映画食い倒れ。

~映画は人生のデザートです~

個人的覚え書きのため、たまにネタばれありです。

「ボーン・アイデンティティ」

2007年11月08日 | 映画~は~
「面白い」と噂では聞いていたのだけど、どうにも手を出す気になれなかったシリーズ。もうすぐシリーズ完結編が日本でも公開されるし、実は2作目「スプレマシー」のDVD持ってるし(旦那が。私は未見)、せっかくなら映画館で楽しみたいよな…と思っていたところで1作目がテレビに登場。

人気に納得。面白いわ。観ていて、あのドキドキ感は「ミッション・インポッシブル」に似てるな~、と。舞台がヨーロッパだし、トムちんは殺し屋ではなかったけど秘密組織の任務を遂行するところとか。

ひさびさにみたマット・デイモン。どうしても私にはジミー大西にしか見えなくて、彼の映画を敬遠していたのだけど、この映画の中で不覚にも(?)「かっこいい」と思ってしまいましたよ。一瞬だけど。

どうみても凄腕の殺し屋に見えないところが、いいのかも。街を歩いているシーンなんか見てると、旅行に来た大学生みたいな印象だし。あ、でもそうやって敵を欺いているところが凄腕暗殺者たる所以なのか?
同じく殺し屋役のクライヴ・オーウェンの存在感はものすごいもんね。マット以外なら誰よりも印象に残りました。観客に緊張感を持たせる演技はさすが。


いろいろ写真を探してみてみたら、若いね、ミャット。まだ青臭さが残る青年顔だね。アルティメイタムで来日した時の映像を『学校へ行こう』でちょっと見たけど、いい感じに貫禄ついてきたわ。いい人そうなオーラはしっかり残してたな。日本人受けするわよ、さすがね。

それにしても、映画を見ていてものすごく疑問だったことが一点。
ちょっと店に入るにも、表に泊めてある車のナンバーを全部覚えたり、店内にいる人物像をすばやく観察したりする割りに、アメリカ大使館でであった女性の車でパリに向かう途中爆睡。そら、睡眠は大事ですけど。そうだけど気許しすぎやろ。もしかしたら、出合った瞬間に信頼できる人物であるかどうかを見破っていたのかもしれないけど。

そんなことはさておき、映画として楽しめる要素十分。素直に内容を楽しみたい映画です。



お薦め度:★★★★

「めがね」

2007年11月03日 | 映画~ま~
2人の女性がそれぞれに、とある島にやってきます。1人は常連。もう1人は新参者。

静かな映画だが、同監督の前作『かもめ食堂』よりも物語はしっかりしていると思う。今回も鍵は「食事」。

この監督の映画(かもめ食堂とめがね)に共通するのは、とにかく食事…というより食べ物の映し方が抜群なこと。かもめ食堂でのシナモンロールにおむすび、めがねでの梅干や目玉焼き、焼肉、焼き鮭、折り詰めに入ったチラシ寿司・・・。
それぞれの食べ物が、意思を思っているかのように「一番美味しそうな表情」でたたずみ、それを大げさではなく淡々と、そしてその無言で食べている様子がその美味しさを表現している。役者の演技と食事たちの美味しさの最強のケミストリー。お互いを引き立てあっている。

この映画は、物語を楽しむというよりは、自分達の生活へのヒント見本市としてみたほうが楽しめるように思う。もちろん物語を楽しめればそれが一番だけど、心を打つような物語がそこにあるわけではない。だいたい、大作好きの人がこの映画を選んでみるとは思えないので、「ダラダラとした映画、つまんない」なんていう声もそれほど聞こえてはこないだろうけど。
私が一番うらやましく思ったのは、キッチン?食堂?台所?
ふぞろいのテーブルにふぞろいのいすたちが、気持ちよさそうに並べられている。半分屋外のような風の通るそこは、こんなお店があったら常連になりたいほど。


抜群の環境だけど、海の美しさや風景の美しさに映画の質を頼った作品ではない。風景はいい具合に映画のエッセンスのひとつで控えめ。

小林聡美、もたいまさこの作品は雰囲気が似ているけど、ここでいいスパイスになっている・・・のかそれ以上のゆるゆる具合を醸し出しているのが、加瀬亮。この人の演技を見るのは初めてだったのだけど、素晴らしい。演技をしているように見えない。思えない。すすっと島にたどり着いたかと思えば、ビールを美味しそうに飲んで、海老に喰らいつく。「たそがれること」の心地よさと美味しい食べ方と真正面に向かい合える人物設定を、上手く演じている。



島に着いたばかりで、のんびりと「たそがれる」ことに慣れていないたえこは、一時も時間を無駄にしたたく無いと動き回る。島に到着したときの彼女の装いは、白と黒のかっちりとした色合いに真っ赤な鞄。島の自然とはどうやっても相容れないファッションは、その時のたえこのスタンスそのもの。基本にいつも黒を入れてはいるが、たえこの変化とともに服装も変化していく。きれいな若草色のシャツやTシャツ。警戒心を持った心が解き放たれているのがわかる。


かもめ食堂しかり、めがねしかり。もたいまさこと小林聡美の「雰囲気」あってこその映画だ。誰かが演じて醸し出せるものではない。演じる以前の女優としてのスタンス(なのか、そういう性格なのか)があって初めて、この映画が成立する。

春にだけ行われる「メルシー体操」も、なんだか良くわからない動きだけど、真似したくなる。いや、実際まねした。

こういうちょっと不思議な雰囲気を醸し出す映画って、テレビではきつい。映画館でどっぷりその世界に入り、そのほかに気をそらす余裕の無い環境で見れば、「ありえない」雰囲気も受け入れることができる。テレビだと、現実社会の中で不思議な社会を覗いている気持ちになり、入り込めないから。私だけかも知れないけど。


お薦め度:★★★☆