チャイコフスキー庵 Tchaikovskian

有性生殖生物の定めなる必要死、高知能生物たるヒトのパッション(音楽・お修辞・エンタメ・苦楽・群・遺伝子)。

「最後の樋口一葉、とその理/The Last Leaf by Ohen Ry」

2009年11月26日 01時21分38秒 | 事実は小説より日記なりや?
24日は弐の酉だった。麻布十番稲荷の前では、
プチ車両通行止めにして、小規模出店が開かれる。
商店街の景品引き換え所も置かれてる。
うちの母は麻布十番商店街の加盟商店が
買い物をしたときに500円で1枚出してくれて
それが55枚、つまり27500円で1冊になる
"スタンプシール"を集めてる。私はそれを毎年
景品に引き換えにいかされる。とくに、
米があればそれにしろと言われてる。普段、
南魚沼の農家から1kg5000円のコシヒカリを
取り寄せてるくせにである。ちなみに、
5千円といえば、ワーキングホリディでやってきた
フランス国籍の無職ジャン・マチュー・リゴ容疑者(26歳)が
西麻布のクラブで偽5千円札を使用したかどで
20日に逮捕されたそうである。ときに、
5千円札といえば、去る23日は
樋口一葉の命日だった。
私の好きな作家のひとりである。それは、
たった24歳の生涯で、あそこまでの
「枯れた」物悲しさを出せた感性への驚嘆も
さることながら、なにより、
「頭痛持ち」という点で、シンバシの安呑み屋でグチってる
サラリーマン連中に対するよりもはるかに
スィンパスィーを覚える。が、さらにそれよりも、
残されてる写真の数点を綜合してみれば、
一葉はあの5千円札に採られた肖像で
一般に"イメージ"されてるのとはまったく違った
ヴィジュアル系な子なのである。
いまの東京の街を歩いてる子のような、
現代的な感じのかわいい顔をしてる。現代作家には
まず見当たらないレヴェルである。いまなら、
AKB48にも入れる。が、それはともかく、
一葉の頭痛は初潮を契機に増悪したらしい。そして、
苦労人ながらも「人生の経験不足」から
自らの体験をネタにせざるを得なかった一葉は、それを
「たけくらべ」に織り込んでるのである。
お転婆な少女だった美登利が、急に正太ら男の子と
遊ばなくなってしまう。その理由を、普通は
美登利が初潮を向かえたからだ、と解釈してる。が、
性体験をしたのだ、と唱えるむきがある。
一葉のような、曲がりなりにも
(親が御家人株を買った俄か侍)
「武家」の娘には「ウソ」は書けない。
耳年増的なことは書いただろうが、こと、
女性に関することは背伸びできなかったと、
私は確信してる。つまり、
一葉は処女のまま死んだのである。それよりもむしろ、
一葉にとっては「初潮」が「頭痛」を増悪させた、
ということが肝腎である。一葉は、
「初潮」だけでも我が身がこれほどつらくなるのだから、
「性体験」をしたらどれほどの不調をきたすようになるか、
おそらくは大きな不安が芽生えた。つまり、
「性に対する嫌悪感」である。
半井桃水に対する恋心は、性の半井陶酔に達することなく、
プラトニックなまま消え去らせざるを得なかった。
<ありし意地をばそのままに封じ込めて、
 此処しばらくの怪しの現象に、
 我を我とも思われず、
 唯何事も恥ずかしゅうのみありけるに>
という箇所だけでも、
「性体験などしてない」のは明白である。いっぽう、
「たけくらべ」というタイトルは、「伊勢物語」の
「筒井筒」から採られたそうである。となれば、
本来は「幼馴染が結ばれる」はず、である。が、
一葉は「けっして結ばれることがない遊郭」に
女性主人公を設定した。そして、
経血の赤と対照的な色(補色)である
緑(=美登利)をその名にした。そして、
破瓜をおそらく向かえないまま死ぬであろう我が身が
見えてきたのだろう。その恐怖を、
相手も僧侶という禁欲の世界に身を置くものとして、
永遠に肉体が結ばれないための方便としたのである。
じんわりと悲しい世界がそこには広がってる。
<或る霜の朝、水仙の作り花を……
 違い棚の一輪ざしに入れて、
 淋しく清き姿をめでけるが>
樋口一葉は残る時間も「感」でなく「理」で貫いた。
漢字の「理」とは「王偏のリ=オウヘンリ」である。
"Didn't you wonder why it never fluttered or moved when the wind blew?
Ah, darling, it's Behrman's masterpiece.
he painted it there the night that the last leaf fell."
(拙大意)不思議に思わなかった? 
    風が吹いたってあの葉がなぜびくともしなかったか。
    ねえ、あれってベーアマンさんの一世一代の作品だったの。
    最後の一葉が落ちてしまった寒い夜に
    弱った体をおして肺炎になるのもいとわずに
    あなたのために描いた絵の葉っぱだったのよ。

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