映画食い倒れ。

~映画は人生のデザートです~

個人的覚え書きのため、たまにネタばれありです。

『東京タワー』

2007年01月30日 | 
リリーさんの『東京タワー』です。ベストセラーだけど、少々乗り遅れ。いや、別にいいんですけど。

会話文が多くて、しかも福岡弁そのままの表記なのがとってもよかったです。
その時の会話が聞こえてくるような、その光景が鮮明に思い浮かぶような、だからと言ってこと細かい描写がをしているわけではないのだけど、とっても不思議な文体でした。

お母さんのこと、友達のこと。

この人の人柄なんだろうなぁ。大勢の素敵な人たちに囲まれていて。
まだ1回しか読んでいないので、また何度か読むと印象が変わるかも。
あまり「東京タワー」自体は私の印象には残らず。
「ぐるぐる、ぐるぐる」という表現が、何度も出てくるのだけど、これがいいスパイスになっていて、かつわかりやすい表現でもあり私は好き。

なぜか一番印象に残っているのは、リリーさんの原稿を取りに来た若い女の子が、お母さんが作った料理にはしもつけなくて、リリーさんが怒っているシーン。食欲旺盛の友達を呼び、「マスコミ志望のヤリマンが食べなかったから、よかったら食べて」みたいな台詞がすごくよかった。「マスコミ志望のヤリマン」って、今現在のフランキー節だなぁ、と嬉しくなってしまった。

アンダーグラウンド人種のリリーさんの現在の姿と、本に書かれている自伝的小説が同一人物とは思えなかったんだけど、その一言↑でなぜか安心した私でした。

とっても読みやすい一冊です。


お薦め度:★★★★

「マリー・アントワネット」

2007年01月22日 | 映画~ま~
ソフィア・コッポラ最新作の『マリー・アントワネット』です。映画のトレーラーのソフィアならではの色彩や、音楽の使い方、そして何より彼女の監督2作目の『ロスト・イン・トランスレーション』が大好きなので期待大で見に行ってきました。

全体の印象は、ちょっとがっかり…。常にポップな音楽が大音響で流れていて、長いミュージックビデオを見ているような錯覚に陥りました。また、ソフィアが得意とする淡くかわいらしい色使いも、あれだけ洪水のように使われると目が麻痺というか退屈してきて、最終的にぼやけた印象に。それでもやはり彼女にしか出せない色使いは独特の世界観をかもし出していましたが。

実在した人物の伝記なので、盛り込まなくてはならないエピソードが盛りだくさん。でもひとつの「物語」を描くとすると必要のないシーンも。それが伝記映画の難しさなのかもしれません。

主演のキルステン・ダンストの起用は大正解だと思わされます。オーストリアからフランスへ嫁ぎ、新しい環境に馴染む前あたりまではテンポもよく面白いです。ソフィアは心のひだのほんのわずかな「揺れ」を描くのが本当にうまいなぁ、と感心させられます。映画上14歳という設定ですが、まぁ見た目は無理があるとしても、表情やしぐさ、新しい環境に適応しようとする姿勢を見事にキルステンが演じきっているように思います。当時の14歳と現代の14歳を同じ線上で比べることは出来ないので、「もし自分だったら…」という思考をめぐらすことは到底無理ですが、歴史の残酷さをこのガールズムービーのなかに見ることができます。もうちょっと歴史を知りたくなる映画です。

途中はやや中だるみ感あり。

子供が生まれ自分のプライベート空間を与えられた時間は、それまでが色の洪水だったのがよい意味で質素になり目にも新鮮です。「パンがないならケーキを食べればいいじゃない」と言ったとか言わないとか、と歴史の時間に教えられたマリー・アントワネットはその空間にはおらず、非常に素敵な1人の女性がいます。そう考えると、ソフィアの使った色の洪水はベルサイユでのありえない日常の異常さを伝えるうえで役立っているのかも。

最後は尻切れトンボな終わり方で、「えっっ!?」と思った時にはエンドロールが流れます。これでもかっ、と出てくるケーキも、たぶん日本のケーキ職人に作らせたほうがはるかに美しいものが出来ると思います。正直、内容はあまり頭に残りません。色の洪水と鳴り止まない音楽が押し寄せる、怒涛のガールズムービーです。


お薦め度:★☆

「リトル ミス サンシャイン」

2007年01月20日 | 映画~ら~
CMを見たときから気になっていた映画です。

9ヶ月間も家族と口を聞かない長男
戦争経験のある、ヘロイン中毒のドスケベじいちゃん
一番まともかと思われるワーキング・ヘビースモーカーの母
自己啓発ビジネス書を出版したい、「勝ち組」こだわる父
ミスコン優勝を目標とする幼児体型の妹
自称「プルースト研究の第一人者」でゲイでうつ病持ちのおじ

とにかく曲者ぞろいの家族が、娘がカリフォルニアで行われるミスコンに出場することになりオンボロのフォルクスワーゲンで旅に出る。


始めは、「あーーー、期待しすぎた…」とちょっと自己嫌悪になりかけたけど、ロードムービー要素が強くなってからは面白さが徐々に加速。最後には泣いてしまった。たぶん泣く映画じゃないと思うけど。

とにかく持論の「9ステップの論理」をかざし、社会で成功することが幸せであると解く父親が本当に本当にウザイんだよね。そら長男も口聞かなくなるやろ。お母さんも売れるかどうかわからない啓蒙本を出版しようとし、その思想を家族内でもふりまく夫と一緒に暮らしてたら、タバコもすいたくなりますよ。いや、それよりよく我慢しているわ。じいちゃんはエロイけど、娘には本当にいいおじいちゃん。

私のお気に入りは息子のドウェイン。
見事な根暗チックな容姿で、しかもしゃべらない。でも筆談には応じるのだから、日本の思春期の親としゃべらない子供よりもよっぽどかわいいわ。

好きなシーンが2つ。
1つめは、旅の途中での食事でアイスクリームを注文した娘に、あほな父親が「ミスコンの優勝者はアイスクリームを食べない」と独自の成功理論を元にとくとくと説明し不安にさせるのだけど、テーブルに届けられたアイスクリームを叔父とおじいちゃん、息子のドウェインが「うまいな~、最高だよ!」といいながら食べるシーン。娘の不安を取り除く優しさが溢れてる。

もうひとつは、色盲であることがわかりパイロットの夢が潰えてしまったドウェインを妹がそっと肩を抱くシーン。口で説得するのではなく、ただとなりに座って方を抱くだけ。それでも愛情を伝えられる。しかもそのシーンのカメラ位置が素晴らしく、地面に座り込む兄妹の遠い背景にワゴン車前で待つ家族の姿が映っているの!写真にも載せたけどさ。これは映画館で見たからこその素敵な映像でした。


映画全体にアメリカ文化を皮肉った(アメリカの)自虐ギャグが盛り込まれていて、ブラックだけど面白い。最後は爆笑!「勝ち組」意識の強いお父さんとか、ミスコン審査員とか、まさにアメリカ的。

ミスコンのシーンは、ちょっと目を覆いたくなる。残虐なのではなくて、あれはロリコンを喜ばせるためのものだとつくづく思った。6歳7歳の女の子がプラスチックのバービー人形みたいに、毛穴の全くないようにメイクされて、カクテルドレスやビキニ着て、大人のモデルのように腰を振りながらキャットウォークする。それを見て感嘆のため息や歓声があがったりする。あれは異常。ついつい、10年前のジョンベネちゃん事件を思い出してしまった。

ミスコンは悪いとも思わないし、子供が「セクシー」に憧れる気持ちもわかるけど
あれは親のエゴ。しかも親が子供にそんな格好させて人前に出すんだから意味がわからん。ロリコンの変態を誘っているだけにしか見えない。それが強烈だった。

あれはやめるべきだな。


お薦め度:★★★★


「硫黄島からの手紙」

2007年01月20日 | 映画~あ~
謙さんが出ている場面は安心してみていられるわ~。
テレビシリーズの『鍵師』(室井滋と夫婦役)とかの時から、なんかテレビでは違和感があったのよね。あの眼光が鋭すぎて、茶の間向きではないような気がして。映画向きやね、あの人。

さて、映画ですが…かなり皆さん評価が高いようですが、私的にはいまいち…。
テンポがよくなかったような気がするんですけど。あと二宮君の演技も言うほど…。
いや映画関係者じゃないし専門家でもないからわかんないけどさ。

戦争中の日本軍の、世界の常識から見てみたら「異様」と思われる執着、軍隊の思想、意識とかなんかいろいろ詰め込みすぎちゃって、「要素がたくさんすぎたからこのエピソードについてはこのシーンだけ使用」みたいな感もありました。事実がちょっと婉曲されている部分もあったし。映画だから、といわれればそれまでないんだけど。

期待しすぎたのかなぁ。


お薦め度:★★