギリス人)も一度もやったことがないし、見たこともないそう。イギリスのキッズは確かにみんなサッカーやってそうですけど(実際そうです)。だからこそこの映画で取り上げたんでしょうけどね。

ヴィンス・ヴォーンがお金の催促のできないお人よしには見えませんが、いいんです、コメディーだから。ベン・スティラーの小さいおっさんぶり、笑えます。もうビジュアルで笑いを取ろうとしているところが、日本のコントと一緒。ベンが出ているコメディーって、どことなく日本のコントを思い出すことがあるのですが、これもそうです。

この映画、カメオ出演者がちょっと面白い。アメリカ人やアメリカ映画をよく知る人はその辺で余計に笑えるんでしょうね。私がわかったのは2人のみ。それでも面白かったけど。ロードレーサーのランス・アームストロングとチャック・ハリス(アクション俳優)とかね。あと、『チアーズ』のパロディ場面があったりもします。

この映画の中で、ベン・スティラーは権力者の役(でも馬鹿なんだけど)なのですが、ベンは問題に巻き込まれてあたふたしている役の方が合っているような気がします。というか、アタクシはそういうベンが見たい。次回はどたばたに巻き込まれてくれるかしら・・・。


おすすめ度:☆☆★ (ベンのコメディーにしては低め評価です)

「箪笥 ~A Tale of Two Sisters~」

2008年02月03日 | 映画~た~
箪笥・・・すごいタイトルだな~、と公開当時ちょっと衝撃でした。しかもポスターは血まみれの女の子2人と正装の両親。なにがどうして、このタイトルなんだろう、と。アジアのホラー映画のタイトルって、結構直接的というか端的な表現のタイトルが多くて、私は以前『鬘(かつら』というのを見たことあります。確かに鬘に関する話なんだけどさ。

ホラー映画が苦手な友達から、「これはホラーというよりかわいそうな話」と聞いていたのですが…確かにかわいそうなんだけど、やっぱりホラーだと思います。かわいそうな要素があればホラーではなくなるというわけではないと思うし。そうなると『呪怨』や『リング』もかわいそうな話が根底にあるものね。


二人姉妹と父親と継母の関係を軸に描かれた話。

継母の登場シーンからのキレた、声を聞いているものを意味もなくイラつかせる棘のある甲高い声はものすごいです。この演技はすごい。

彼女たちが住む家もものすごくて、壁という壁がすべて花柄。これがものすごく威圧的。Su-mi(スミ・長女)の部屋なんか、強烈な花柄の壁紙にこれまた黄色ベースの強いチェックのカーテン。個性のぶつかり合いで落ちけるわけがない家。この花柄の壁には何か意味があったのかな。ただセンスがないだけではなくて、心のそこから何か意味があってほしいと思うほど強烈です。

継母からの嫌がらせを受けながら、必死で継母を恐がる妹を守ろうとする姉スミ。映画中盤までは、継母と姉妹の関係を軸にそれを浮き出すように映画は進みます。また、ところどころに映画の結末を示唆するヒントもありますが、私はそのヒントの意味に気づかず。「ん?なんで??」という不思議な矛盾が、実は鍵になっていたり。

そしてお父さんのダメダメぶりが、いらいらさせるのよね~。「この父親は!!!」と本気でむかつきます。

韓国人女性(女優)の透明感、芯の強さ、はかなげな美しさとは間逆の威圧感は本当に独特で、これはこの人たちにしか出せないなぁ、と感心する。

姉妹の演技もうまい。お姉さんのスミの、敵意むき出しの表情や、そうかと思えは妹への愛に満ちたやさしい表情。

この映画、かなり複雑で見終わった後も「え?納得できないんだけど…」という部分がかなり残ります。私は先に観ていた旦那に聞いて納得できましたが(そういう旦那も、映画を見終わった後にいろいろサイトで調べたらしい)。欧米の映画と違ってすべてを解説するのではなく、行間を読む、空気から察する、というのがこの映画には必要とされるようです。見ている観客もそれができないと消化不良。私はできなかったので(殴)、消化不良でしたが、解説をしてもらって納得。深い話です。実はそれでもわからない部分はあるのですけど(あーぁ)。例えば彼女たちが住む家自体が呪われている、というような台詞もあるのだけど、私には家というよりやはり人間関係が原因であるようにしか見えないんだよな~。

先ほど日本のサイトの映画評を見てみましたが、あまりよい評価ではありませんでした。この点数は「消化不良」が関係しているのではないかな、と思います。すばらしい内容だけに、もったいないです。実はかなり作り込まれた、秀作だと思います。



おすすめ度:☆☆☆☆