
大正期の
「民衆派」の
文学作品は、
搾取や戦争といったテーマを
自由主義的な観点から歌った。
福田正夫も
その流れに属する。
シベリア出兵のため、
出発する若者たちに
捧げられた詩を
次に
示す。
‥‥‥
一つの列車が、
わっと魂ぎるやうに万歳をわめきながら、
シベリア出征の兵士をのせて、
通過していく疑問ーー。
窓から争ふやうにふるハンケチ、
沿道の人々は呆然として見送る、
ひとりの老いた車夫だけが、
万歳と叫んだ、帽子を振った。
私の魂はまず驚く、
何といふ悲壮だ、
まるでやけのやうに呼ばるる彼らの叫喚、
死ににいくのだ、死にに行くのだ、
なんといふ国民的の悲劇だ。
私は自ら流れてくる感激に、
思はずも壮然として粟立ち、
ついで来たものは満眼の涙であった。
ああ卿等よ、私は万歳を叫ぶにはあまりに凡てを知りすぎてゐる。
許せ、私は涙をもって卿等を送る。
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