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著書『芸術家たちの生涯』
『ほんとうのこと』
『ねむりの町』ほか

7月30日・シュワルツェネッガーの説得

2024-07-30 | 映画
7月30日は、「自動車王」ヘンリー・フォードが生まれた日(1863年)だが、肉体派映画俳優、アーノルド・シュワルツェネッガーの誕生日でもある。

アーノルド・アロイス・シュワルツェネッガーは、1947年、オーストリアのシュタイアーマルク州タール・バイ・グラーツで生まれた。デヴィッド・ボウイや北野たけしと同じ年の生まれ、第二次世界大戦後に生まれた団塊の世代である。
アーノルドの父親は警官で、戦時中は陸軍の憲兵隊員で、ナチス党員だった。
しつけのきびしい両親のもとで育ったアーノルドは、少年時代からサッカーほかのスポーツにいそしみ、ボティビルディングもしていた。一面、アーノルド少年は、映画館によく通う映画好きの少年でもあった。
アーノルドは、18歳になると、当時すべてのオーストリアのその年齢の男子すべてに義務づけられていた一年間の兵役についた。その兵役期間中に兵舎を抜け出し、ボディビルのヨーロッパ大会に出場して優勝するという快挙を成し遂げ、おかげで軍刑務所に一週間服役するという経歴を作った。
アーノルド・シュワルツェネッガーは、退役後もボディビルの経歴を積み、21歳のとき、ついに大西洋を渡って米国入りを果たした。
当時の彼は英語をすこししか話せなかったが、米国でもウェイトトレーニングを続け、ボディビル関係者や、ビリー・グラハムなど著名なプロレスラーとも友人になった。
ボディビルダーとして23歳のとき、最年少優勝の記録を打ち立てた彼は、映画「SF超人ヘラクレス」のヘラクレス役としてデビューを果たした。しかし、映画俳優としては奇妙な印象を放つその肉体、長い名前、おかしな英語のアクセントなどもあいまって、映画関係者に敬遠され、なかなかよい役に恵まれず、不遇な役者生活を送った。
下積み時代の後、35歳のとき、映画「コナン・ザ・グレート」で主役を演じ、ようやく注目を集めた。翌年36歳で、SF映画「ターミネーター」で悪役のアンドロイド役を演じ、アクションスターとしての評価を確立した。以後、「コマンドー」「プレデター」「トータル・リコール」「ターミネーター2」「トゥルーライズ」「コラテラル・ダメージ」「ターミネーター3」などヒット作に主演。観客動員力のあるスター俳優として、ばく大な製作費を投じた映画に、ばく大な出演料で出演したシュワルツェネッガーは、39歳のときに、ジョン・F・ケネディ元大統領の姪であるテレビ局記者と結婚し、56歳でカリフォルニア州知事選挙へ出馬し、当選。再選も果たし、政治家としても活躍した。

映画中、シュワルツェネッガーが飛んでいる飛行機からパラシュートなしで飛び降りて、骨折もせずに着地し、すぐに走りだし、大きすぎるからだが小さなスポーツカーの座席におさまりそうもないので、運転席のシートを怪力でひきはがし、空いたスペースにすわってハンドルを握り、クルマをスタートさせるなど、信じられないような展開がつぎつぎと出てくる。これが007シリーズだったら許されないけれど、シュワルツェネッガーだと「これだけのからだだったら、あるだろう」とつい納得させられてしまう。同じ人間とは思われない頑強な肉体によって、超人的な活躍を現実にあり得ると観客を強引に説得してしまう肉体のリアリズム。これをスクリーンに存分に展開し、新しい映画のヒーロー像を打ち立てた。それが、アーノルド・シュワルツェネッガーという俳優である。
(2024年7月30日)



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