オズ美容室オーナーのコーヒータイム

オズ美容室オーナーの日常日記

あなたの残したもの

2008-12-17 00:32:52 | 星から

黄昏行く伊丹空港のデッキで、京都から仙台に帰る便を待つ間、
母と私は、離着陸する飛行機を見つめていました。

「あの飛行機は、アメリカに行くのかねー」と、母がぽつんと言った。

「アメリカに行くんだねー」

外国空路ではないので、アメリカに行く便はないのだけれど、
私は、心の中で詫びながら又母に嘘をつきました。

「あの飛行機に乗ってアメリカに行って見たいねー」と話す母、

叶えられない事と思いつつ私は、こぼれ落ちそうになる涙をこらえ、

「病気が治ったら、一緒に行こうね。」

「いいねーどんな服を、着て行ったらいいかなー」

と子供の様にはしゃぐ母でしたが、その目の奥には、
どんな思いが潜んでいたのか、明日の希望を持てないことを、
母は知っていたのだろか、今では聞くすべも無いけど・・・・・

母に余命を伝えないと、兄弟で決めてから私はいくつもの嘘を、
母に言っただろうか、心が痛み胸が締め付けられる思いでした。

母の目は、飛び立つ飛行機が見えなくなるまで、
いつまでも、いつまでも見つめていました。
私は、そんな母の顔をまともに見ることができず、
あふれ出そうになる涙をこらえながら、明るく振舞っていました。

・・・・・・・・H17年10月25日京都旅行の出来事・・・・・・・


母は、H17年12月17日癌により、旅立ってしまいました。
そこにいたるまで、数え切れないほど悩み、涙しました。
その事は、折に触れて伝えて行きたいと思います。
旅立ってから、あれやこれやと後悔の念に駆られ、
ナーバスになったこともありましたが、
時が次第に心を溶かし、今では時折思い出す都度に
母に触れる喜びを、かみ締めるようになりました。

母だけでなく、H1年1月11日に旅立った父も含めて
家のあちらこちらから、父母の思い出が顔を出す都度に、
この頃思う事があります。
生きていたら、このブログに父母が登場するだろうになーと
だからいなくなった今、ささやかな父母の人生でしたが、
生きていた証を伝えてあげたらいいかなと、そんな訳で
『星からの』と題して、新たにカテゴリーを増やしました。

今日は母のたち日なので、母に奉げる詩を紹介します。

・・・・ あなたの 残したもの ・・・・・・・・・・・・・・

      光と影の中を 交差しながら
      歩いてきた人は 旅立ってしまった

      大地の恵みになって
      風に流れて 星の光に・・・・

      ごくありふれた人生は
      辛酸過ぎる 人生だったのかしら
      今では 聞くすべも無いけれど

      あなたの 残したものは
      握り締めた 手のひらから
      三つの命を 産み出したの

      あなたの 残したものは
      広い野原の 小さなオアシスで
      三つの命は はぐくまれ
      広い野原に 飛び出したの

      あなたの 残したものは
      光と影の中を 苦悩しながら
      時には 歓喜に満ちたり
      ありふれた道を
      ささやかに 繰り返し歩むの

      あなたの残した 命が
      くりかえし くりかえし
      歩んでいくの・・・・・・

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・