映画食い倒れ。

~映画は人生のデザートです~

個人的覚え書きのため、たまにネタばれありです。

「ザ・コーヴ ~The Cove~」

2010年10月08日 | 映画~さ~
2009年 アメリカ映画


ほぼ、というか完全に放置状態のブログになっていますが、忘れているわけじゃないんですのよ。映画も月に2~3本は見ているのだけど、どうにもこうにも感想を書く時間が…まぁ、言い訳はさておき、久々の記事です。


今年のアカデミー賞後、日本では『ザ・コーブ』というイルカ漁に関するドキュメンタリー映画の内容と上映の是否をめぐる議論が注目されていた。イギリスでは、3ヶ月ほど前にテレビで放映されて(スポンサーがホンダというのがちょっと皮肉で笑ってしまったけど)、見てみることに。

感想を端的に言うと、「予想通り」の映画。良くない意味で。確かに内容はショッキングで、これまで知らなかったことにも触れられていたけど、ドキュメンタリー映画として優れているかというと、私個人としてはそうは思わなかった。非難するべき矛先を完全に間違えているような。イルカ漁には日本のみならず諸外国の事情が絡んでいてもっと複雑な問題であるはずなのに、白か黒かの単純な善悪の概念でこの映画は作られていて、正直「この映画を作った人たち、関わった運動家たちは『日本での』捕鯨・イルカ漁をやめさせたいだけなのでは?(それでは何の解決にもならないのに)」と思えてしまうほど。「イルカを取ることは良くない。だから悪。」という幼稚園児のような思考しか見えてこなかった。どうして漁師たちがイルカ漁をすることで生計を立てられるのか。映画の中では表面的にその事実の一端を触れてはいるが、そこを掘り下げようという気は全く無いようだった。世界中のイルカショーを行っている娯楽施設が、日本からイルカを購入しているのだ。この映画からは、イルカ漁の残忍さ(これがこの映画で一番アピールしたい点だと思う)と娯楽施設でイルカショーをしているイルカたちの存在が全く結びついていない。この映画を見た人が、イルカショーを観に行くことを考え直すか・・・いや、殆どの人はそういう思考にはならないだろう。そもそもの問題はそこにあると思うのだけど。

念のために書いておくが、私はイルカ漁に賛同しているわけではない。むしろ反対だ。

日本にとっては、特にここ数年、シー・シェパードなどの過激派環境保護団体との衝突があり神経質にならざるを得ない内容で、社会問題に対して真面目に取り組 もうとする日本人気質もあり、日本国内では余計に注目が集まったのではと思う。では、イギリスではこの作品に関してどんな報道がなされたかというと・・・ ほぼスルー。取り上げるメディアはもちろんいたが、内容に対して大きく反応した記事ではなく、「こんな映画があるよ」という紹介程度だった。実際に見てみ ると、あくまで作品(映画)として見てみると、映画館での上映のために抗議するほどの作品ではないと思った。関心があるのなら、DVD鑑賞でも十分だと思 える映画。私はアカデミー賞の選定基準がわからないけど、どうしてこれが賞を取れるのかと首をかしげたくなるほど。イギリスのテレビで日頃放送されている ドキュメンタリー番組の方が、よっぽど質が高いと思う。それともノミネートされた他の作品がこれ以上にひどかったから、選ばれざるを得なかったとか・・・ と余計な事まで考えてしまう。アカデミー賞受賞作というと、ずば抜けて素晴らしい作品なんだと思い込む人もいるようだけど、すべての作品がそうであるわけ ではない。



この映画をみて、子供の頃何度か訪れた娯楽施設を思い出した。敢えて名前をかかせてもらいたい。愛知県にある南知多ビーチランドだ。ここの目玉はなんといってもイルカショー。私も子供の頃、イルカショーが大好きだった。イルカのおねえさん(調教師)になりたいと思っていたほどだ。それがある光景を目にしてその夢から覚めた。一番最後に南知多ビーチランドに行った日だ。私は小学校高学年、確か5年生だったと思う。イルカショーが行われる大きなプール以外に、園内にはイルカの体がちょうどすっぽりと収まる大きさのプール、いやプールというよりイルカ用の風呂といったほうが妥当だと思われるような水槽?があった。深さはちょうどイルカが入って背中までやっと水がかぶるくらい。すっぽりと収まる大きさのその水槽に一投のイルカが入れられていた。その水槽の名前は「タッチングプール」。来場者がそこで直にイルカに触れる様になっていた。

こんなに悲惨な光景を目にして、実際にその悲惨さに気がつく来場者がどのくらいいたのか。

イルカがすっぽりと収まるその水槽。イルカは身動きが全く取れないわけだ。泳ぐことはもちろん、人間の手に触れられることから逃げることもできない。おそらく、年をとってショーができなくなったイルカなのだろう。この光景に、なんとも言えぬ気持ちになった。当時11歳の私には的確にその気持ちを表現することはできなかったけど。その胸糞悪くなるような光景を見たのを最後に、南知多ビーチランドに行くことはなくなった。他の水族館はどうか知らないけど、こういう扱いはイルカのみならずどんアン動物に対してもして欲しく無い。南知多ビーチランドにこの「タッチングプール」が今はなくなっていることを祈るばかりだ。


話が脱線しましたが・・・

興味がある人は自分の目で確認すべき作品だと思います。ただ、観客の感情を煽るような作りなので、しっかりと自分の意見を持っていないと洗脳されるかも。


おすすめ度:★


画像は後ほど。