ピアノ連弾 2台ピアノの世界

世界中のピアノ連弾、2台ピアノ作品を演奏しています!

4度目のバンコクでの2台ピアノのコンサート(4)~本番です~

2012-11-29 12:03:55 | 日記

 

いよいよ本番です。昨日と打って変って曇り空でかなり涼しく感じます。

タイ国在住の友人が駆けつけてくれました。

譜めくりをお願いしたYAMAHAの生徒さん。16歳でピアノ学習歴は10年とのことです。思わず「日常的に英語で生活しているの?」と訊ねたほど立派な英語を話されて、ピアニストの要望をきちんと理解してくれました。質問には「いいえ」とタイ人らしいはにかんだかわいらしい笑顔で応えてくれました。譜めくりの大役を果たしてくれて感謝しています。コップクン・マーク・クラップ。

今回の会場はこれまでのゲーテ・インスティトュートのあるルンピニー界隈と違って西洋人の居住地から少し離れているせいか、西洋人のお客様の姿より日本人とタイ人、しかも子供さん連れのお客様が目立ちました。開演時間になりました。曲目は以下の通りです。

HAPPY TUENS IN BANGKOK

ロッシーニ : 静かに、静かに (「セビリアの理髪師」より)

ベルリーニ : なつかしい景色 (「夢遊病の女」より)

ドニゼッティ : 君よ来たれ (「カテリーナ・コルナーロ」より)

ヴェルディ : 天国は開かれた (「ナブッコ」より)

R. N. C. ボクサ : クレムリン

ヘンデル : ハレルヤ・コーラス(「メサイア」より)

(以上、全て R. N. C. ボクサ編曲)
 
(休憩)
 
Thanpuying Puangroi Apaiwong: ホワイト・ロータス(タイ国で有名な楽曲です)

グレインジャー: オールウェイズ・メリー・アンド・ブライト

フォスター(モートン・グールド編曲): おおスザンナ

リチャード・ロジャース(宮尾幹成編曲): ドレミの歌

アロン・ブベルニコフ: ジョーク

マルコス・ヴァーリ(ニャタリ編曲): 一人でいることを学ばなくちゃ

ポール・モーリス: グアヤキル (エクアドル)

アン・マクデアーミ : シルバー・ムーン

アメージング・グレイス(トニー・フィーノ編曲)

アンコール
ヘンリー・マンシーニ : ムーン・リバー

HAPPY TUNES IN BANGKOK
   

G. Rossini : Piano, pianissimo (from The Barber of Seville)
V. Bellini : As I view these scenes so charming (from The Sleepwalker)
G. Donizetti : Come on, as I call you (from Caterina Cornaro)
G. Verdi : To me the firmament is clouded (from Nabucco)
R. N. C. Bochsa : The Kremlin (Medley on Russian folk songs)
G. F. Handel : Hallelujah Chorus (from Messiah)
(All pieces of the first half arranged by R. N. C. Bochsa)
 
(Intermission)

Thanpuying Puangroi Apaiwong  : White Lotus "เพลงบัวขาว" (famous folk song in Thailand)
P. Grainger : Always Merry and Bright
S. Foster (arr. M. Gould) : Oh! Susanna
R. Rodgers (arr. M. Miyao) : Do-Re-Mi
A. Bubelnikov : Joke
M. Valle (arr. R. Gnattali) : If you went away
P. Maurice : Guayaquil
Anne Macdearmid : The Silver Moon
Amazing Grace (arr. Tony Finno)

ENCOR
H. Mancini : Moon River

今回は前半はオペラの名曲を中心に、後半は世界各国の作品を集めて幅広い時代とバラエティに富んだ音楽性のプログラムを組むことが出来ました。楽譜を入手するために数年越しの時間と手間がかかった幾つかの作品がこのコンサートのために歩調を合わせたかのように今年になって全てが手元に届きました。演奏会が終わった今になって考えるとこの偶然を音楽の神様に感謝するしかありません。

前半の全ての作品の作・編曲を手掛けたR. N. C. ボクサは私たちの日本でのコンサートではこれまでにも数多く取り上げたハーピスト、作曲家、編曲家、音楽家です。昨年の「Dancing Night in Bangkok」ではシュトラウス一世のワルツ集を取り上げて、海外公演でも初の演奏披露。お客様の反応も良かったので、自然と今年のプログラムにはボクサの作品群が並ぶことになりました。ボクサはモーツァルトから各国オペラの作品を網羅してハープソロ、ハープとピアノの二重奏曲などに編曲しました。ハーピストたちには現在でも有名なボクサですが、他の楽器の演奏家には少し印象が薄いかもしれません。しかし、過去数限りなく出版されていた楽譜が続々と再発売され始めています。私たちの演奏がこの類まれなる音楽家に再び光を集めるお手伝いになれば光栄です。ボクサ研究家のフランスのハーピスト、ミシェル・フォールさんは去年に引き続きバンコクでボクサ作品を演奏することを喜んでくださっています。

Robert Nicolas-Charles Bochsa(1789~1856)

ロッシーニ、ベルリーニ、ドニゼッティ、ヴェルディの誰もが知るこの4人のイタリア人作曲家のオペラの中から、今回は選りすぐった作品を取り上げました。選曲も曲順も練りに練ったものです。人気がある有名な歌だけを並べることは避けています。「静かに、静かに」は地味な音楽に感じる方もいらっしゃるかもしれませんが「セビリヤの理髪師」のオープニングを飾るに相応しい、聴けば聴くほど味わいの出て来る作品です。ロッシーニに導かれて、引き続き演奏した彼の後輩たちである3人の作品もそれぞれの作曲家の個性に満ち溢れています。「クレムリン」は欧州各地を旅したボクサがロシアを訪れた時の思い出を込めて作られたに違いない作品です。「赤いサラファン」「夜鳴きウグイス」などロシアで生活する人なら誰でも知っている愛唱歌が散りばめられています。この名曲を今回バンコクで演奏出来たことは非常に感慨深い思いがあります。作品の音楽性を理解して、広大なロシアの世界観を演奏で表現しないと色彩あふれるメロディーが平板な一本調子になってしまいます。今回演奏した作品の中で短い時間に繰り広げられた物語の多彩さはこの作品が一番でしょう。今回の演奏をきっかけに2台ピアノのデュオのレパートリーになって、世界中で弾かれることを期待したいです。

ヘンデルの「ハレルヤ・コーラス」はあらゆる作品の中でも知らない人はいないと言える堂々たる作品の一つです。実は本番前のリハーサルを座席で聴かれていたモンゴールさんはこの曲のイントロが始まった瞬間に立ちあがり、演奏と共にしばらく「ハレルヤ」を歌い続けられました。とても嬉しい出来事でした。これらの歌曲を歌唱が伴わない状態でも、まるでピアノ自体が歌っているようにメロディーが紡ぎだされるこのボクサの作曲の手腕は唯一無二のものです。演奏家の力量が演奏に反映される素直な作風ですので、きちんと作品の音楽性を捉えた演奏が大事です。

華やかなオペラとロシアの旅と神への賛歌で前半は終了しました。後半は時代はぐっと現代に近づいて、音楽による世界旅行は続きます。

今回、バンコクでタイ国の2台ピアノ作品を演奏出来たことは非常に光栄なことです。昨年の公演のリハーサルで訪れた練習室で見つけた楽譜が女性作曲家Thanpuying Puangroi Apaiwong さんのWhite Lotus "เพลงบัวขาว" (ブア・カウ)です。タイ国では知らない人がいない情感あふれた愛唱歌を演奏し終えた瞬間に誰よりも先に拍手をされたのはタイ人のお客様だったかもしれません。オーストラリア出身のP. Grainger の「Always Merry and Bright」は昨年演奏したトリンブルの「バターミルクポイント」を彷彿とさせる楽しい作品です。小気味良い音の響きが聴く人の気持ちを浮かれさせます。

フォスターの「おお、スザンナ」とロジャースの「ドレミの歌」の2つを演奏した時の会場の熱気は最高潮に達しました。西部の荒れ地を馬に乗って駆け付ける恋するアメリカンの心情を2台のピアノで見事に表現したモートン・グールドは私たちの演奏を誉めてくださるでしょうか?ピアノを弾いているのに、ピアノの音とは違う音を出せたでしょうか?馬の蹄の地面を蹴る感じや、バンジョーをかき鳴らす様子を上手く表現出来たでしょうか?演奏後の拍手がその答えだったと信じます。続けて映画「サウンド・オブ・ミュージック」で世界中のだれもが口ずさむ「ドレミの歌」を演奏しました。この曲の楽譜をご覧になったモンゴールさんは英語の歌詞で「DO a deer a female deer~」とまたもや歌い始めました。この作品は我々の友人である宮尾幹成氏の編曲で2002年に「リチャード・ロジャース生誕100年」のコンサートで宮尾氏と共に演奏したことがあります。その時と全く変わらないお客様の喜びのこもった拍手を忘れることはないでしょう。

この後は大人のためのお洒落な曲が続きます。会場の小さなお客様には少し難しかったかもしれません。アロン・ブベルニコフ作曲の「joke」はミヨーのスカラムーシュを彷彿とさせる作品です。楽譜にもアロンさんのご令息パーヴェル・ブベルニコフさんの「午後のお茶のお伴になるデザートのような演奏を望む」との言葉が添えられています。マルコス・ヴァーリ作曲のささやくようなボサノバをブラジルの巨匠ラダメス・ニャタリが2台ピアノに編曲した「一人でいることを学ばなくちゃ」は原曲をより華やかに飾った編曲で、ネリー夫人と2台のピアノの演奏を楽しんでいらした巨匠の手腕は素晴らしいです。素敵なご夫婦であったお二人の演奏に近づけたら光栄です。フランスの女性作曲家ポール・モーリスの「グアヤキル」は組曲「コスモラーマ」の中の1曲で南米エクアドルの港湾都市「グアヤキル」の情景を描いた作品です。短い演奏時間に赤道直下の港の人々の生活の様子が目に浮かぶ楽しい作品です。続いてアイルランドの女性作曲家のアン・マクデアミの「Siver Moon」で旅の終わりが近づきます。アイルランドの民謡を織り込んでいるこの作品のフレーズはポップスの名曲でロッド・スチュアートの歌った「セイリング」に影響を与えているように感じます。この音楽の旅は奴隷運搬船の航海の無事を神に感謝したジョン・ニュートンの歌詞で有名な「アメージング・グレース」で厳かに締めくくります。21世紀になってトニー・フィーノ編曲の2台ピアノ楽譜が出版されたこの作品は、今後あらゆる2台ピアノのコンサートで弾かれていくことでしょう。

アンコールは映画「ティファニーで朝食を」の主題歌で、あらゆるジャンルの歌手が歌っている「ムーン・リバー」をお届けしました。タイ国の人々にとってはチャオプラヤー川が世界へ旅立つために超えて行くべき川になるのでしょう。

こうして、2台のピアノでお届けした旅は終わりました。おかげさまで熱い熱い拍手をいただきました。

終演後にモンゴールさんによるピアニストへのインタビュー。「このプログラムでは日本では演奏しないのですか?」との質問もありました。もちろん、日本国内だけでなく、世界中どこにでもこの音楽の旅をお届けしたいです。この素直な感想はとても嬉しく、このブログを目にした方で「コンサートを聴きたい!」と思われた方は是非そのお声をお届けください!!

 

花束贈呈。贈呈主は翌日この会場でデュオコンサートを開催されるSALLY PINKASさん。

バンコク在住の日本人ご一家に囲まれて。

モンゴール夫人と。演奏が終わったばかりなのに「次回もすぐに来てください」とおっしゃって「おお、スザンナ!」を歌い出して私たちを喜ばせてくれました。このM・グールドの2台ピアノ版「おお、スザンナ!!」には皆さん驚かれたようです。

アメリカのピアノデュオ、SALLY PINKASとEVAN HIRSCHのお二人とご一緒に。

こうして、4回目のバンコクでのコンサートは無事に終了しました。

~旅先での出会い~

25日、帰国するためホテルでモンゴールさんの出迎えを待っていました。その時、20人くらいいらっしゃる南アジア人のご家族が中庭に出られてお弁当を広げていらっしゃいました。その中で一番小さな男の子が私たちの近くのアイスクリームのケースから離れず、私たちに向かって「アイス、アイス」とほほ笑みかけます。その彼が来ていたTシャツがかわいらしかったので、ご家族に許可を得て写真を撮らせてもらいました。「江南スタイル」で世界中を席巻した韓国のpsyのTシャツです。youtubeの再生回数が現在8億回を超え世界記録を更新中です。写真ではよくわかりませんが、シャツについているボタンが光るんです。ご家族にお訊ねしたところ、スリランカからいらしたそうです。「写真を撮っていい?」と言うと笑顔がなくなって緊張気味の彼。手に持っているのは昼食よりも食べたがっていたアイスクリームです。

タイ国を訪れるようになって、世界中の人々と接する機会がこのように増えて来ました。狭い集まりの内側だけに目が向きがちな日本人的な発想から少し離れて、日本国内だけでは感じとれない世界の動きや、会話を交わすことで受ける刺激を些細なことでも逃さずきちんと身につけて、今後の音楽活動に生かして行こうと思います。

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クレメンティ=リーデル 2台のピアノのためのソナチネ ピティナのミュッセより発売中!

http://www.musse.jp/scores/detail/PTNA-010228

チェルニー 2台のピアノのための速度練習曲(40番練習曲) Op.299b (Prhythm piano scores) (Prhythm piano scores)
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