映画食い倒れ。

~映画は人生のデザートです~

個人的覚え書きのため、たまにネタばれありです。

「チアーズ」

2007年10月27日 | 映画~た~
当時10代だったキルステン・ダンストの魅力が、一番生かされている作品。この映画ではその辺にいる普通の女の子を好演。「ザ・アメリカ人!」と拍手を送りたくなるような、日本人がイメージするアメリカのティーンそのものです。外見のよさ、スタイルのよさはもちろん普通規格外ですが。

この映画の見所はなんといっても「チア」。映画館で見るとものすごい迫力です。圧倒される。引き込まれる。その後DVDでもテレビでも何度も見たけど、とにかく圧倒的。内容は全然たいしたこと無い高校生の青春映画なのだけど、このチアのクオリティーの高さが、映画自体の評価を押し上げている。


ダンスを実際に出演者達がしているというのがまずすごい。そして驚くのが、アメリカ人がいかに、「ダンス慣れ」しているかということ。練習したからといって、誰でも彼でも人を引き込むだけのダンスが出来るようになるわけではないと思うのよね。
そりゃ、出来ない人はそもそもキャスティングされないだろうけど。

華やかさ、アピールの強さ。アメリカでしか生まれようの無いスポーツ、だと関心します。

もうひとつの見所は、出演者たち。

『父親達の星条旗』に主演したジェシー・ブラッドフォード。テレビシリーズ『トゥルーコーリング』に主演のエリザ・ドゥシュク。この2人が映画では兄妹役で出演しているのだけど、この2人の存在感は当時から抜群。大物の予感が、映画からも感じ取れます。

いわゆる「ガールズムービー」ですが、この映画の迫力は見た人にしかわかりません。純粋にチアを楽しめる映画です。



お勧め度:★★★★☆

「狐怪談」

2007年10月06日 | 映画~か~
韓国ホラー、『狐怪談』です。芸術高校の寮にある階段は通常28段。29段目が現れた時に狐に願い事をすると叶う、という噂にまつわる少女達の物語。

正直、「結局何が言いたいの?」という感想。学校に通う少女達の入り組んだ人間関係が物語の鍵になるのだけど・・・いや、鍵というか・・・何なんだろう。
ホラーなので怖がらせることが出来ればそれでもちろんいいのだけど、いったいなんだったんだ?と。

バレエ部のエースを親友に持ったジンソン。演じたい役も、親友ソヒに持って行かれてしまう。美しく屈託の無いソヒを、うらやましさを通り越し疎ましさを感じるようになっていた。それでもソヒはジンソンと仲良くしていたい。


韓国の女の子の人間関係の築き方はよくわかりませんが、この物語で一番怖いのは超常現象でも霊的な力でもなく、女の人間関係です。親友のトウシューズにガラスの破片を仕込んだり。そんなんされても親友でいたいソヒも良くわからん。「私にはあなたしかいない」という台詞がよく出てくるのだけど、ソヒはジンソンに日常生活の上で精神的に依存してる。そらジンソンにしたら、いいとこ全部持っていかれる上に依存されたらたまらんやろ。しかも疎ましく思っているところに、「あなたしかいない」と後ろから抱きつかれたら、誰でも振り払いますがな。…まさか階段から落ちてしまう、そして彼女の人生を終わらせてしまうことになるとは思わないわな。

ダイエットに成功した不思議ちゃん(名前はわかりません)のどこかにいってしまっている演技は、それはそれで恐ろしい。あの不完全さが恐ろしさを煽ります。なんか狐っぽい顔してるし、とり付かれている設定だとしたら彼女の起用は正解。顔が。

ソヒの人生を終わらせてしまったジンソンには、周囲の女子からのいじめが開始される。


とにかくジンソンが強い、精神的に。あんな状況下に置かれたら…というか置かれたというより自分が招いたものだけど…普通の人間なら精神がイカレます。そこがある意味、物語の恐ろしさとか日常を超越した世界さえも超越しているため、多分この映画を見た人のほとんどは内容にのめりこめないと思う。設定が中途半端なんよね。

それから、不思議ちゃんが手を下した女の子についてのエピソードは必要やったんか?カメラのアングルにも「なんで?」というのが多くて謎。こういう点については、文化の違い(美意識の違い)もあるかもしれないけど、私個人にはとにかく謎でした。

理解できない、もしくはしなくてもよいホラー映画という点では、日本の『呪怨』に似てる。更には怖がらせ方も似てる(特に後半)。『呪怨』のほうが、10倍怖いけどね。



お勧め度:☆

「ラベンダーの咲く庭で」

2007年10月06日 | 映画~ら~
イギリスの2大女優とドイツの若手俳優の競演作。(ネタばれあり)

2人静かに暮らす老姉妹が海岸に漂着したポーランド人青年を助けたことから、3人での不思議な共同生活が始まる。老姉妹にとって青年アンドレアは、時に息子、時に恋人。時に孫であったり、手の届かない片思いの相手にもなる。姉妹のほのかな恋心は、月並みな表現だけれど「恋愛に年齢は関係ない」と言いたくなってしまう。そこに美しい若い外国人女性が現れ…。

ポーランド人青年はヴァイオリニスト。去年だったか現地イギリスを始め世界中で騒がれた「ピアノマン」(http://x51.org/x/05/05/1711.php)をそのまま映画にしたような設定です。といってもこの映画、ピアノマンの出現の前年の作品ですが。


物語は、特に目新しい内容であるわけではなく、どちらかというとかなりベタ。それでもこの作品が素晴らしいのは、イギリスの2大女優の演技力に由るもの。妹役ジュディ・デンチ(007シリーズ、恋に落ちたシェイクスピア、ショコラ…)の見事なまでに乙女心を表現した演技は見ごたえ十分。その時々で、年齢も気持ちの揺れも、すべての面において全く表情を変えてみせる表現力には感服。若い青年に恋をする1人の少女であったかと思えば、次の瞬間には年齢差に不安や自分の恋心さえも辛いと感じる老婆に。海岸を2人で歩く時のアーシュラ(ジュディ)の、心の奥からじわじわと幸せな気持ちがにじみ出てくるような少女の表情。若い女性にアンドレアを取られてしまうかもしれない…それでも自分には何も出来ない、という年齢や立場の違いなど不可抗力にも似た苦しみを宿さなくてはならなかった彼女の「初恋」。とにかく彼女の演技力そのものが、映画の流れを完全に作り上げています。

姉役のマギー・スミスの貫禄があり、もう1人の大女優ジュディを包み込めるだけの存在感があるからこそ、「二人姉妹」の絆や暮らしの形がバランスよく描かれることに成功しています。


忘れてならないのが、アンドレア役のダニエル・ブリュール。彼の透明感と同時に芯の強さを感じさせる独特の雰囲気は唯一無二。台詞はものすごく少ないが、彼の演技力であらすじ以上にアンドレアの葛藤、苦しみ、喜び、若者の抱く夢や希望への強い憧れやそれに突き進むパワーがひしひしと伝わってきます。いろんなものをプラスするのではなく、引き算してこそ表現できる心の強さを抑えた演技で見事に観客の心をつかんでいる。彼の映画は『グッパイ・レーニン!』しか観たことが無かったのだけど、今回の映画でも控えめながらその存在感は溢れています。


若いカップルの恋物語なら、描きつくされた面白みも何も無く終わってしまう。しかしこれが女性が高齢であり純粋に彼に恋をしている・・・というだけで、物語は多面性をまし、女性の抱く不安や悩みや、自分の力ではどうすることも出来ない現実、が更に物語に深みを与え、観客に感じてもらいたいポイントを作り出している。カップルの年齢設定を変えるだけで、こんなにも静かだけれども深みが出てくるとは驚き。


恋をする女性としてアンドレアの晴れ舞台を見守るアーシュラの表情は光で満ち溢れ、そして静かな引き際は大人の女性だからこその美学を感じる静かで美しいもの。

だからこそ、アンドレアを成功へ導く(かもしれない)美外国人女性の奔放な強さはアーシュラとは全く対照的で、本気でムカつきます。



お勧め度:★★★★☆




「トレイン・スポッティング」

2007年10月02日 | 映画~た~
学生だった当時映画館に、内容も良くわからず見に行った。映画が始まって3分で、心鷲づかみにされた。どこを切り取っても、とにかくかっこいい。ものすごく安っぽい「かっこいい」という言葉。それでもそれ以外に出てこなかった。

とにかく、ユアン・マクレガー。彼に尽きる。
トレスポの中のユアンは「レントン」であり、レントンは「ユアン」。それ以外の誰でもないし、別の誰にも演じられない。

すべてのキャラクターが「キャラ立ち」しているのがとにかく魅力的だ。

そして映像が新しい。新しさの中にものすごく雑な作りもあるのだけど、CGを駆使した完全無欠(のような)映像よりも、本当に愛情を持って一つ一つのシーンを大切に作ったことがありとあらゆる場面から伝わってくる。

ヤクでヘロヘロになっていくレントン(ユアン)の視点から見た風景。絨毯とともに家の床のはざまに吸い込まれていくシーン。街中をヤクを買うお金を盗むために全力疾走するときのスピード感。完全にイってしまっているレントンの瞳孔の開いた目。
ベグビー(ロバート・カーライル)の切れっぷり。


そして忘れてならないのが、音楽。
これほどまでに、映画(映像)と音楽が相乗効果となって互いのよさを引き出しあっている作品が今までにあったのか?正に相乗効果。絶妙な選曲。しかもそれらの音楽は、映画のために作られたわけではなく、それぞれのアーティストの持ち曲そのままだ。映画音楽は、有名アーティストの音楽を選べばいいというわけではない。
一歩間違えると、映画にも音楽にもマイナスにしかならない。相乗効果どころか、お互いが独立し、何の関連性も無くなる。『プラダを着た悪魔』のように。


正直、トレスポのユアンは眩し過ぎて、スター・ウォーズに出ている彼が同一人物だということをいまだに認めたくないでいる。



お勧め度:★★★★★+α  (超越的)

「ラブ・アクチュアリー」

2007年10月01日 | 映画~ら~
この映画、大好きなんです!!!

初めてDVDで見た時は「別に…」と思ったのですが、なぜか本当はもっと面白い作品であるような気がして、その後もう一度見直してみたら・・・「面白い!!!!」。

ジャンルとしてはコメディーなのでしょうが、あからさまに爆笑を求めているという作品ではなく、「洒落」の効いた映画です。1本の映画の中にいろいろな物語が同時進行で詰め込まれています。こういう手法、10年位前じからチラホラ見られますね。

とにかく、映画を構成しているすべての物語がなんとも味があって素敵なのです。すべての物語についての素敵な部分を書きつくしたいくらい。(多少ネタばれあり↓)


クリスマスのロンドンで繰り広げられる、ちょっとした日々の出来事。
その出来事に登場する人々は、多分どこにでもいる普通の(見た目はかなり良いけど)人たち。

特に好きなエピソードは、キーラ・ナイトレイの話。彼女の結婚式は思わず拍手を送りたくなるほど幸せで、誰もが笑顔になってしまう。そしてそんな彼女に恋をした男性の愛の告白は、切ないけれども心が温かくなる。

夫の浮気を心配する普通の主婦をエマ・トンプソンが。どこまでも普通の主婦であるからこそ、心配する姿がとにかく淋しい。その女性の心のうちを、台詞はかなり少ないのだけれどさすがエマ。淡々と、それでも確実に心に響いてくる女性の気持ちを表現しています。

ポルトガル人のメイドに恋をしたコリン・ファース。 

クリスマスソングでヒットを狙う元ロックスターとマネージャー。

アメリカ人美人をゲットしようと奔走する若者。


どの物語も、ふと気持ちが温かくなります。どれも派手さは無いけれど、だからこそ心にじんわりとくる。イギリスは、派手な演出やヒーローを作らなくても、人の温かさや人となりが伝わるような映画つくりが本当に上手い。非常にバランスの取れた、何度でも観たくなる映画です。



お勧め度:★★★★★   (でも意外に好き嫌いが分かれる映画です)