京都 洛北の時計師 修理日記

時計修理工房「ヌーベル・パスティーシュ」京都の洛北に展開する時計修理物語。
夜久野高原で営業再開しました。

時計師の夏八朔

2010-08-03 22:43:40 | 日記
ウブロの修理です。
ヨーロッパの時計の中でも、セレブ御用達時計。
スポーツアイテム。

日本に来ると誤解されるのですが、スポーツと言ってもテニス・クリケットなど水に関係しない、汗対応の時計です。

裏ぶたには6本のネジで固定されているので、裏蓋から汗が時計に入ることはない。
問題はリュウズだ。

今回もリューズからの水入り。ダイバーウオッチではないのだから、水に入ると一発で時計はさびます。

ヨーロッパのスポーツを理解しないユーザーが悪いのか?しっかり説明しない日本の販売員が悪いのか、この時計にはクレームが付きまとう。

この時計は、巻真(リューズの芯)が2倍ほどサビで膨れ上がっていた。
文字盤まで水が進行している。機械交換で10万の以上の費用負担となる。
とりあえず電池交換1000円もらった。

「時計は冬に壊れて、夏に壊れたことがわかる」

今と昔の違い。
「バーちゃんのパワー」だと思う。
だめなものはダメ。例えば、畳の襟を踏んだらびんたが飛ぶ。
家のを走ったらびんた!

立ち上がる時には右足から。母屋に入る時はしゃがんで引き戸を開ける。
入った後もしゃがんで、引き戸を閉める。
一つ間違えると「びんた!」が飛ぶ。

畳のヘリは踏まない。

子供が一番だめなことは、「芋を引く」こと。なのだ。
西日本以外では死語でしょう。

「パステー君!いも・ひいた!」こんな事で囃したてられたら屈辱なのだ。
恥ずかしくて、家に戻れない。
戻ったところで、ご飯にはありつけない。

もう一度、チャレンジすること。

相手の家に乗り込んで、そのうちのお父さんに頼みこんでもう一度、お宅の息子さんとのお手合わせをお願いするのだ。

解っているけどそれが出来ないから家の前で泣いているのです。

ばーちゃんは、泣いている孫を引き摺って、対戦相手の家に連れていくのだ。

「もう一度やれ!まけるな!勝つまで帰るな!」
九州のばーちゃんは強い。

その15年ほどの後、京都の祇園で逃げ遅れてひどい目に遭ったパステー君。
鴨川に叩き込まれた私を助けてくれたけんかの元凶の友人にひとこと。

「イモひかんかったじゃろ!」眼鏡も時計もなくなっていました。

ウブロは、基本、ヨーロッパ貴族の時計です。

貴族は戦うこと。このプライドはすごいものがあります。

また、ウブロの時計のウレタンベルトには香りの良い香料がしこまれています。
2年ほどで香りの取り換え。

人生、勝ち負けはあります。ウブロには負けたと思ったことがありました。

「九州のばーちゃんとウブロは好い臭いがします。」
だから、今回は1000円で直してしまった。










コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 京都の夏時計。 | トップ | 時計師の休日。 »
最新の画像もっと見る

コメントを投稿

日記」カテゴリの最新記事