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千年味噌

2022年02月18日 | essay

 マンボウマンボウで気安く飲みに行くこともできないので、必然自宅で食卓を囲む機会が増える。それならせめてちょっとだけ高価な食材を買ってみようと、近所にある味噌屋で、普段買わない高級味噌を買ってみた。

 何でも千年以上前の製法で、かなり面倒な手間暇をかけて作ってあるらしい。今ではほとんど採用されない製法とか。よくある市販の味噌は一口舐めるとすぐに塩気を感じるが、これは芳醇でコクのある旨みが口の中に広がる。薫りはほとんどチーズである。もはや調味料というより一つの完成した発酵料理と言っていい。そのまま舐めても充分酒の肴になる。キュウリに付けたり、チーズ香をさらにチーズに塗ってみたりしたがやはり美味しい。味噌汁を作っても、深みが違う。

 本当にいいものに、奇をてらった新しさや、能率や、大資本は要らない。時代の流れに背を向け、こつこつと、伝統を忠実に守ってきたものには、やはり凄みがある。いいなあとつくづく思う。あまり感動したので、田舎に住む両親の元にも送ってやった。後日電話で感想を聞くと、「美味しかったよ。でも、うちで作った味噌の方が美味しい気がする」との談。

 とんだ手前味噌のオチがついた。


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