映画食い倒れ。

~映画は人生のデザートです~

個人的覚え書きのため、たまにネタばれありです。

「007 慰めの報酬 ~Quantum of Solace~」 

2008年11月25日 | 映画~た~
2008年 イギリス・アメリカ映画

007の最新作です。イギリスでは10月31日から公開中。ダニエル・クレイグのジェームズ・ボンド、2作目です。

実は007シリーズって今回の作品と前作の『カジノ・ロワイヤル』と2作しか見たことがありません。ピアース・ブロスナン以前は、私も小さかったので「007」を楽しめるほどではなかったし。ピアース・ブロスナンのときは、確かに人気があったけどなんというか甘いマスクの男前過ぎて、そして派手さがあって、どうも私の好みではなかったのよね・・・シリーズ見たことなかったくせに言うけど。そう、ピアース・ブロスナンが好みじゃないのよ。だから見る気が全然なかったの。


邦題は『慰めの報酬』っていうのね。たった今知りました。イギリスでは10月始めごろから、じわじわとテレビCMや関連商品、ダニエル・クレイグのトーク番組出演やプレミア試写のニュース報道で007最新作熱が高まり始め、この映画シリーズの人気が伺えました。スーパーとかで007カードとか売ってるもん。

で、人々の間では、「この最新作は前作の続き物だから、前作を見てから映画館に行ったほうがいい」といろんなところで語られておりました。ええ、前作は見ましたけど、毎度の事ながら話の内容はあんまり覚えていません。そして前作の復習をすることなく劇場に足を運んだ次第です。

感想は・・・実はよくわかりません。いろんなキャラの登場人物が出て来て、見ている間はスピード感もあるし楽しめたのは事実なんだけど、何ていったらいいんだろう。楽しんだにもかかわらず、後に何にも残らないの。感想さえも。最初から最後まで、アクション目白押し。これぞアクション映画!で、見ごたえは十分なの。殴り合いのシーンなんか、こっちが顔をしかめてしまうほど痛そうだし、すごく作りこまれているんだけど、動きが早すぎて何が起こっているのかついていけないの。いや、その激しさを楽しむわけだから、たぶん必ずしもすべての動作についていかなくてもいいんだろうけど。でもそれがほんとに最初から最後までその調子なの。飽きずに楽しめて、アクション満載で見ごたえもあるんだけど、後に何も残らない。アクションで満足しちゃうので、ストーリー展開なんかどうでもよくなっちゃうし、実際ほんとどうでもいい内容。

でもね、いいんですこれで。ジェームズ・ボンド・フィルムを観に来ている観客は、ボンドのかっこよさ、その妖艶さ、そして彼のアクションや最新の電子機器、車を見に来ているのだから。そのすべてが詰め込まれているので、たぶん満足なんです。確かにボンドが乗っていたアルファ・ロメオはかっこよかった。(たぶんというかきっと、アストン・マーチンも出てきているはずなんだけど、それにすら気づかなかった)

そう、中身がどうのこうの、ストーリー展開がどうとかいうシリーズじゃないのよね。だから私はそれなりに満足でした。

ダニエル・クレイグがボンドに決まった時、イギリス国内では不満の声が上がったと聞いているけど(今までのボンド像と異なる=ハンサムじゃない)、私個人としては悪くないと思います。まぁ、実際前回のカジノ・ロワイヤル公開後は彼の評判も良くなったんですけど。確かに、万人受けするわかりやすい男前ではないのだけど、男くささ、ポーカーフェイスに隠れた色香はすごいんです、ダニエル・クレイグ!雰囲気が色っぽいんです。それを堪能できただけで、私十分満足でございます。

そして今回のボンド・ガール、山田麻衣子さんを思い出しました。山田麻衣子さんって、テレビドラマの『青い鳥』以降見た覚えがないんですけど、元気なんでしょうか(誰目線?)。独特の存在感のある女優さんだったので、結構好きだったんですけど。また出て来てほしいわ。


日本での公開は1月24日の予定だそうです。


おすすめ度:☆☆☆★

「恋するレシピ 理想のオトコの作り方 ~Failure to Launch~」

2008年11月14日 | 映画~か~
2006年 アメリカ映画

35歳になっても両親の家を出て行こうとしない息子のトリップ(マシュー・マコノへー)。それを案じた彼の両親は「プロ」に依頼をすることに。そのプロとは、両親宅に住み続ける男性を自立させるためのプロ。ポーラ(サラ・ジェシカ・パーカー)は、ビジネスとしてこれまで何人もの男性に「恋愛感情」を抱かせ、両親からの自立を成功させてきたが、今回の相手トリップのことを本気で好きになってしまう。


なんで「恋愛感情を抱かせる」ことで両親からの自立を促すことができるのか。この状況、日本と異なるんですな。アメリカやイギリスの場合、20代半ばを過ぎても両親と一緒に生活しているというのはかなり「かっこ悪い」もので、たいていの場合親元を離れて友達とハウスシェアをする、恋人と同棲するというのが一般的。好きになった女性を自分の両親に紹介する時に、「親と同居している」というのは相手にマイナスの印象をもたれてしまうのです。だったらそうなる前に親元から出て行こう・・・という風に仕掛けるのがこのプロの役目ということらしい。本当にこういうビジネスがあるかどうかは知りませんが。

マシュー・マコノへーは、こういうノリの軽い、「いつまでも子供」チックな無邪気さのある役が一番合っているんじゃないかと思います。肉体派(魅せる専門)ではあるけど、仕事ができる男には見えないし、頼りがいもなさそうだし。『10日間で男を上手にフル方法』も面白かったけど、あの時はものすごく自信家でモテる設定だったし。今回の設定の方が好きです。

この映画、2006年のものなので、サラ・ジェシカ・パーカーがおそらく39~40歳の時に撮影されたものだと思うのだけど、魅力的なのよね。個人的には、『SEX and the CITY』のファンでもないし、SJPがきれいだとか美人だとも思ったことはないのだけど、華があるよねあの人。つい先日、新聞のおまけで『ハネムーン・イン・ベガス』のDVDがついてたんだけど、SJPが全然変わってないの。あ、ちなみにニコラス・ケイジ主演の映画ね。最後までは見てないんだけど。SJPは当時からものすごく細くて、今と変わらないの。当時も華やかさがあって。1986年だったと思うけど、20年も前の映画なのに変わらないのよ!?ものすごくお直ししているようにも見えないし。脅威ね。

この映画さ、日本キャストで撮影されるとしたら…とふと考えてみたんだけど、やっぱ無理よね。日本で一般的に女性が「魅力的」とされる年齢って20代、しかも26,27歳くらいまでじゃない?あ、これは一般の男性目線よ。私はそうは思わないけど。で、この「親元からの自立」ビジネスをしようとしたら、やっぱり仕掛ける側はこのくらいの年齢じゃないと成り立たないんじゃないか、と思うのよ。20代後半だと「結婚を焦っているので気をつける」と警戒されるし、30代過ぎると「おばさん」扱いだし。周囲からの見られかたが日本とアメリカ(この映画の場合)では全く違っているのよね。あ、ちなみにあたくし三十路よ。

気楽に楽しめるエンターテイメント映画です。余計な「笑う場面」(ここで笑え!といわんばかりの無理やりなギャグや見せ場)はあるけど、そういうのは無視してください。トリップの友人役の一人(気が強い方、名前忘れた)は、『ウェディング・クラッシャーズ』に出てましたね。ポーラのルームメイトの女性(こちらも名前忘れた)が映画前半はものすごく良い感じの「すれた」キャラで好きなんだけど、後半はなんだかやっつけ度が高くて残念。彼女が銃を購入しに来た場面でのポーラとのやり取りのテンポのよさは抜群です。この彼女、ゾーイ・デシャネルという女優さんで、『ハプニング』でマーク・ウォールバーグの奥さん役だった人なのね。全然気づかなかったわ。全くの別人よ。この人、今後要チェックね。

でも何が一番驚いたかって、サラ・ジェシカ・パーカーの声の高さ、若さ!!!声だけではいくつかわからない。20代前半くらいに聞こえます。声って重要なのね。でもこれ、日本キャストで…(くどい)、日本人女性が同じような若さのある声で話してたら、「腐った松田聖子」(「恋のから騒ぎ」ファンならわかるはず)とかって呼ばれかねないわよね。見た目とキャラと声のバランスは大切ね。あ、でもね、今ウィキペディアでゾーイ・デシャネルのところを読んだんだけど、撮影当時の彼女が26歳くらいなのよ。で、ルームメイトのポーラ(SJP)が当時39でしょ?やっぱり映画的に、SJPは「若い」というイメージを持って作られているようね。もしかしたら年齢ではなく、「イメージ先行」「魅力的な人は歳は関係ない」ということかもしれないけど。でもこの2人のルームメイトぶり、全然不自然じゃないの。良い感じのコンビなのよ。さすがSJP。どこまでも脅威です。



おすすめ度:☆☆☆

「イントゥ・ザ・ワイルド ~Into the Wild~」

2008年11月10日 | 映画~あ~
2007年 アメリカ映画

先月、知り合いから借りて観ました。

何不自由なく裕福な家庭に育ったクリス。大学を卒業した彼は、両親の期待をよそに旅に出ることを決意する。それまでの自分の人生の中では目にしたことのなかった様々な現実や社会を目の当たりにし、さらに彼は「人生の探求」を追い求めてアラスカの大自然の中へ。


クリスを演じるのは、エミール・ハーシュ。この俳優さん、この映画で初めて知りました。彼の身を削るような演技、すごいです。大自然での生活で、彼はどんどん痩せこけていくんだけど、メイクで頬に陰りを作るとかそんな程度のものではなくて、見ていて本当に「骨粗しょう症、大丈夫かしら?」と心配になるほど。『マニシスト』(未見)のDVDのパッケージにあるクリスチャン・ベールの激やせにも俳優根性を感じましたが、エミールはんもすごい。しかも、悲壮感なし。そう簡単に食料を調達できないような環境で生活しているから、やせていくのは当然なんだけど、「自分が好きで、選んでやっている」からこそ、そこに絶望感や悲壮感は漂ってないのね。

クリスの父親役をしているのが、ウィリアム・ハート。『バンテージ・ポイント』で大統領役で出ていた俳優です。ウィリアム・ハートのお父さん役、すごくいいです。彼の存在感のおかげで、クリスと両親、特に父親との人生観の対比が際立っています。

クリスが彼の年齢で人生に求めるものと、彼の両親が彼らの人生において求めてきたものとのギャップ。両親たちは「経済的な裕福さ」を求めて生きてきて、そこに価値を置いている。だからクリスが卒業式後の食事の席にボロボロの車で現れたこと、「新しい車を買ってあげる」との申し出に、なぜクリスが怒ったのかが理解できない。でもクリスが求めていたのは、お金とか経済的な「成功」ではなく、人生の探求だった。

それでも彼の生い立ちを見てみると、裕福な家庭に生まれ育って、何不自由なく生活し、大学にも通わせてもらって将来有望な青年。だからこそできる旅であるのではないかと思いました。クレジットカードを捨て、所持金の1ドル札に火をつけて一文無しの状態から旅を始めるのだけど、お金を燃やすというのは観ていて気持ちのいいものではない。募金するとかほかにもいくらでも方法はあるのに、何で燃やすかなぁ、と。それは映画の演出とかではなく、クリスがその方法を選んだのだから仕方がないけど(この映画、実話がベースです)。そう、金持ちの家庭に育ったからこその思考だし行動だと思います。まだ本格的なたびを始める前だから、その後お金がないことで困ることを想像できなかったんだろうけど。後にマクドでバイトしてみたり。そういう矛盾や滑稽さ、「こいつ、馬鹿だな」という人間の“現実味”が詰まった映画です。

クリスの「内なる自分との対話」、そして旅を通して知り合う様々な人々との交流が描かれていて、対極にあるようなこの2つがとても印象的です。特に印象に残っているのは、ロンという老人との出会い、そして2人での生活。言葉少なだけれども、心に響いてくる場面です。この映画、主人公はクリスなのだけど、それぞれの登場人物の感情のゆれが、いい塩梅で描かれていて感心します。ロンの孤独感、クリスを失いたくないという恐怖感や、クリスの両親の必死の捜索、それでも息子の居所が全くわからないという「針のむしろ」のような生活。妹の兄を思う気持ちと同時に兄と両親との間で苦悩する姿。いやみがなく、強調しすぎることもなく、しかしながら映画に深みを出すのに十分に描かれています。クリスの周囲の人々の心の揺れにも注目です。

脇役としてヴィンス・ヴォーンも出演してます。『ドッジボール』に出てた俳優ね。この映画の中のヴィンス・ヴォーン、彼の出演している映画の中で一番約にはまっているのではないか、と思います。彼の出演している映画って、『ウェディング・クラッシャーズ』とか『Mr&Mrsスミス』とか何本か観ていますが、もしこの映画で初めて彼を知ったら、たぶん彼に対する印象も違ったものになっていたのではないかと思うほど。いやー、いい配役です。


この映画、ショーン・ペンが監督をしているのですが、とても彼の色の強い作品だと思います。感動に持っていこうとか泣かせようとか、そういう作風ではなくて、
人間のおろかさ、滑稽さ、かわいらしさ、すばらしさ…そういう人生の出来事を華美に描くのではなく、ありのままを描いています。


この映画、日本で現在公開中だそうですね。大作好きな方には物足りないかもしれませんが、ちょっと考えさせられるだけでなく、大自然の美しさも堪能できるいい作品です。



おすすめ度:☆☆☆