吉本ばななの「海のふた」
喪失からの立ち直りシリーズ。
私の好きなラインで期待通りといった感じでした。
好きなものだけを集めてかき氷屋をやるまりちゃんの下に,
やってきた「はじめちゃん」
予想を裏切り,この子は女の子。
大好きだったおばあちゃんが亡くなって,その傷をいやすために
ひと夏をまりちゃんのお家で過ごすことになった。
そして,はじめちゃんは,まりちゃん,まりちゃんの住む町,海,かき氷,
そんな優しいものたちに囲まれて回復していく・・・そんなお話でした。
ここからは引用*********************
・・・実はそんな風に毎日のように会えることってものすごいことなのだ。
お互いがちゃんと生きていること。約束もしていないのに同じ場所にいること。・・・
実はいろんなことってそんなに確かなものじゃない・・・この世の慈悲と無慈悲のバランスは,私たちが想像するには大きすぎる。ただその中で泳いだりびっくりしたり受け入れるしか,できることがないくらいにでっかいみたいだ。
私たち人間は思い出をどんどんどんどん作って,生み出して,どんどん時間の中を泳いで行って,でもそれはものすごく真っ暗な巨大な闇にどんどんどんどん吸い込まれていくの。
私たちにはそれしかできないの。死ぬまでずっと。ただ作り続けてどんどんなくしていくことしか。
柳の木は同じように揺れ,川は流れ,海も同じようにきれいなカーブを描いて広がっている。
それでも,なにかが少しずつ失われていた。
私のかき氷屋なんて,すごくちっぽけで,役に立たなくて・・・「いいや,とにかく続けよう」・・・それしかできることがないから。無駄っぽくてもしようって。
*********************引用終わり
すべてが失われていくなかで,それでもしなやかに倒れることなく
生きて行こうとする静かな決意・・・そんな感覚がなぜかとても最近気になるのです。
執着を手放し,失われていくことを悲しまず,受け入れて,
そんな風に暮らしたいって思っている最近の私にはとても素敵な小説でした。
まりちゃんが,はじめちゃんにとっておばあちゃんがいかに大事な存在なのかを
想像する描写もよかったです。
そして,丁寧に毎日を暮らしていくこと,その大切さ。
それがリズムをつくってくれること。そんなこともすごく私には役に立つ気がしたのでした。
喪失からの立ち直りシリーズ。
私の好きなラインで期待通りといった感じでした。
好きなものだけを集めてかき氷屋をやるまりちゃんの下に,
やってきた「はじめちゃん」
予想を裏切り,この子は女の子。
大好きだったおばあちゃんが亡くなって,その傷をいやすために
ひと夏をまりちゃんのお家で過ごすことになった。
そして,はじめちゃんは,まりちゃん,まりちゃんの住む町,海,かき氷,
そんな優しいものたちに囲まれて回復していく・・・そんなお話でした。
ここからは引用*********************
・・・実はそんな風に毎日のように会えることってものすごいことなのだ。
お互いがちゃんと生きていること。約束もしていないのに同じ場所にいること。・・・
実はいろんなことってそんなに確かなものじゃない・・・この世の慈悲と無慈悲のバランスは,私たちが想像するには大きすぎる。ただその中で泳いだりびっくりしたり受け入れるしか,できることがないくらいにでっかいみたいだ。
私たち人間は思い出をどんどんどんどん作って,生み出して,どんどん時間の中を泳いで行って,でもそれはものすごく真っ暗な巨大な闇にどんどんどんどん吸い込まれていくの。
私たちにはそれしかできないの。死ぬまでずっと。ただ作り続けてどんどんなくしていくことしか。
柳の木は同じように揺れ,川は流れ,海も同じようにきれいなカーブを描いて広がっている。
それでも,なにかが少しずつ失われていた。
私のかき氷屋なんて,すごくちっぽけで,役に立たなくて・・・「いいや,とにかく続けよう」・・・それしかできることがないから。無駄っぽくてもしようって。
*********************引用終わり
すべてが失われていくなかで,それでもしなやかに倒れることなく
生きて行こうとする静かな決意・・・そんな感覚がなぜかとても最近気になるのです。
執着を手放し,失われていくことを悲しまず,受け入れて,
そんな風に暮らしたいって思っている最近の私にはとても素敵な小説でした。
まりちゃんが,はじめちゃんにとっておばあちゃんがいかに大事な存在なのかを
想像する描写もよかったです。
そして,丁寧に毎日を暮らしていくこと,その大切さ。
それがリズムをつくってくれること。そんなこともすごく私には役に立つ気がしたのでした。