日々の記録

ほどよく書いてきます。

ICP-OES

2024年09月29日 16時16分56秒 | その他雑記

ICP-OES導入に関わったので、いくつかメモを残しておく。

ICP-OESはアルゴンプラズマに霧状にした液体(測定対象サンプルを含む)を導入し、炎色反応を見る装置。濃度と発光強度に相関がある(多くの場合ではリニア)ので、ここから濃度を算出するものである。

【原子吸光】
ICP発光よりも安価な装置にフレーム原子吸光というものがある。炎の中にやはり霧状にしたサンプルを入れ、炎の中に導入し、原子化し、そこに測定対象元素の光を入れて光の吸収を見るもの。こちらは分光器が必要ないので、装置そのものが安価らしい。水銀計測は水銀ランプ光源で良いので、あまり特殊な光源が必要ないというメリットがあるかも。

ホロカソードランプ(Hollow Cathode Lamp)という重水素ランプにちょっと測定対象元素を添加すると、元素の発光が得られる(例えばナトリウムなら黄色の単色光が得られる、非常に波長選択性の高い光が)。これを炎に通すと炎の中の原子が吸収、減光するのでその減光具合から濃度が分かるというものである。対象元素の数だけホロカソードランプが必要という欠点があるものの、対象元素が少ない場合は安価に測定できる。

最近はグラファイトファーネスの固体原子吸光なるものも出てきているが、これは噴霧系じゃないのでまた別かなあ。

 

【ICP-OES】
世界最大手はPerkiElmerのようだがAgilentもなかなか強いかもしれない。他にもThermoFisherやSPECTRO, AnalytikJena、日本では島津製作所、堀場製作所、日立ハイテク(もともとSIIかな)なども作っている。日本法人はそれほど規模が大きくなく、Agilentのほうが規模が大きい。なので、日本で買うならアジレントでいいような気がする。アジレントはHPが充実していて、初心者からある程度理解できるようなページになっている。
ちなみに、PerkinElmerの装置を導入しました。

ICP-OESはおおよそ180nm〜800nmくらいの波長の光を分光器でわけ、波長を0.001nm刻みくらいで測定して、原子発光の輝線を分ける。

分光器(と検出器の組み合わせ)により、マルチとシーケンシャルに分かれる。

・シーケンシャル:
分光器や検出器を動かしながら(通常は分光器が動く)で波長スキャンをかけながら発光強度を得ていくもの。全波長スキャンするのには時間がかかるが、分光器と検出器がやや安価なので、装置が安い(島津製作所 ICPS-8100、日立PS3500DDII,堀場Ultima Expartなど)
昔はフォトマルチプライヤーで検出していたが、最近はCCDアレイやCMOSアレイで検出するので波長スキャンしないものも出てきている(PerkinElmer Avio220Max)
大型の分光器を搭載しやすいので、波長分解能に優れる(とされてきた)。

・マルチ:
特殊な分光器を搭載し、分光された光を折り返し、二次元にすることで、全波長帯を一度の撮影で得るタイプ。
https://scied.ucar.edu/image/sun-spectrum

ちょっと分光器と検出器が特殊なのでやや高くなるが、メリットは測定時間の短縮化。元素が増えても測定時間は一定なので、数こなしていくならこちらこちら。ほとんどのメーカーがマルチタイプを販売している。

かつてはシーケンシャルタイプのほうが分解能が高く、ここがメリットとも言われていたが近年のマルチは特に問題なく波長分解できるので、よっぽど特殊な組み合わせで無い限りは大型分光器は必要なさそう。

・その他:
SPECTRO ARCOSは面白い形式で、分光した先に多数の検出器を並べておくというスタイル。XRFにも同じ原理の装置がある。測定時間短時間化がメリットだが、マルチタイプに勝るメリットがあるかというと感度、かな。

 

 

アジレントのよいところ、オプションのSKDを購入すると、装置の制御がほぼすべて外部から可能なので、測定システムを作るときには都合が良い。

パーキンの良いところ、Avio220は完全停電からの復帰が早くて良い。

 

また書く。

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3 コメント

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Unknown (フラウンホーファー線)
2024-09-30 12:41:57
以前勤めていた会社にも安価な分析機がありました
炎の中に測定物を溶かした溶剤を霧状に吹きかけて吸収波長から分析するんでしたっけ
太陽や遠方の恒星の光を分析すると恒星の表面物質がわかるのがすごいですね
ビッグバン直後の超遠方には水素とヘリウムだけのファーストスターがあるのではないかと言われていたのですが、最近の観測で予想以上に重い元素が多いらしいことがわかって、宇宙年齢がもっと古いとか、いろいろな論議がされているとか
ブラックマターとかブラックエネルギーとかの発見で、今までの宇宙論がひっくり返っているので、宇宙論が面白いです🤩
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Unknown (ダークマター)
2024-09-30 12:49:06
ちゃうちゃう
ダークマター、ダークエネルギーです
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Unknown (アトラス彗星)
2024-10-14 18:46:16
アトラス彗星(C2023 a3)が日没直後に西の空に明るく見えています

小型の双眼鏡でも、ほうき星のダストが彗星本体から上方に長く伸びているのが明るく見えます

現在3等級なので、位置がわかれば肉眼でもはっきりと見えました
今週中は日没後に良く見えると思います

これだけ明るい彗星は久しぶりです
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