織内将男の山旅の記録

若かりし頃よりの山旅の記録です・・!!

立山・剱岳「天の記」(8) 「常願寺川ルート・立山温泉」

2009年07月11日 | 立山・剣岳
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写真:湯川谷の立山温泉跡地、向こうに見えるのは作業員建屋



立山・剱岳「天の記」(8) 「常願寺川ルート・立山温泉」    

遥か昔の戦国末期、越中藩主・佐々成政がザラ峠越えの際、立山温泉に入湯したという伝承があり、その時の成政は、尾張の徳川家康に会うために厳冬の北アルプス、越中・ザラ峠(常願寺川源流、獅子岳と鷲岳の間にある峠・標高2,348m)から越信国境を越えたと史実にはある。 このコースは現在の立山--->常願寺川--->立山温泉--->ザラ峠--->中ノ谷--->刈安峠--->黒部川--->針ノ木谷--->針ノ木峠--->籠川谷--->大町と言われている
因みに、このルートは、当時信州(長野県)北部の人々は新潟県糸魚川から入ってくる塩に頼っていたが、粗悪な塩や高価格に悩まされていた。そのため糸魚川を通らずに加賀の塩を移入しようと考え、当時では珍しい有料道路として建設されたといわれる。 しかし、積雪で通行できる期間は限られ、1人5銭の通行料では収支にも限りがあり、2シーズン利用されただけで失敗に終わったという。
佐々成政の正式字名は佐々内蔵助成政といい、これから我々が向かう剱岳周辺には蔵助平、内蔵助谷、内蔵助小屋、内蔵助カールなどという名を残している。

この頃から常願寺川沿いには山道が拓かれていたらしく、江戸末期になって正規に常願寺川左岸の本宮から湯川沿いを立山温泉までの新道が開かれたという。
立山温泉からはザラ峠とは別に、松尾峠経由で室堂、立山(雄山)、剱岳に登るコースも開けていた。 この松尾峠のコースは、かの北アルプスを紹介したウォルター・ウエストンが二度もここに宿をとり、松尾峠越えで立山登山をしている。 又、大正12年には槇有恒(日本山岳会会長、マナスル第3次登頂隊長)一行が厳冬期にこの松尾峠で遭難した話も有名である。
尚、「剱岳・点の記」で有名になった「柴崎芳太郎」(陸軍技師、測量官)も、ここ立山温泉を拠点に剱岳の測量を行っている。  そして、その「剱岳・点の記」を著した新田次郎氏は、この「書」を書き表すために立山の主と云われる佐伯文蔵氏と共に、昭和51年9月に剱岳登頂を果たし、その後、有峰湖経由で立山温泉跡地へ入っている。 この時の立山温泉小屋は既に廃屋になっていたが、中の様子は伺うことが出来たらしく、新田氏が懐かしそうに見聞していたらしい。 因みに、「剱岳・点の記」の初版は昭和52年8月であった。 そして本年、平成21年(2009年)6月、同名小説の本が映画化されて絶賛上映中である。 小生は未だ観ていないが、近々拝見する予定である。

かっての立山温泉からは松尾峠、ザラ峠に通ずる二つの登山道があり、戦前は湯治客で溢れ多くの人で賑わっていたらしいが、現在は温泉小屋は無くなり、登山道も概ね廃道になっていて、今では夢物語となってしまっている。
その旧立山温泉は、暴れ川・常願寺川の上流部、真川との分岐する湯川谷にあった温泉で、湯川谷には数箇所の源泉が湧き出し、文字通り湯の川で温泉の薬効も高く特に胃腸病にはよく効いたらしい。 しかし、諸般の事情で昭和40年代には温泉営業は中止され、小屋も畳んでいる。 
この湯川谷の山域は現在でも崩壊が激しく、界隈では猛烈な砂防工事が施されているが、この奥の源流山域に、かの大崩壊をもたらした鳶山が聳えている。 従って、昔メジャーであった立山温泉や松尾峠へ至るこのルートは、立山・室堂間のアルペンルート開通に伴い主役の座を追われ、更に、現在は崩壊防止の砂防工事など工事関係者以外、一般の人の入山は通行禁止になっている。 

かって山道であった常願寺川べりは、昭和初期から国の直轄事業である常願寺川流域の砂防施設建設に伴う資材・人員の輸送を目的として、現在まで「砂防専用軌道」(トロッコ列車)が走っている。 これは何と連続18段スイッチバック・・!を繰り返すという猛烈な山域を走っている。 無論、一般人、観光目的の人たちの使用乗車は出来ない・・!、地元の観光協会からは、何とか観光用として運用出来ないかと要望はしているようだが、未だ良い返事はもらってないようだ。
又、この地域は山の奥深さや積雪期になると工事関係者も入山中止になり、冬季は人跡未踏の地となって、その状況を知る人は殆どいなくなるという。

次回は、弥陀ヶ原・餓鬼田


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