goo blog サービス終了のお知らせ 

いい日旅立ち

日常のふとした気づき、温かいエピソードの紹介に努めます。

つじどう会~6月分詠草②~

2019-06-06 22:39:54 | 短歌


短歌サークルで批評の対象になった歌です。
それぞれに、
深い体験が隠されています。

……

記憶力弱りし吾にふと湧きし並べる数字は今は亡き子の携帯の番号

「円タク」とう昭和の名詞浮かび来て父母恋しあの日もこの日も

消息の掴めぬ友を捜しいてすべてに足枷「個人情報保護」が

雅子さま頭上に輝く「皇后の第一ティアラ」令和の初日

「子どもの日」団地の空に鯉のぼり令和の御代に継ぎたる行事

平成・令和につづく十連休「みどりの日」午後 突然雷雨



























「かきつばた」の歌~技巧を凝らして~在原野業平

2019-06-05 21:25:05 | 短歌

唐衣きつつなれにしつましあればはるばるきぬる旅をしぞおもふ

分かち書きすると、

唐衣
きつつなれにし
つましあれ
ば はるばるきぬる
たびをしぞおもふ

古今集に採られた歌だが、
伊勢物語第9段に出てくるので有名である。
当時の短歌手法を、ふんだんに使っている。
各行の先頭を並べると「かきつばた」になるという趣向である。

「唐衣」は「着る」の枕言葉である。
「唐ころもきつつなれにし」は、
「つま」を引き出す序言葉になっている。
さらに「つま」は着物の「褄」(裾の端の部分)と
「つま」を掛けた掛け言葉である。
同様に、
「つま」は、着物の「褄」(裾の端の部分)と「妻」をかけた掛け言葉である。
同様に、「なれ」は「馴れ」の、
「はるばる」は「張る張る」と「遙々」の,掛け言葉である。
さらに「唐衣」「着つつ」「熟れ」「張る」が着物にかかわる
「縁語」である。

そして、2つのことを、
同時に歌っている。

<衣を着古したので裾を張って整えている>
<慣れ親しんだ妻をおいて出てきてしまったこの旅が悲しく思われる>

これだけ手が込んでいるのが、
当時の貴族たちには、戦いの手段として、極めて重要であった。







iris(カキツバタ)と業平とピーター・マクミラン

2019-06-05 17:25:55 | 短歌


今は、短歌が英訳されることも多い。
このブログでも、俵万智さんの短歌の英訳を載せたことがある。
詩人で翻訳家のピーター・マクミランさんが、
在原業平の次の歌を
英訳した。

……

からころも着つつなれにし妻しあればはるばるきぬる旅をしぞ思ふ

現代語訳
<着なれた衣のようになれしたしんだ妻をおいてきているので、はるかとおくに遠くに来てしまったこの旅を思うよ>

これは折句で、各語の頭をならべると「かきつばた」となる。
マクミランさんは、これを英訳するとき、「折句」を英訳でどう生かそうかと心を砕いたそうだ。

結局、次のように訳した。

In these familiar lovely robes I'm
Reminded  of the beloved wife
I have left behind, stretching far-
Sadness, the hem of journeys.

これで、各行の頭を並べると、iris(カキツバタ=アイリスの花)となるので、
安心したとのこと。

この歌は、「伊勢物語」第9段にある。

詳しく説明するときりがないが、
この歌は、
枕詞
序詞
縁語
等の技法を駆使し、複雑な意味と内容を持つ。

当時の日本語の粋を集めた傑作である。

なお、この記事は、朝日新聞に載ったものに、
解説を加えた文章である。































































三田和美短歌集④

2019-06-03 20:13:43 | 短歌


三田和美君は、ほんとうに真面目な人で、
210人いた高校のクラスメートの中で3本の指に入るくらいだったと思う。
宗教家の道を歩み、期待されたけれども、
早逝した。
直前まで彼と対話していた友人から、
三田君の短歌集の公開の依頼があった。
今日は、第4回、
5首挙げてみる。

……

我が心 うそのかたまり 御仏の 慈悲のぬくもり しみわたりゆく。

父母の 慈愛に育て られし子の 御仏の慈悲 自ら知る。

青く深き 秋空の中 輝ける 太陽に今 手を合わせゐる。

仏法も 愛欲名利の 手立てにと なさんとするが 我が心なり。

いたずらに 暮らしをれども 知ろしめす  ただそのままがお目当ての機。
























三田和美短歌集③

2019-06-02 21:44:21 | 短歌


三田和美君は、真面目な人で、
悪口を言う人は聞いたことがない。
高校時代、運動会で全校が、紅組、白組に分かれて戦った。
三田君は、紅組応援団長で、
本気かどうかわからないが、
「負けたらモヒカン刈りになる」と宣言した。
ところが、結果は、白組の勝ち。
イタズラ坊主が、ほんとうにモヒカン刈りにしてしまった。
大学は、東大に入りたかったらしいが、
結局別の大学に入る。
卒業後は、僧侶となり、
早逝したが、短歌集を残した。
今日は、5首紹介する。

……

この胸に 宿り給える 御仏の お慈悲喜ぶ 吾は幸福。

全て吾が かつて造りし 業なりと 念仏しつつ 幸福にゐる。

ご信心 得たるも得ぬも なかりけり 六字の中に 住まふうれしさ。

ナモアミダ 摂取の光に 照らされて 罪とがまでも よろこびとなる。

父母の 心痛めし 病さへ よろこびの因 御恩のひかり。






































三田和美短歌集③

2019-06-02 21:44:21 | 短歌


三田和美君は、真面目な人で、
悪口を言う人は聞いたことがない。
高校時代、運動会で全校が、紅組、白組に分かれて戦った。
三田君は、紅組応援団長で、
本気かどうかわからないが、
「負けたらモヒカン刈りになる」と宣言した。
ところが、結果は、白組の勝ち。
イタズラ坊主が、ほんとうにモヒカン刈りにしてしまった。
大学は、東大に入りたかったらしいが、
結局別の大学に入る。
卒業後は、僧侶となり、
早逝したが、短歌集を残した。
今日は、5首紹介する。

……

この胸に 宿り給える 御仏の お慈悲喜ぶ 吾は幸福。

全て吾が かつて造りし 業なりと 念仏しつつ 幸福にゐる。

ご信心 得たるも得ぬも なかりけり 六字の中に 住まふうれしさ。

ナモアミダ 摂取の光に 照らされて 罪とがまでも よろこびとなる。

父母の 心痛めし 病さへ よろこびの因 御恩のひかり。






































高校生石名萌さん、「~家族を歌う~河野裕子賞」を受章

2019-05-31 16:56:21 | 短歌


わたしの敬愛する河野裕子さんを記念する
「~家族の歌~河野裕子賞(青春の歌部門)」を、高校生の
石名萌さん(16)が受賞した。
現代国語の時間に初めて作った歌が、受賞したという。

……

干からびたカエルをよけてすすみゆくばいばい、わたしは夏をのりきる

……

青春の夏のひととき、ちょっとコミカルで
軽い気分を象徴する佳作である。
俵万智の作品を思い出す方も多いだろう。

石名さんは、県立鳥取東高校の生徒。
指導したのは、
教諭で、歌人でもある萩原伸さん(48)。

13256首のなかから、選ばれた。














三田和美短歌集②

2019-05-30 20:18:47 | 短歌


クラスメートだった三田和美君は、
熱心な勉強家だった。
宗教にも深い関心を持っていたと聞く。
大学卒業後は、
仏教の僧侶となり、修行を積んだ。
優れた師匠についていたのだが、
残念ながら病気がちで、
早逝した。
彼の短歌集が残っている。
いくつか、紹介してみる。

……

しあはせを 胸に賜り 悲しきも 苦しきもまた 受けてゆくべし。

南無南無の この二文字に 後生かけ 命をかけて 生きてゆきけり。

決定の 信とはいへど 心には 確かをにぎる ことなかりけり。

ナモアミダ 弥陀と私は 縁つづき 摂取の糸に からみとられて。






























三田和美短歌集①

2019-05-29 20:55:23 | 短歌


私は、仏教の深い信仰者、というわけではないが、
高校のクラスメートが僧侶となり、
善き師に恵まれながら、
若くして病気で死んだ。
彼は、115首の短歌集(非売品)を残した。

友人から託されて、その歌集を持っている。
友人から、彼(三田和美君)の作品を広く知ってもらいたい、
という依頼があった。
長い間病に苦しみながら、
道を極めようとした三田和美君の和歌を紹介していく。
……

さわりなき道にてあればさわりすら悦びとなる眼力の中。

慈悲の親たのめばかなふと祈りしは昔のことぞたまはりし身は。

師の言葉に留め置かれしこころをばたどりてぞ読む確かめる味。
































与謝野晶子の短歌⑩~ワーキングマザー~

2019-05-27 18:56:22 | 短歌


与謝野晶子は、歌を詠ったり評論活動をするかたわら、
11人の子ともを持つワーキングマザーであった。
平塚らいてうや山川菊枝等が、育児は社会的、国家的な支援をするべきだ
と訴えたのに異を唱え、
ワーキングマザーとして、
一時的な育児休業はやむをえないとしても、
母性だけでなく、
男女が同じように家庭や社会にかかわるべきだとし、
「父性保護」を主張した。
論争は、かならずしもかみ合ったものとはいえないが、
次のような歌を残している。

……

男をば罵る彼ら子を産まず命を賭けず暇あるかな












わが短歌~最近の7首~

2019-05-21 18:24:37 | 短歌

早逝の兄の面影しのびつつ孫のしぐさに彼を見るてふあによめの言

「あいちゃん」とリアルの人に加ゑるにフェイスブックに「あいちゃん」ひとり

老いのゆえ受け入れられぬ友ありて助け舟さへだせぬわれをさいなむ

赦したし障がいゆえの物言ひに 思わず答へて錐でもまるる

涅槃にて睦びあうらむ父母と兄 遠いあの日の哀しみ超へて

たまきはるいのちのさきのたゆたいのむねのなかなるふゆのゆき雲

ひえびえと海の白波よせる浜 吾妹ありせばなにをか言はん


















吉井敏文歌集①~海の白浜、涅槃~

2019-05-05 21:58:03 | 短歌
多少、重複するが、
発表した短歌の整理をしてみた。

早逝の兄の面影しのびつつ孫のしぐさに彼をみるてふあによめの言

「あいちゃん」とリアルの人に加えるにフェイスブックに「あいちゃん」ひとり

老いのゆえ受け入れられぬ友ありて助け舟さへだせぬわれをさいなむ

赦したし障がいゆえの物言ひに 思わず答ゑて錐でもまるる

涅槃にて睦びあうらむ父母と兄 遠いあの日の哀しみ超へて

たまきはるいのちのさきのたゆたいのむねのなかなるふゆのゆき雲

ひえびえと海の白浜よせる波 吾妹ありせばなにをかいはん

河野裕子の歌①~蝉声より~

2019-04-29 20:14:54 | 短歌


河野裕子の歌。
河野裕子は、54歳で乳がんにかかり、
大手術を受ける。
手術は成功したが、
もし再発したら、余命はいくばくもなくなる。
そして8年後、再発してしまった。
「蝉声」は、最晩年の歌集である。

病床にあって、それでも河野は歌を作り続けた。

……

ひと月も咲き続けゐる立葵あなたはよかったわねわたしの庭に来て

持久戦にもちてゆくより他はなしミルク半分をめつむりてのむ

子を産みしかのあかときに聞きし蝉いのち終わる日にたちかえりこむ

いついかにこの世を出でゆくこの身かと痛めるまぶたをしばらくおさむ



























河野裕子の歌①~蝉声より~

2019-04-29 20:14:54 | 短歌


河野裕子の歌。
河野裕子は、54歳で乳がんにかかり、
大手術を受ける。
手術は成功したが、
もし再発したら、余命はいくばくもなくなる。
そして8年後、再発してしまった。
「蝉声」は、最晩年の歌集である。

病床にあって、それでも河野は歌を作り続けた。

……

ひと月も咲き続けゐる立葵あなたはよかったわねわたしの庭に来て

持久戦にもちてゆくより他はなしミルク半分をめつむりてのむ

子を産みしかのあかときに聞きし蝉いのち終わる日にたちかえりこむ

いついかにこの世を出でゆくこの身かと痛めるまぶたをしばらくおさむ



























英語が得意なあなたへ~次の短歌を英訳できますか?~

2019-04-29 18:19:37 | 短歌

(問題)

「この味がいいね」と
君がいったから
七月六日はサラダ記念日

俵万智

(答え)

Bcause you told me,
"Yes," that tasted pretty good,"
July the Sixth
shall be from this day forward
Salad Anniversary.

Machi Tawara