1日1話・話題の燃料

これを読めば今日の話題は準備OK。
著書『芸術家たちの生涯』
『ほんとうのこと』
『ねむりの町』ほか

2014衆院選・なぜいま選挙か?

2014-12-04 | 日本の未来を憂う
先日の続きで、今回の衆院選について書きます。

経済政策は途中でまだ評価を下す段階ではないと言いながら、経済政策を国民に審査してもらうのだと、矛盾した理由で衆議院を解散した安倍政権。つまり、消費税やアベノミクスなど経済政策が争点だというのはウソなわけですが、では、ほんとうは、なぜこのタイミングで、莫大な税金を注ぎ込んで、選挙に突入したのでしょうか?
これはいろいろな推測があると思いますが、自分はずばり特定秘密保護法が施行されるからだと考えています。

特定秘密保護法は、日本の防衛に関する秘密にするべき情報を漏らした者を取り締まれる法律で、政府や役所が、
「これは安全保障に関連する特定秘密だ」
と言い張れば、情報を開示する必要がありません。
誰かが逮捕されて、刑務所のなかに入ったきりになっても、その検挙理由が特定秘密に触れるからと言われれば、なんで捕まったかわからないまま、延々と拘留されつづけることになります。行政側はねらった標的をかんたんに社会から抹殺できます。秘密保護法は、治安維持法を名前の体裁だけよくしたものだと自分は解釈しています。

この法案が国会を通過し、公布されたのが昨年2013年12月13日。1年以内に施行される決まりで、1年の期限ぎりぎりの、今年2014年12月10日に施行されます。
なぜここまで施行を延ばしたのか、というと、ほとぼりを冷ますためだと思います。
秘密保護法は、明らかに国民の知る権利をつぶし、言論弾圧を強める法律ですから、この法案が通ったときは、あちこちで熱い批判がありました。でも、日本人は熱しやすく冷めやすい国民性のせいか、1年もたつと、もう冷めてしまっているみたいです。日本人の記憶力はニワトリ並みかもしれません。

でも、いざこの法律が実際に適用されだすと、きっと国民は震え上がると思います。
治安維持法のときは『死霊』の作家・埴谷雄高なども、左翼系の本を自宅にもっていたというだけで長いこと刑務所に入れられていました。そういう時代が復活するわけで、こうした体制批判的なブログを書いている自分もあぶないかもしれません。
だから、秘密保護法の運用がはじまり、国民が恐怖の底に落とされる前に、なるたけ長い国会議員の任期を確保しておきたい。それで、新たに選挙をして4年の任期を得ようとしたのだと思います。
過半数をとったあかつきには、新・安倍政権はつぎの4年のあいだに、反対分子を徹底的に社会から排除し、言論を圧殺し、世論を誘導していくでしょう。そして、憲法を改正して戦争を可能にし、軍国主義へ突き進む、というのが、あってほしくない想像ですが、あり得る日本の近未来図だと思います。空母の建造とか、核弾頭付きのミサイルの開発とか、そういったことをはじめるかもしれません。

12月10日、秘密保護法が施行。
12月14日、衆議院選挙。
このタイミング、怖いと思います。
だから、今回の選挙の争点は「秘密保護法の廃案」でなくてはならないと思うのです。
また近日中に続きを書きます。
(2014年12月4日)


●おすすめの電子書籍!

『誇りに思う日本人たち』(ぱぴろう)
誇るべき日本人三〇人をとり上げ、その劇的な生きざまを紹介する人物伝集。松前重義、緒方貞子、平塚らいてう、是川銀蔵、住井すゑ、升田幸三、水木しげる、北原怜子、田原総一朗、小澤征爾、鎌田慧、島岡強などなど、戦前から現代までに活躍した、あるいは活躍中の日本人の人生、パーソナリティを見つめ、日本人の美点に迫る。すごい日本人たちがいた。


●電子書籍は明鏡舎。
http://www.meikyosha.com

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

12月4日・カーライルのことば

2014-12-04 | 思想
12月4日は、リルケが生まれた日(1875年)だが、歴史学者カーライルの誕生日でもある。

トーマス・カーライルは、1795年、英国スコットランドのダムフリースで生まれた。
カルヴァン派だった両親の影響を受けたトーマスは、エディンバラ大学に進み、卒業後は高校で数学の教師をした後、25歳のころにエディンバラ大学へもどった。
26歳のころから著述に力を入れだし『英雄崇拝論』『フランス革命史』『オリバー・クロムウェル』『衣装哲学』などを書いた。
ドイツ観念論の研究者で、ゲーテの『ヴィルヘルム・マイスターの修業時代』を英訳して英国に紹介し、ゲーテと直接書簡をやりとりした。彼は生涯を通じて胃炎、胃潰瘍など胃の病気に苦しみ、そのために不機嫌で、人当たりが悪く、攻撃的だったと言われる。
70歳からエディンバラ大学の学長を努めた後、1881年2月、ロンドンで没した。85歳だった。カーライルの最期のことばはこうだった。
「そう、これが死だ。おやおや。(So, this is death. Well!)」

カーライルは、世界に先駆けて産業革命が進行していた時代の英国に生まれた。
そして彼が10歳のとき、抜群の生産力を背にした英国海軍が、仏ナポレオン軍をトラファルガーの海戦で破った。そして63歳のとき、英国はムガール帝国を滅亡させ、インドを完全に直接統治下においた。カーライルは、世界に植民地をもち「太陽の沈まぬ国」と言われたヴィクトリア朝・大英帝国を代表する知識人だった。

小学生のころ自分は夏目漱石の『吾輩は猫である』を読みカーライルのことを知った。
「気の毒ながらうちの主人などは到底これを反駁(はんばく)するほどの頭脳も学問もないのである。しかし自分が胃病で苦しんでいる際だから、何とかかんとか弁解をして自己の面目を保とうと思った者と見えて、『君の説は面白いが、あのカーライルは胃弱だったぜ』とあたかもカーライルが胃弱だから自分の胃弱も名誉であると云ったような、見当違いの挨拶をした。すると友人は「カーライルが胃弱だって、胃弱の病人が必ずカーライルにはなれないさ」と極め付けたので主人は黙然としていた。」(夏目漱石『吾輩は猫である』青空文庫 http://www.aozora.gr.jp/)

カーライルは経済学を「陰気な学問」と呼んで嫌い、経済学者が唱える政策が国を悪い方向へ導き、しかも誤った責任をとらないのだから、経済学者は選挙によって選ばれるべきだと訴えた。

「この国民にしてこの政府あり」
「世界の歴史は英雄によって作られる」
の名言で知られるカーライルは、こんなことも言っている。
「人間がまずなすべき義務は恐怖心に打ち勝つことである。そこから抜け出さないうちは行動することができない。(The first duty of man is to conquer fear; he must get rid of it, he cannot act till then.)」(Brainy Quote: http://www.brainyquote.com/)
これはゲーテやルーズベルトとも通じる、人類が獲得した叡知のひとつだと思う。
(2014年12月4日)



●おすすめの電子書籍!

『わたしにそれを言わせないで(五) 秘書の部屋』(香川なほこ)
女子高生・赤池美奈は、アルバイト先の上司の社長秘書、鈴木由季子と夕食をともにする。食後、由季子のマンションへ招かれ、そこで性にまつわる由季子の思い出話を聞かされるが、そのときインターホンが鳴った。帰ろうとする美奈を、由季子はとどめ、彼女を寝室のクローゼットのなかに隠す。クローゼットのなかから美奈が目にした光景とは……。真実の愛を求めて悩む若い魂の遍歴を描く青春官能小説。


コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする