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著書『芸術家たちの生涯』
『ほんとうのこと』
『ねむりの町』ほか

12月18日・トムソンの実験と電子

2014-12-18 | 科学
12月18日は、ザ・ローリング・ストーンズのギタリスト、キース・リチャーズが生まれた日(1943年)だが、物理学者ジョセフ・ジョン・トムソンの誕生日でもある。電子を発見した人である。

ジョセフ・ジョン・トムソンは、1856年、英国イングランドのマンチェスターで生まれた。父親は古書店の経営者だった。ジョゼフは2人兄弟の兄だった。
小さいころから頭脳優秀で科学に興味を示したジョゼフは、オーエンズ・カレッジ、ケンブリッジ大学と進み、28歳の年にケンブリッジ大学の物理学教授となった。
41歳のとき、トムソンは、真空管に工夫を凝らして真空放電の実験をおこなった。
真空管のなかの電極に強い電圧をかけると真空放電が起き、陰極から陰極線が放射される。陰極線は管の反対側にぶつかり、ガラスには陰極線が当たると光るように燐光物質が塗ってあるので、真空管は美しく光る。
この真空管の途中に、トムソンは電場や、磁場をこしらえて実験をおこなった。
すると、電場や、磁場を通過した陰極線は曲がって進むことがわかった。電場や磁場を設けると、陰極線がぶつかる反対側のガラスの光る位置がずれるのだった。
この結果により、陰極線が負の電荷を帯びた質量のある粒子であるという確証が得られた。
それまで、物質の最小単位は原子であって、それ以上細かく分割することはできないと考えられていたが、ここに原子よりもさらに小さい、電荷を帯びた「電子」が発見されたのだった。
トムソンはさらに実験を重ねて、電子の質量が、原子のうちでもっとも軽い原子である水素原子の約2000分の1であると計算した。
トムソンは、50歳のとき、ノーベル物理学賞を受賞し、ナイトの称号を受け、トリニティ・カレッジの学長を務めた後、1940年8月にケンブスリッジで没した。

トムソンは指導者としても優秀で、彼の研究室からはノーベル賞受賞者が続出している。物理学教授の職を継いだ弟子のアーネスト・ラザフォードをはじめとする、なんとトムソンの7人の教え子がノーベル賞を受賞した。さらに、トムソンの息子ジョージ・パジェット・トムソンも電子の波動性の証明でノーベル物理学賞を受賞している。

高校生のとき、自分は物理の授業で先生からトムソンのことを教わった。古代ギリシアの哲学者デモクリトスが言った、それ以上分けられない「原子」という概念に、科学的なアプローチが加えられるようになったのは、トムソンからである、と。
それから原子物理学は、永岡半太郎、ラザフォード、湯川秀樹……と発展していく

トムソンの実験を思いだすたび、やっぱり人間、工夫が肝心だなあ、と思う。
(2014年12月18日)



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